第22話 レンカノ

 人気の少ない校舎裏へ呼び出したにもかかわらず、黒瀬は待ち合わせの約束を反故ほごにすることなく、訪れてくれていた。


「意外だな~、黒瀬さんが俺の名前覚えててくれるなんて」

「苗字くらい覚えてるから。文句あるの?」

「いや、うれしいと思って」


 馬鹿馬鹿しいといった様子でクール系美少女の黒瀬はぷいと俺から顔を背けて、不貞腐ふてくされているようだった。


 同じツンでも若葉の場合は俺に積極的に絡んでくるほうだが、黒瀬はどちらかと言うと無視とか、放置するタイプのツンだ。


 それでも俺が彼女のそばを離れないでいることに鬱陶うっとうしいと感じたのか、俺に訊ねてくる。


「お店の写真を見せて脅すつもり? でも無駄、お店の決まりでサービスとかできないから」

「キミのファンだと言ったら、納得してくれる?」

「ストーカー? だったら警察に言うよ」


 黒瀬は気味悪がり、俺を警戒してスマホを取り出し、その場で警察へ110番しようとしている。


「待って! 俺がここあちゃんの予約日、ぜんぶ押さえたからね! 他の男とデートしたらダメだから」


 俺の言葉でピタリと黒瀬のスマホを触る手が止まる。


 我ながらストーカーじみた独占欲を発揮し、相当キモいことを言ってしまったとへこみそうになるが、それもこれもぜんぶ原田と雅人のせいだと責任転嫁して自我を保とうとしていた。


「えっ? 八乙女くんなら彼女くらいいるでしょ」

「いないよ」

「うそ! だって女の子たちに囲まれて、モテモテじゃない」


 モテモテなのか? 若葉以外はどちらかと言うと女難の相が出ているとしか思えないのだが……黒瀬にはそう見えてしまうらしい。


「若葉は妹だし、萌香は幼馴染、菜々緒先輩は習い事の姉弟子だったり……友だちみたいなもんだって」


 う~んと唸り、俺を見て怪しんだ黒瀬から出てきた言葉が……。


「みんなセフレ?」

「ちげーわ!」


 黒瀬の問いに全力で否定したものの、エロゲ世界だけに本当にそうなりそうで怖い。実際、雅人はヒロインたちをセフレにしまくっていたから。


 黒瀬の警戒心はぜんぜん解けていないようで、動機を訊ねてくる。


「でもどうして、八乙女くんがレンカノなんて利用するの?」

「彼女ができたときにエスコートもできなきゃ恥ずかしいから、その練習だよ」

「ふーん……」


 黒瀬は目を細めながら俺を見てきて、明らかに俺を怪しんでいる様子だ。


「ほらほら、ちゃんと見てって」


 俺はスマホを取り出して、“クルカノ“の会員ページにアクセス、黒瀬のレンカノの予定表を見せて、すべてデートの予約が埋まっていることを証明する。


 俺の顔を見た黒瀬の顔は、目を丸くしてクールな彼女らしからぬ表情をしていた。


「ほんと……だ。でもそんな金がどこに?」

「信用できない? じゃあ前払いしておこうか?」

「いいえ……それはやっちゃいけない規則だから」


 ちなみに俺のお小遣いは50万円だ、年額じゃなく1ヶ月分で……。俺は両親から初めてお小遣いをもらったとき、前世の給与より多い額に苦笑いしか起きなかった。


 いや、高校生に渡しちゃいけない金額だろ!


 それにも拘らず善行は、不良たちからにいじめられないよう保護名目で雅人に体よくたかられていたんだけどな。


 ともかく、やや強引だったが黒瀬とのデートにこぎ着けることができた。レンカノではあるんだけど……。


 あんな予約の仕方をすれば気味悪がられるとこだが、黒瀬は背に腹は代えられないことを俺は知っている。



――――デート初日。


 駅に到着すると改札口前で歩いている男たちが必ず振り向く場所があった。


 そこには水色を基調とした清潔感のあるワンピースをまとっていた黒瀬がおり、ベージュ色のガーリーなショルダーバッグを肩にかけている。


 ――――あの子、かわいいな。


 ――――ちくしょう、デートの待ち合わせか?


 ――――彼氏の野郎に不幸あれ!


 男たちは通り過ぎたあと悔しがったりしていたが、当の黒瀬はどこ吹く風といった感じで横を向いていた。


「お待たせ」

「別に待ってないわ。時間通りだし」


 黒瀬は無表情で金縁で細い革ベルトの腕時計を見ていた。


 表情の硬い彼女を和ますために適当な言葉をかけたのだが……。


「気分は?」

「最悪。クラスメートとデートだなんて、頭痛しか起きないわ」

「頭痛薬いる?」

「いらない」


 なかなかのつっけんどんぶりに、相当警戒されているのだと感じた。だが日々、若葉の罵倒を聞いている俺でも、人が違うと新鮮に感じる。


 ゲーム内でお仕事モードの黒瀬を知る俺にとっては作った彼女よりも、ありのままの彼女の本音が聞けてうれしい……と思うのはドMになりつつある兆候だろうか?


 遊んでいても仕方ない。彼女を、彼女の妹をクソ野郎どもから守らないといけないので俺は親密度をあげにかかる。


「いちおうレンタルだけど、俺彼氏なんだけど……ここあちゃんは塩対応が売りなの?」


 俺はレンカノ代金の5千円を取り出しながら、訊ねると黒瀬は慌てて、取り繕った。


「ごめんなさい、善行くんにつらく当たって……お詫びに奢らせて」

「いや、気にしてないよ。そこのカフェでもどう?」


 そう、俺は黒瀬の塩対応は想定済み。それよりも気にしていたのは保護者たちの見守りだった。


 帽子やサングラスにマスクで顔を隠しているが、柱や壁の陰に隠れてこちらの様子を窺っている若葉に萌香、それに菜々緒……若葉は別として、萌香、菜々緒よ、2人は暇人なのか?


 だが俺は邪魔が入ろうとも黒瀬と仲よくなり、彼女の家へ招かれないとならなかった。なぜなら、偶然若葉と知り合った黒瀬の妹が原田と雅人の餌食になって、若葉が絶望してしまうから……。


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まあ、見張られていますよねw 黒瀬姉妹を助け、原田と雅人のざまぁをご期待の読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

なぬ!? 姉妹丼を所望ですと? フォローと★がいっぱいついたら考えさせてください。凌辱以外の希望のシチュがあれば、コメ欄へw

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