第51話 計画NTR【胸糞注意】

――――【回想】


 学校の廊下を並んで歩く雅人と夕霧を見て、前から歩いてきた男子が足を止めて驚いていた。


 ――――うおっ!? マジかわいい!


 ――――えっ!? ホントに夕霧さんなの?


 図書室で雅人に女にされてしまった夕霧だったが、彼女は前髪を切り髪を明るい色に染めて、すっかり垢抜けていた。


『ま、雅人くん……恥ずかしいよ』

『ああ? 恵麻を馬鹿にしてた陰キャ男子どもに見せつけてやりてえんだよ、ははっ!』


 雅人は自分も夕霧のことを馬鹿にしていたくせに彼女の肩を抱いて得意げになっている。



 放課後、雅人は部屋に夕霧を連れ込むのが日課となっていた。


 はあ……キッツキツだったのに、あんま気持ち良さが薄れてきやがった。毎日、最低5回はヤってりゃ仕方ねえか。


 そろそろ、あいつにレンカノ……いやヤリカノしてやっか!


 ベッドで舌を出して気を失った夕霧を見て、ドクズな感想を抱いていた。



 翌日の昼休み。


『よお、相棒! 元気してたかよ』

『なんだ雅人か、びっくりさせんじゃねえよ』


 校舎裏に隠れてタバコを吸っていた日下部に、雅人は教室でのいざこざなどなかったかのようにフランクに話しかけていた。


『ちゃんと図書室でヤってるとこ撮れたのかよ?』

『心配すんな、撮れすぎて毎日シコってるぜ! つか、ものにした女を俺に寝取らせるとか、おまえもとんだ変態趣味だな』


 雅人は夕霧のことをセフレのひとり程度にしか思っておらず、日下部に向かって手を出していた。


『うるせえ、さっさと金だせ』

『3万はたけえ! せめて2万だろ』

『ならタバコ吸ってること、原田に言ってやっぞ』

『マジでおまえ、ろくな死に方しねえわ』


 雅人の言葉に悪態をつきながらも日下部は趣味の悪いワニ革の財布から3万円を取り出し、雅人に渡していた。



 その日の放課後……。


『ちーす! 恵麻ちゃん。おれのこと覚えてる?』

『誰……なの?』

『あ~ひで~なぁ……2組のく・さ・か・べだよ』

『???』


『まあ、んなことどうでもいいわ。それよりこれ、先生が見たらどう思うんだろうな?』


 首を傾げる夕霧に日下部はスマホを見せていた。



 ――――恵麻、ほしいならほしいって言ってみて。


 ――――あ、うん……こ、こんなのらめなのにぃぃ……。



 そこには雅人に責められ、喘ぐ夕霧の姿が動画に収められており、2人の顔は言い逃れできないくらい鮮明だった。


 血の気が引いた夕霧に日下部は畳みかけるように告げる。


『こんな不純異性交遊が先生たちにバレちまったら、雅人の野郎は退学間違いねえだろうなぁ……マジかわいそ』

『お、お願いだから誰にも言わないで!』

『ん~、それは夕霧次第だよなぁ~』


『なにをすれば……』

『雅人とヤッてることをおれとすりゃいいんだよ』

『えっ!?』


『なに処女みてえな反応してんだよ。やることやってんだろ。とりあえず、おれのしゃぶってくんね?』

『えっ!?』


 日下部は蛇のように夕霧にすり寄り、彼女の頬をなでる。それを嫌がり、夕霧は顔を背けるが、気分を害した日下部は態度を一変させていた。


『いいよ、いいよ、なら職員室に行ってくっから』

『それはダメっ!!!』


 椅子に座って顔を青くする夕霧に向かって、日下部は勝ち誇ったように胸を張る。


『だったら分かってるよなぁ、くくく……』

『はい……』


 日下部は夕霧を本棚と本棚の間に追いやり、ズボンと下着ごと脱いで彼女にものを見せつけていた。


――――【回想終わり】



 あー、マジ胸糞だ。廊下を夕霧と歩いていると思い出してしまった。


 だがそんなことを知らない夕霧は実にマイペースで、彼女といると胸糞がすぐに飛んでいってしまうくらいほっこりしている。


「えっと……夕霧……さん?」

「……どうしたの、八乙女くん?」


 夕霧は俺のブレザーの袖を掴んで、その数歩あとをとことこ歩いていた。


「これじゃ、俺は夕霧の保護者じゃないか……」

「……ダメ?」


 振り返って夕霧に告げると、彼女はきょとんと首を傾げ、強く俺の袖を掴んで離したくなさそうに俺の顔色を窺っている。


「あ、いやダメじゃないけど……」


 誰だよ、夕霧がかわいくないとか、地味子だとか馬鹿にした奴らは!!!


