第28話 発覚

――――【雅人目線】


 くっくっくっ……。


【売春前提のパパ活してる生徒】


 誰だか知らねえが、匿名とくめいでオレに画像を送りつけてきやがった奴がいる。


 カフェで八乙女が黒瀬に現金を渡しているもの……。しかも1000円とか2000円なんてちゃちな額じゃねえ。最低5000円から高いときには数万なんてものまである。


 こりゃ、確実にウリやってんな。


 八乙女の野郎……金持ちだかなんだか知んねえが、黒瀬に金を払って買春なんて、なんてうらやま……けしからんことをしてやがるんだ!


 これだから、金持ちって奴はいけ好かねえ!!!


 まあ並みの奴なら、ガセと断ずるか、証拠も掴まずに強請ゆすったり、垂れ込んだりするんだけどよぉ、オレはそんじょそこらの馬鹿どもとは格がちげえんだよ、格がよぉ!



 さっそくオレは黒瀬の跡をつけて、送られてきた画像の裏取りをしていた。


 ヒャッハーーッ!


 八乙女の野郎、オレが目をつけていてぜったいに姉妹丼にしてやろうと思ってた黒瀬姉妹を牧場に招くとか、とんだけキザったらしい真似しやがんだ!?


 だが黒瀬に金を渡している証拠はばっちり写した。間違いねえ、八乙女は貧乏な黒瀬から身体を買ってやがるな。


 くそったれ、八乙女に先を越されちまったが、オレはあいつの周りにいる女、すべてを寝取ってやる! 


 せいぜい、いまを楽しんどけ。女どもに一切相手されないオレが味わった絶望をおまえにも与えてやる!!!



――――【善行目線】八乙女牧場。


「わあ~! お馬さんだ」


 俺は自宅の敷地内にある父さんの経営する牧場に黒瀬姉妹を招いていた。


 短いたてがみの子馬を撫でて、よろこぶ檸檬ちゃん。柵を隔てているものの、うちの牧場は直接馬などの動物と触れ合える。


「こんにちは、八乙女さん」

「こんにちは、黒瀬さん」


 固い、固い、固い!


 クラスメートにもかかわらず、お見合いで初顔合わせした男女のような、お互い強張った表情で、よそよそしい雰囲気を醸し出す若葉と黒瀬。


 別にお互いを嫌い合ってるとかではないのだろうが、レンカノは仕事だから積極的に会話する黒瀬も普段は決してコミュ力が高いほうではない。


 一方の若葉は俺以外の男子とはコミュ障通り越して、ひとことも話さないし、女子とも良好とは言い難い。


 そこに救世主が現れた!


「どうもいつもいつもお姉ちゃんがお世話になってます。妹の檸檬です。若葉お姉ちゃんはすごく美人だね!」


「そ、そんなことないです。檸檬さんもすごくかわいいです。それに私なんて黒瀬さんに比べたら……ぜんぜんです」

「そうかなぁ? 檸檬、若葉お姉ちゃんが世界一綺麗だと思うだけどなぁ」


 ぼんっ!


 素直な檸檬ちゃんから最高の賛辞をもらい、照れが溜まりに溜まって若葉の内圧が高まり、弾けた。若葉はプシューと頭から湯気を漏らしている。


「ちゅき!」


 ひしっと若葉は檸檬ちゃんを抱きしめていた。


 3人のなかでいちばん若いが、コミュ力お化けの檸檬ちゃんのおかげで、緊張が解け場がなごむ。



 ンメェェェーーー。


 羊の赤ちゃんを抱えてあやしていた檸檬ちゃんはうれしそうに言った。


「善行お兄ちゃんとお姉ちゃんが結婚したら、若葉お姉ちゃんも私の本当のお姉ちゃんになるんだね! うれしい」

「ダ、ダメーーーーーーーーーーーーーーーッ!」


 無邪気な檸檬ちゃんの言葉に若葉は大声をあげて叫んでしまい、なにごとかと黒瀬姉妹は若葉を見ていた。


「あ、その……兄さんはえっちで女癖が悪くて、デリカシーの欠片もない残念な人ですから、結婚なんてしたら、子どもが100人くらい出来て絶対後悔しちゃいます」


 どんだけ性欲モンスターなんだよ……、俺は。


 だが俺の酷評をする割には、若葉は俺の袖をガシッと両手で掴んで黒瀬へ気持ちが行かないよう留めようとしている。言葉とは真逆の態度を取る若葉が愛おしく感じてしまった。


 黒瀬は俺に聞こえないように檸檬ちゃんと若葉に耳打ちする。


 2人とも驚いていたが、檸檬ちゃんは羊の赤ちゃんをゆっくりと下ろしてしまう。一方の若葉はウキウキとした表情を浮かべていた。


「八乙女くんさえよければ、付き合うのはありだよね?」

「あ、ん?」


 黒瀬の言ったことで、子羊と同じように小躍りしていた若葉はガーンとたらいが頭上に落ちてきたかのようにショックを受けていた。


 俺は結婚とか交際以前に、経済的に裕福でない黒瀬姉妹には金銭的な援助を惜しまないつもりなんだが……。


 ヒヒヒーーン、ブルッブルッ!


