第46話 アメリカへ遠征するようです。
俺がSランクハンターに昇級してから早くも1か月が過ぎた。
Sランクハンターになったとはいえ、俺の活動は全く変わっていない。もちろん俺自身は成長しているんだがな。あぁ、あと、Sランクハンターとなり大々的に表彰されたことから、チャンネル登録者数がかなり伸びたのは、嬉しい影響だった。
「――そうだ。2回目の配信で俺が言ったこと覚えてるか?」
〈2回目って何してたっけ?〉
〈そんな最初の配信は追えてないわ~〉
〈初めての雑談配信かな? あー、質問対応とかしてた?〉
「そうそう、質問を受け付けたりしていたな。覚えている人もいるようで嬉しいよ。その時に俺はまず、1年でSランクハンターになると宣言した」
〈実際は7か月やったね。うん。意味わからんぐらい早い〉
「まぁ、俺も早かったなとは自覚しているよ。そしてそれとは別に、もう一つ宣言したんだ。覚えている人はいるかな? ――Sランクハンターに昇級したら、六大迷宮の1つ、アメリカの"悪魔の迷宮"に行くつもりだと」
前々から気になっていた"悪魔の迷宮"。俺が前世で殺された場所の近くにできたダンジョンということもあり、どこか運命的なものを感じるダンジョンだ。
「Sランクハンターとなり、ある程度実力も身に着いた。ちょうどいい機会だろ? ――来週から俺は、アメリカに遠征する」
〈マジで!?〉
〈お嬢アメリカ行くんか~。そういえば英語喋れるんやっけ?〉
〈ちゃんと日本に戻ってきてね!〉
〈弓姫と2人で?〉
〈悪魔の迷宮か~。ついに踏破されるかな?〉
「もちろん、目標は悪魔の迷宮の踏破だ! アメリカに行くのは俺と彩姉の2人だな。ちゃんと日本に帰ってくるつもりだからそこは安心して欲しい」
戦力だけを考えるなら、オヤジや蒼にも付いてきてもらった方がいいのだが、そう何人ものSランクハンターが国外へ行くのは問題になる。いつ、またスタンピードが起こるか分からないため、国内の戦力低下は、国民の不安を誘うのだ。
まぁ、そもそもギルドマスターが国外に行くと、運営が滞るのであまりよくないしな。
そして龍口協会長曰く、日本の優秀なハンターがアメリカへ移住してしまった前例があるので、できるだけ早く日本に帰ってきて欲しいとのことだ。
「俺にとっては初めての"Sランクダンジョン"になる。非常に楽しみだな!」
◇
「やっぱりアメリカは遠いなぁ……」
というわけで、やって参りました、アメリカ。
さて、この辺にいるはずなんだが……お、彼かな?
「長旅お疲れ様です。ようこそアメリカへ。歓迎しますよ、荒河さん、西園寺さん。私はアメリカダンジョン協会職員のマイケル・クィンシーです。気軽にマイケルとお呼び下さい」
おお、日本語が堪能だな。
「初めまして、マイケル。今日からよろしく頼む」
Sランクハンターっていうのは、それ相応の力を持つ存在だ。それこそ、ハンターがテロ行為をしようものなら、大きな被害をもたらす。
ゆえにこうして、高ランクハンターが海外へ赴く際は、現地の協会職員が案内という名の監視をすることになっているのだ。
「本日はこのままホテルへ行って旅の疲れを癒し、明日から悪魔の迷宮へ挑戦するということで間違いないですか?」
「あぁ、それで大丈夫だ」
「承知しました。それでは車を用意しておりますので、そちらまでご案内いたします」
そして俺たちはマイケルに運転してもらい、ホテルへと向かったのだった。
――そして翌日。
悪魔の迷宮、第1階層にて。
「お前があの武神の娘か? おいおい、本当に強いのかよ? いっちょ戦おうぜ!」
……どうしてこうなった。
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