第3話 10年ぶりの再会だったようです。



 それからしばらく、お姉さんと話していると、ついに迎えの人がやってきた。


 スーツ越しでもわかる、優れた肉体。足運びや目線のやり方といい、どう見てもプロである。それにしてもこの威圧感はなんだ? もしやこれが、魔力・・を吸収した人間の力なのだろうか。


「お待たせしました、巧様。西園寺様より、あなたを迎えるように申しつけられました、道田と申します。すぐそこに車をご用意しておりますので、どうぞこちらへ」


「ありがとう」


 受付のお姉さんとの別れを惜しみつつも、俺は道田さんに付いて行った。



 高そうな車に乗り込み、30分ほど走ると目的地に着いたようだ。途中、窓から見える景色は、いくらかの相違はあるものの、見覚えのあるものが多かった。


 女神がサービス・・・・ということである程度、復活する場所の指定はできたから、分かっていたことだがな。

 

 そして、車から降りると、そこは西園寺ビルと書かれた、巨大なビルの前だった。


 10年前よりも豪華になっているそれに驚きつつも、俺は道田さんに連れられ、応接間へ入った。


 そして、出された菓子や茶に舌鼓を打ちながら待つこと1時間ほど。ドアがノックされ、開かれた。


 

「……おぉ、洋介。お前、老けたなぁ」


 俺が死んでから10年も経っているはずだから、当然とはいえ、やはり驚きを隠せない。


「……ふふっ、君は随分と可愛らしくなりましたね」


 洋介はそう言うと、こちらに近づき、そのまま俺を抱擁した。


「お、おい?」

 

 

「……アメリカで君が消えてから・・・・・、もう10年です。あの日を思い返さない日はありませんでした。あの時、君たちを孤立させなければ、君たちにボディーガードを付けていれば――後悔先に立たずとは、まさにこのことですね。もっと君に話したいことはあるのですが、その前に一言言わせてください」


 

 そこで洋介はいったん言葉を区切り、俺の肩に手を置きながら、向き合う姿勢を取った。


 

「あの日、薫と彩を守って下さり、ありがとうございました。そして――お帰り、巧」


「――あぁ、ただいま、洋介」


 

 女神は、俺の肉体が消失してしまったと言っていた。つまり当然だが、俺の死体は残っていない。俺が死んだことを確定することはできず、失踪扱いになっていたのかもしれない。そう考えると、洋介たちには、随分心配をかけてしまったようだな。



「――さて、電話では生き返った、と言っていましたが、どういうことか説明してください」


「おう。俺が死んで、目が覚めたらそこには、女神を名乗るやつがいてな? そして――」



 それから俺は、転生した経緯を洋介に伝えた。



「……なるほど、ダンジョンシステムですか。やはり、ダンジョンが関わっていたのですね」


「なんだ、予想していたのか?」


「ええ。というのも、ちょうど君が消えた瞬間に、世界各地で6つのダンジョンが発生したのですよ。今では"六大迷宮"や、"始まりの迷宮"と呼ばれる場所ですね。君が死んだ場所もそのひとつでした」


 あたりまえにダンジョンという言葉が使われ、やはり世界は変わったのだと実感せざるを得なかった。


 

 それからも、洋介からダンジョンについての話は続いた。


 

 曰く、今では無数のダンジョンが誕生している。


 曰く、ダンジョン内で死亡すれば、その1階層で蘇生される。


 曰く、ダンジョンで魔物を倒せば、魔石などのアイテムがドロップする。


 曰く、ダンジョンに挑む者たちをハンターと呼び、彼らの団体をギルドと呼ぶ。


 曰く、ダンジョン関連の事業に成功し、洋介がトップを務める西園寺財閥は、日本トップクラスの力を手に入れた。


 

「そうそう、荒河先生には、ギルド"神武"のギルド長を担ってもらっています」


オヤジ・・・がギルド長を?」


「ええ、今では日本に数人しかいない、Sランクのハンターになっています。二つ名は"武神"ですよ」


 荒河神武流体術師範――荒河あらかわ武雄たけお。俺がオヤジと呼んでいる、武術の師匠である。


 俺が死んだときに50歳ぐらいだったから、今は60歳ぐらいか? もうお爺さんじゃねぇか。


 

「オヤジって今でも現役なのか?」


「今も、高ランクダンジョンに潜っているところですよ。連絡は入れましたので、そこの攻略が終わり次第、再会できるでしょう。予定では2日後ですね。荒河先生から伝言も貰っていますよ」


「……オヤジはなんと?」


「『儂が帰ったら、一から修行のやり直しじゃ。覚悟しておれ』とのことです。一応補足しておくと、幾度となくダンジョンに挑み、魔力もかなり吸収していますので、10年前より遥かに強くなっていますよ」


「……やべぇな。死ぬんじゃね、俺」


「ふふっ、頑張ってくださいね」


 それからも俺たちは、10年というギャップを埋めていくように、話を続けた。



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