 大きな声でいなないたかと思うと俺たちのところに真っ白な馬が寄ってきた。


「わあっ! 真っ白ぉ~! それにおっきい!」

「白兎馬っていうんだ。白い毛並みのサラブレッドは結構珍しいんだよ」

「へ~、お兄ちゃんはとっても物知りなんだね!」


 中央競馬で活躍できずに馬肉にされそうになっていたところを善行が不憫に思い、救った牡馬なんだが、馬肉にされそうになったのは他にも理由がある。


 だがいまは俺の従順な愛馬だ!


「そうだ! 檸檬ちゃん、乗馬してみる?」

「お兄ちゃん、いいの? ほんとに!?」


 檸檬ちゃんは黒瀬をじっと見て……。


「いいよ、乗らせてもらって」

「やったー! でもお馬さん……おっきいし、初めてだから……お兄ちゃんといっしょに乗るぅ!」

「そうだね、じゃあ乗ろっか」

「「えっ!?」」


 うんうんと頷きながら、檸檬ちゃんは俺の手を取りぶんぶんとうれしそうに腕を振っていた。黒瀬と若葉は檸檬ちゃんの屈託のない提案に驚いている。


「私も檸檬のあとで乗りたい。八乙女くんといっしょに……」


 そーっと、黒瀬は伏し目がちになりながら手をゆっくり上げていた。


「なっ!? 私の兄さんと乗るなんて、そ、それこそ妊娠しちゃいますよ、いいんですか!?」


 俺といっしょに馬に乗ったからって、妊娠はしないだろ……。


「……黒瀬さんより私を妊娠させてほしい」

「なんか言った?」

「もう、早く檸檬さんに乗馬体験させてあげてください」



 パカッ、パカッ、パカッ。


 蹄が土を踏むなかで俺が抱きかかえるように座っていたのだが、黒瀬と若葉たちから離れたところで檸檬ちゃんは振り返りながら訊ねてくる。


「お兄ちゃんは、心愛お姉ちゃんか、若葉お姉ちゃん……どっちが好きなの?」

「ん!?」


 中学生の檸檬ちゃんのことだ、あくまで友だちや家族として、聞いてるんだよな?


「どっちも好きだよ」

「う~ん、そういうことじゃなくて、どっちの女の子とえっちなことしたいのかな~って」

「檸檬ちゃんっ!?」


 幼いように思えた檸檬ちゃんだったが、ぜんぶ分かってますよ、って感じだった。


「黒瀬は友だちだし、若葉は妹だから……」

「2人ともそうは思ってなさそうだけど。心愛お姉ちゃんも、若葉お姉ちゃんもお兄ちゃんを見る目が乙女だよね!」

「……」


「大丈夫だよ、檸檬はどっちを選んでもお兄ちゃんを恨んだりしないよ。それどころか、2人がお兄ちゃんを見放しても檸檬がずっといっしょだからね」


 檸檬ちゃんはウインクするとまえを向いて、背中をしっかりと俺に預けていた。


「ありがとう、檸檬ちゃん」



 そのあと黒瀬と乗馬を続けたのだが、若葉は一人で馬に乗れるはずなのに、俺といっしょに乗ることをせがんだ。


 黒瀬姉妹の牧場体験を終える。せっかく黒瀬と檸檬ちゃんに来てもらったので2人に記念品とも言うべきものを渡していた。


「これは?」

「勝運がつくって言われてる神社のお守りだよ。家に小さいけど、そこの分社がまつってあるんだ」

「わあ、お馬さんの刺繍が入ってる。檸檬、大切にするね!」


「私も八乙女くんがくれたものだもの。肌身離さず持ってる」


 かならず2人を危険なことから守ってくれるに違いない。


 俺はそう願った。



――――翌日の学校。


 雅人の動きが怪しいと思って跡をつけてきたら、


 ――――失礼しゃーす。


 ――――なんだぁ? くそったれじゃねえか!


 やっと生徒指導室へ入っていったか。


 どうせ雅人のことだ。ヒロインたちをストーカーして、弱みを握ろうとしていたのは分かっていた。


 若葉たちを問いただして、彼女たちが撮影した写真を雅人に匿名でリークして正解だったな。接近こそすれ俺か、菜々緒がヒロインたちをガードしてるんじゃ雅人も手出しできないと思っていたが、案の定原田に報告してたんだからなぁ。


 さすがに俺も2人が悪事を働いてもいないのに断罪するわけにもいかないが、餌をいた途端悪事を画策かくさくするんだから、性根が腐っているのはゲーム通りなんだから、笑ってしまう。


 そんなにざまぁされたいのなら、やるしかねえよな!


―――――――――――――――――――――――

飛んで火にいる夏のクソ虫、雅人w

原田ともども汚物は消毒だぁ!

ヒロインレースに檸檬ちゃん参戦www 

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