第8話 無双状態なようです。
「思ったより早く第4階層に着いたな」
〈苦戦らしい苦戦してないですからね〉
〈ゴブリン1体出たとこで相手にならないんだよな〉
〈いや~、見てて飽きないわ〉
〈あれ?ゴブリンって成人男性より力強いし、一般人にとってはそこそこ強敵のはずなんだが〉
〈逸般人の間違いだろ〉
ダンジョンは同じ階層で、敵が大きく変わることがない。単調な配信にならないために、色々気を使ってはいるが、やはり環境自体が変わる方が配信者にとってはありがたい。
「ここからは、ゴブリンが数体まとまって現れるらしい。少しは、歯ごたえがあるといいんだがな」
そんなことを話しながら索敵を続けていると、ゴブリン2体を発見した。
「それじゃあ、行くぞ」
俺は挑発するように魔力を放ち、ゴブリンどもの意識をこちらに向けた。
「グギャ! グギャ!」
「グギャギャ!」
何やら叫びながら、こちらに走ってくるゴブリン。
だらんと、両手を自由にさせた状態で、俺はそれを迎えた。
「グギャ!」
ゴブリンにも一応連携の概念はあるらしく、先に到着した一体が棍棒で右から攻撃するのに合わせて、もう一体が左から攻撃しようと構える。
だがまあ、あまりにも杜撰な連携と言わざるを得ない。
「フッ――!」
スウェーで右から振られた棍棒を避けながら、左側に構えているゴブリンへ向かうように、棍棒を右手で発勁。
「グギャ!?」
仲間の棍棒が自分に向かってきたことに驚きながら、慌てて自分の棍棒で防御をするゴブリンをしり目に、抜刀。
棍棒に振り回され、体勢が崩れているゴブリンの右脇腹から、体を両断した。
そして振り切りの勢いのまま、もう一体の方へ体を向ける。
突然の出来事で未だ硬直しているゴブリンを、その手に持つ棍棒ごと、縦に一閃。
こうして、2体のゴブリンはあっけなく消滅し、その魔力は俺に吸収された。
「やはり、少し増えただけでは、相手にならんな」
〈流れるような連撃。俺でなきゃ見逃しちゃうね〉
〈知ってた〉
〈スパスパ切れるからなんか心地よいわ〉
〈相変わらず綺麗に倒すね、巧美ちゃん〉
「技を持たんこいつらを何体相手にしても仕方ない。さくさく降りていくとしよう」
スピード重視で攻略を進め、あっという間に第6階層へ到達。
ここからは出現する魔物が変わり、ゴブリンの上位種たるホブゴブリンや、魔法を扱うゴブリンマジシャンが一体ずつ登場する。
ホブゴブリンは体長2メートルほど。棍棒ではなく、剣や槍、弓といった武器を操ると聞く。
どんなもんかと少し期待していたんだが――
「なんだ、ただの素人ではないか」
〈上位種でも変わらず瞬殺すか〉
〈なんでこの人、相手の武器奪って攻撃してるん??〉
〈うわー、ホブゴブリンがかわいそうになってきた〉
まったく……。確かにゴブリンより力はある。素早さもある。ゴブリンより武器の扱いが多少ましではある。とはいえ、まだまだ素人と言わざるを得ない。
「人間と同じような体格をしてるから、余計に弱く感じるのかもしれないな」
〈あー、確かにそうかもね〉
〈いつも武神にしごかれてること考えたら妥当か〉
〈急所も人間と一緒やもんね〉
そして、次にゴブリンマジシャン。
魔法を扱う魔物を相手にするのは初めてだったんだが――
「こいつ、距離を詰めてしまえば、ただのゴブリンではないか。期待外れもいいところだぞ」
〈それがムズイんやってww〉
〈魔法ってあんな簡単に切れたっけ?〉
〈しれっと高ランクハンターみたいなことするなやww〉
「魔法ぐらい切れて当たり前だろ? オヤジはそう言っていたが?」
〈日本最強の前衛を基準にするな〉
〈無理です(by Bランク)〉
〈少なくとも、ダンジョン攻略初日にしていい技ではない〉
「あー、そうなのか。いつもやっていたから、そんな感覚はなかったな」
〈いつも??〉
〈やっぱこの子人間じゃないって〉
〈こんな顔は可愛いのに、頭はいかれてるんか〉
「だが、魔力を吸収する前から、人間は誰しも魔力を持つだろう?」
〈普通は感じられないほど、微々たるもんだがな〉
〈そりゃ、適性ってその魔力で判定するもんな〉
〈なんかわけわからん事言いそうな予感…〉
「なら、それを感知できれば、操作ができる。操作ができたら、魔法が使える。刀に魔力を纏わせて、魔法の核も切れる。至極当然の話だ」
〈ファーww〉
〈いや、だからその初手で無理ゲーなんやって〉
〈才能ってすごいね(白目)〉
第6階層からも無双状態は続き、俺はさくさくと攻略を進めていった。
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