第43話 スタンピードが終結したようです。



「――よし、魔石がドロップしたし、これで終わりだな」



 ふむ……オヤジから話だけは聞いていたが、おそらくこの感覚こそが"剣身一体"と呼ばれる境地なのだろう。正直、その感覚を維持するのは、すぐには無理だろうし、もっと苦戦するかと思っていたんだが――


「やはり配信中の調子の良さには、目を見張るものがあるな」


 今回の戦いで俺は、案外あっさりと、その境地をものにすることができた。これでまた一つ、オヤジに近づけただろう。



「さてと……おお、こんな朝早くのゲリラ配信にも関わらず、かなり多くの人が見にきてくれていたのか」


 普段の配信でも、ここまでの視聴者数になることはなかったんだが……やはりそれだけ今回のスタンピードに関心が寄せられているということなのだろう。


 少しぐらいは現状を説明しないとな。


「先ほど俺が殺した魔物が、今回のスタンピードの元凶たるアクアドラゴンだ。こうして魔石もドロップして復活の兆しもないことから、これ以上、魔物が地上に出ることはないはずだ」


〈お嬢TUEEEE!〉

〈本当にこの子まだ高校1年生なの??〉

〈街の様子は分かりますか!? 両親がその近くに住んでいるんです!〉

〈お嬢、昨日よりもはるかに強くなってない?〉


「地上の様子か……正直、俺はアクアドラゴンに付きっきりだったからなぁ。だが、少なくともワイバーンを討ち漏らすことはないだろう」


 とはいえ、近隣住民や建造物への被害がどれほどになっているかは想像がつかない。死んでいなければどうにか回復できるだろうが……。



「――巧美ちゃん!」


「お、彩姉。ちょうど良かった。今、外はどうなって――おっと」


 彩姉は立ち止まることなく、そのまま俺を抱擁した。


「無事で、よかった……!」


「……心配かけてごめん。でも、大丈夫だから」


 俺はあやすように腕を回し、の頭をなでる。


 なんだか既視感があるな……ああ、転生してから初めて再会した時か。


 あの時と比べて、だいぶ俺も背が伸びたのだが、それでも俺の方が10cmほど小さい。そういえば、女子の身長は15歳ぐらいで止まるんだっけ? もしかしたら、これ以上俺の身長は伸びないのかもな……せめて160は欲しかったなぁ。



「ごめん、ちょっと取り乱しちゃった」


「……ん? あぁ、大丈夫さ。それで改めて聞くが、外の様子を教えてくれ。気になっている視聴者も多いようだからな」


「えっ!? 配信中だったの!? 先に言ってよ、もう!」


 彩姉はカメラを見つけて驚くと、俺の背中をバンッと叩いた。


 ……なかなか身体に響く、いい掌底だった。


「ごめんごめん。で、状況は?」


「えっと、んんっ。ワイバーンは無事殲滅できました。ハンターたちに死者は居ません。建物が崩れたりしているので、私以外のハンターは、住民の救援活動にあたっています。そして私は、地上にアクアドラゴンが居なかったため、このダンジョンへ巧美ちゃんの援護のために駆け付けたのですが……一人で勝っちゃったの?」


「おう。地上では苦戦したんだけど、成長したんだ」


「えぇ……? ぱっと見、私たち2人がかりでも、勝てるか分からないと思っていたんだけどね……。あ、視聴者のみなさん、そういうわけです。詳細はまた後程、報告されると思いますが、一先ずスタンピードは解決しました。それで、巧美ちゃん。まだ動ける?」


「問題ない、俺たちも救援活動に向かうとするか。よし、今回の配信はここまでだ。今後についてはまたSNSで報告する。こんな朝早くから見にきてくれてありがとう! それじゃあ、ごきげんよう!」


 そして俺たちは、救援活動へと向かったのだった。





 ……結論から言うと、今回のスタンピードによる死者は、奇跡的に0だった。重傷を負った人もいたのだが、その人たちもポーションや回復魔法で一命をとりとめ、無事に回復したのだ。



 そして、今回のスタンピードに関して話があるとダンジョン協会の会長、龍口さんから連絡を受け、ダンジョン協会の本部へと向かうのだった。



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