第51話 悪魔の迷宮にて快進撃を見せるようです。
悪魔の迷宮に初めて挑戦してから約2週間後。俺たちはついに第50階層まで攻略した。
この第50階層が、中ボスのような悪魔で、なかなかに手強かった。開戦早々中ボスっぽい悪魔が結界を張り、その効果なのか、かなり悪魔たちの魔法の威力やスピードが上がっていた。
どっかで見たような結界だな――と思って、よくよく考えてみると、1つ心当たりがあった。
あれは……そう、俺がDランクハンターだった時だな。元蒼牙所属の男に、ズタボロにされた事件。あの時男が使っていたものと似ていたような気がする。
ただ、今回の結界は、あれよりかは効果が低かったように感じる。
これは俺の予想だが――あの男の協力者は、悪魔の使う魔法に関する、深い知識を持っているのだろう。
……まぁ、だからなんだ、という話なんだがな。
振り返ってみると、この2週間は、この1年で俺がもっとも飛躍した期間と言っても過言ではない。なんと保有する魔力量が倍近く増えたのだ。それにもかかわらず、俺は今だ成長の鈍化が起きていない。
一方の彩姉は、かなり鈍化が進んでいる。とはいえ、弓の技術や、なにより俺との連携が非常に巧いので、今のところ問題は起きていない。
……さて、そしていよいよ今日からは新体制での攻略だ。どうなるかねぇ?
「――ということで、今日からともに攻略を進めることになった、アリスだ」
「はじめまして。ワタシはアリス・オールストンです。これからよろしくおねがいします」
〈マジかよ!?〉
〈まさかあの猛火の支配者と共闘することになるなんて〉
〈日本語可愛い〉
〈あれ、でも後衛が2人になるね。バランス大丈夫?〉
「ここから私は、サポートとして立ち回ります。まぁ、いざとなれば、私もアリスさんも接近戦はある程度こなせるので問題ないかと。それに、巧美ちゃんが頑張ったらなんとかなりますよ、きっと」
「おい、彩姉。俺に無茶振りするなよ」
「私は巧美ちゃんを信じてるから」
「むっ……はぁ。まぁ、そんな事態にはならないように立ち回るけどさ」
『……もしかして、私はお邪魔かしら?』
〈アリスさん置いてけぼりで草〉
「……こほん。それでは早速だが、攻略を始めようか」
より下の階層へと進むほど、現れる悪魔は強くなっていき、なかなか攻撃が通りにくくなる。そんな悪魔たちが群れで現れたら、さすがに俺と彩姉だけでは、少し苦労する。
だけど――
『"燃え尽きろ"』
「おー……圧巻だな」
アリス・オールストン――猛火の支配者と呼ばれる彼女の魔法は、そんな悪魔たちを一網打尽にした。この広範囲かつ高火力な攻撃は、俺たちには真似できない。特に俺が得意とするのは、各個撃破だからな。
というわけで、俺は魔力を用いて足場を生成。その足場を踏みしめて、追加で現れた悪魔へと急接近。俺が1対1の形に持っていけるように、彩姉が矢を放ち、周りの気をそらす。
上から振り下ろす爪の攻撃をかいくぐり抜刀。
その一太刀は正確に悪魔の首を断った。
振り切った刀を止めることなく円を描き続け、1体、また1体と斬り付けていく。
後衛2人へと襲い掛かろうとする悪魔から順に狙っていく。
彩姉の矢によるサポートを受けながら、俺は縦横無尽に駆け回った。そしてアリスは、そんな俺たちの邪魔にならない悪魔から対処続け……あっという間に悪魔の群れは全滅した。
ふむ、連射性だけなら彩姉の方が上だが、威力はアリスの方が上か。
〈うおぉお! すげぇ高火力!!〉
〈こんなん、勝てるわけないってww〉
〈悪魔たちに合掌〉
「さぁ、このままドンドン進んでいこう! 俺たちが目指すのは前人未到の、最下層なのだから!」
◇
『ああ、待ち遠しい待ち遠しい待ち遠しい待ち遠しい』
男はブツブツと闇に向かって声を発する。
『ようやくだ。ようやく、この時が近づいてきた――! ああ、ああ! ハハハハッ! またてめぇを殺してやるさ! ああ、本当に待ち遠しいよ――巧』
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