第19話 生存報告を配信で伝えるようです。



「やぁ、みんな。久しぶり。荒河巧美だ」


〈お嬢、無事!?〉

〈あ、豚頭の迷宮だ〉

〈襲われたらしいけど、大丈夫?〉

〈元気そうな顔見れて一安心〉


 事件の後処理が色々あって、今までしばらくの間、配信ができていなかった。そのため、俺を心配するようなコメントが多く見受けられる。


「みんなに心配をかけてしまったようだな。だがまあ、見てのとおり、もうピンピンしているぞ。相手が強かったから、さすがに無傷とはいかなかったがな」


〈Bランクハンター相手に生き残ってるんやから、十分すごいよ〉

〈お嬢に傷つけるとか、マジで許せん〉

〈やっぱり、ハンターへの規制はもっと強くすべき〉

〈蒼牙からたんまり慰謝料せびらな!〉


 やべ、ちょっと危ないな発言も出てきているな。


「蒼牙との話も順調に進んでいるから安心してほしい。まあ、俺はあんまり関わっていないんだけど。……とりあえず、そんな事務的な話は後日まとめてSNSとかで発表されるだろうから、気長に待っておいてくれ。俺も君たちも、しばらくは静観だな」


〈了解〉

〈神武と蒼牙の全面戦争とかにならんでよかった〉

〈武神と氷華がぶつかったら、余波でとんでもないことなるて〉

〈蒼牙にちょっかいかけるなよ、って意味だぞお前ら〉


「……まあ、それはさておき。俺は改めて実感したんだ――俺はまだまだ弱い。弱すぎる」


〈いや、仕方なくね?まだハンターになって1か月ぐらいやん〉

〈十分お嬢は強いってww〉

〈魔力量的には少ないかもやけど、技量は一流やろ〉


「ハンターになってからまだ1か月ぐらいだから、このぐらいの力で十分だ。確かに、俺もそう思っていた。なんなら予定よりも、少し成長は早いぐらいだ――だからこそ、慢心していたんだと思う」



 何が「1か月だから仕方ない」だ。


 何が「学生だから仕方ない」だ。



 ――そんなもん、俺が弱いままでいい理由にはならねぇだろ!



「……そこで、だ。これからは毎日ダンジョンに行こうと思う」


〈毎日はキツイて〉

〈無理はよくないぞ!〉

〈一流のハンターでも、週3か4ぐらいがマックスやろ?〉

〈学校はどうするん?〉


「高校を退学するつもりはない。ただ授業が終わったら、即ダンジョンへ行くようにする。これまではダンジョンへ行かず、道場で修行していたが、その時間をダンジョンに当てるだけだ。不可能ではない」


 今回の戦いで痛感したのは、"魔力量の重要さ"。技量が劣っていようが、魔力量があればごり押しができてしまうし、今の俺には打つ手が少ない。


 つまり、魔力量の増加が喫緊の課題。


 豚頭の迷宮で鍛錬をした時にも、配信で言っていた課題だが、その重要度はグンと上がった。


 自分より魔力量が圧倒的に多い魔物を相手にすることは、ハンターランクのシステム上ありえない。それに加えて、対人戦を念頭に置いていなかったため、俺は悠長に時間を使ってしまっていた。


 少し考えれば、今回のような出来事は、起こりうると思いつけただろうに……全く、我ながら腑抜けてんな?


「そしてこれに伴って、これからは毎日配信をお届けしようと思う。さすがに毎日彩姉を頼るのは申し訳ないから、道田と彩姉の2人が交代で、撮影に協力してもらう予定だ。ああ、この2人の承諾は得ている」


〈Aランクハンターにもなると、ノルマもあるしな~〉

〈毎日配信! 疲労が心配やけど、楽しみ!〉

〈マジで、無理だけはせんといてな〉


 コメントにもあるが、Aランクハンターにはノルマが存在する。その分、Bランク以下のハンターよりはるかに良い待遇を与えられるが……まあ「日本のハンターにしては」という枕詞はつく。


 高ランクハンターが、よりよい待遇の約束されている海外へ移住することがあり、それを防ぐために、徐々に日本でも待遇はよくなってきているのだ。


 それでもAランクハンターになると、やはり忙しくなる。道田もBランクハンターではあるが、実際、実力はAランク相当。諸々のしがらみを避けるために、昇級を避けているだけだ。



「さて、ここで一旦報告は終わりだ。――話は変わって、今俺がいるのは、いつも見てくれている君らなら見覚えもあるだろう、豚頭の迷宮だ。……お待たせ。今からここのボスまで一気に倒すぞ!」


〈ついに攻略本格化か!〉

〈おーーー!〉

〈待ってました!!〉



 まあ、方針が多少変わろうとも、俺の願いは変わらない――。



「さあ――俺の舞台戦いを、その目に焼き付けろ!」




 こうしてこの日、俺はDランクダンジョン、豚頭の迷宮をソロで踏破したのだった。



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