 もちろん前髪を下ろしているので、綺麗とか美少女って感じは薄れているけども、子猫とか子犬とかが甘えてじゃれてくるようなかわいさで、俺はあろうことか……、



 夕霧の頭をなでなで、してしまっていた。



「わたし……」


 すると夕霧は口に軽く握った手を当てて、身を退いてしまう。


「こめんっ! いきなり男に頭を撫でられたりしたら、嫌だよな……」


 俺は慌てて、夕霧に頭を下げて謝罪していた。


「ううん……ちがうの。八乙女くんに頭撫でられたら、わたし……勘違いしてしまいそう……わたしになんて好きになられても困るよね?」


 ぶんぶんぶんと、大きく首を振って撫でられたことが嫌でなかったと否定した夕霧は、頬だけでなく袖から覗いた手までも真っ赤に染めて、俺の顔を見つめているようだった。



 どちゃクソかわいいじゃねえかよぉぉーー!!!



 夕霧のかわいさに額に手を置き、片膝を廊下についてしまいそうになっていると彼女は俺に申し出てきた。


「あ、あの……さっきみたいにわたしと手をつないで……くれませんか?」

「ああ、もちろんだとも」


 口に手というか袖を当てた夕霧はもう一方の手を差し出したので、俺は彼女の手を握り、手を繋いだ。


 保健室で眠っている夕霧の手を勝手に握ったのとは違う。彼女の意志で俺と手をつないで欲しいと言われただけで、なんだか心が自然と暖まる。


「ふわぁぁぁ……や、八乙女くん……おっきいよぉぉ……」


 なんだか、それだけ聞くと勘違いされてしまいそうな夕霧の言葉だったが、彼女にとって俺の手は大きいらしい。


「握りにくい?」

「ううん……お、男の子の大きな手、好き……かも」


 歩いていると夕霧は俺に甘えたいのか、ゆっくり華奢な身体を俺の腕へと寄せてこようとする。だが、遠慮したのか首を振って、元の距離を保とうとしていた。


 この着かず離れずの距離がなんだか気恥ずかしくて、初々しくて、たまらなく心地良い。


 保健室から教室へ戻るだけだったが、生の夕霧のことを知れて良かったと思っていると彼女は急にうなだれ、沈んだ声で訊ねてきた。


「誰もわたしの心配なんてしてくれないのに、八乙女くんはどうして、そんなにやさしくしてくれるんですか?」


 意外と核心を突いた夕霧の質問にドキッとさせれる。誰かから認められたくてエロい配信をしていることを知ってるとか、『スクダイ』で起こったことを話すわけににもいかない。


 落ち着いて、スチルで見た夕霧のエピソードをさも直で見てきたように伝える。


「それは俺が夕霧がやさしいってことを知ってるからかな。ほらさ、雨に濡れてまでも捨て猫の飼い主を探してたりしてたでしょ? そんな夕霧のことが気になっちゃった」


 ぶるぶると身体ごと振って、夕霧は自分を否定し始めていた。


「わ、わたしなんか見ても仕方ない……です。八乙女くんみたいなキラキラした男の子から見たら、私はドブネズミみたいなものだから……」


「そんな悲しいこと言うなよ。もし夕霧のこと悪く言う奴がいたら、俺が止めるよう言ってやるから。夕霧はすんげえ、かわいいんだぞっ! ってな。だから自分を卑下すんのは今日で終わりにしよう」

「うん……うん……ううぅぅ……」


 俺の言葉で感極まったのか、夕霧はうなずくとまぶたに涙がじわっとあふれてきて、まぶたからこぼれ落ちてしまう。


「俺は夕霧の味方だ。なにかあったら、すぐに俺を呼んでくれ」

「あい……あい……ううぅぅ、ありがとう……ありがとう……八乙女くん……」


 彼女の涙を見て、いたたまれなくなった俺は突っ立って滝のように涙を流す夕霧の身体を抱きしめる。


 こんな華奢な身体で周囲の悪意を受け止めてきていたなんて……。


 夕霧は俺が絶対にしあわせにしてやる!


 俺には、そのためのプランがあった。名付けて『野ブタがプロデュース』だ!!!


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善行はPになるつもりなんですが、Pがアイドルとピーがピーでピーピーピーみたいな薄い本展開はありでしょうか?www ありに決まってんだろ! という読者さまは是非フォロー、ご評価お願いいたします。

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