第8話 初登校

「善行、若葉、運転手に学校まで送迎させよう」

「ありがとう、父さん。でもそれには及ばない。あまり目立ちたくないからね」

「おじさまのご厚意感謝いたします。私も兄さんに同意します」


 黒塗りの高級車で学校まで送迎しようと両親から提案されたが若葉が遠慮したことと俺も目立ちたくなかったから、断わっておいた。


 すると父さんから、深いため息が漏れる。


「若葉……送迎を遠慮するのは良いとして、おじさまはもう止めようじゃないか。私たちが若葉の親では不満かね?」


「いえ……お二人にはいくら感謝しても、し足りることはないです。高校を卒業すれば、精いっぱいご恩返しいたします」

「高校と言わず、大学まで行っていいんだ。なにも遠慮するんじゃない」


「私はあまり勉強は……」

「別にいいじゃないか。若葉はこれまでしっかり勉強してきたし、大学で遊んだって」


「善行の言う通りだ。メイドたちに混じり、お手伝いしてくれたおかげで家政も堂に入っている。好きな男の子がいるなら、学生らしい交際をするのもいいことだ。急いで社会人になる必要もないからね」


「そうそう、善行しかいなくて、若葉がうちに来てくれて、とっても華やかになったわ」

「おば……お母さん……」


「そうそう、本当のお母さんと思ってね、若葉」

「はい……ありがとうございます」


 善行がひ弱だったために善行の両親は彼を溺愛して、若葉を蔑ろとまではいかないまでも、関係が良好とは言い難かった。


 だけど俺がステータスを爆上げしたことにより、両親の関心は若葉に向き、常に彼女のことを心配してくれる最高の両親になってくれている。


「じゃあ、入学式でな」

「父さん、遅れるなよ」

「はは、それは昔の善行だろう」

「確かに。だけど若葉が毎朝起こしてくれるし、遅刻する気はまったくしないな」


「まったくこの子ったら……若葉に頼りきってないで自分で起きなさい」

「そうです、兄さんは自分で起きる努力をすべきです」


 俺は若葉に言い返したかったが、こらえた。


 なぜなら、俺が早く目を覚ましていると若葉がもの凄く残念そうにするから、わざと二度寝をすることが多くなってしまっていたのだから。



 100メートルくらいある廊下から玄関のドアまで、ずらっと並んだ使用人たちから「いってらっしゃいませ!」と見送られながら、俺と若葉は自宅をあとにしていた。


 だが俺はすぐに後悔した。


「なあ若葉……」

「なんですか、兄さん?」

「敷地内だけでも送迎してもらったほうがいいんじゃないかと思ったんだ」

「確かにそうですね……」


 なにせ自宅の敷地外に出るまで2キロ以上あるんだから……。


「じゃあ明日から送迎してもらおっか」

「やっぱりダメです。兄さんにお説教する時間がなくなってしまいますから……」

「確かに……。若葉といっしょにいるせっかくの時間が減るのはやだなぁ。じゃあ、自転車はどう?」


 そう訊ねた瞬間、若葉は俺の前に躍り出てるとパツパツに張ったブラウスの胸元がばるるんと揺れてしまう。揺れが収まると彼女は俺にジト目で言ってのける。


「もしかして、兄さんの後ろに乗れとかですか? 私の乳房が背中に当たって、『んほ~ぎもぢいい』とか凄くキモいラブコメ漫画を見すぎて童貞の妄想をこじらせたんですね」


【B95 W58 H92】


 直近の若葉のスリーサイズだ。妄想をこじらすどころか理想を具現化したそのものが俺の隣を歩いている。だがゲームでは、若葉のバストのボリュームは90越えの大台には乗っていない。


 本当に若葉のおっぱいを育てたのが、俺のミルクだったりしたら、どうすればいい?


 今朝、若葉に搾られた快感が甦ってきて、股の間の乳腺が半分肥大化していた。見つかったら、まだうちの敷地内なので木陰に隠れ、若葉に「ホント兄さんはダメな人ですね」とか蔑まれながら、搾り取られる妄想をしてしまう。


「いやそこまでは期待してねえよ……別に自転車なら二台あるし。若葉が嫌なら、いいんだよ。菜々緒が俺に後ろに乗せろとかうるさいから、その女難除けになるかなって」

「えっ!?」


 若葉は菜々緒の名前を出した途端、意気揚々と歩いていた足がピタリと止まる。


「乗ります。兄さんの後ろに」

「いや無理しなくても……」


「兄さんと先輩が破廉恥なことをして、変な噂が私に届くのは嫌なんです。――――兄さんは……私とだけ……えっちなことをすべきなんです……誰も近づけたりさせません」


 最近特に若葉はぼそぼそと何か独り言が増えたような気がするんだが、後半のほうが声が小さくて聞き取れない。


「俺はそんな気ないけど、生徒会長と二ケツしてたら噂されるよな。気をつけるよ」

「ホントにですよ」


 固有スキルで見させてもらうとかなりこじらせたツンデレなのは間違いないんだけど……。


 雅人に若葉を寝取られないために、ヒロインたちと友好度を上げないといけない。でも友好度を上がると同時に発情度も上がってしまい、菜々緒みたいにヤバいことになる。


 どうしたものか……。


 ――――おはよ、ってあの子凄くかわいくね?


 ――――ああ、モデル? 女優?


 ――――隣を歩いてる男の子、新入生かな?


 ――――ちょっと声かけてみる?


 考えごとをしているうちにいつの間にか家の敷地の外に出てしまっていた。うちの高校の制服着た生徒たちがこちらを見て話をしているらしいが……。


「兄さん……なに難しい顔してるんですか?」

「そんなくっつかなくても……」


 沈黙が続いたことに若葉はつまらなく感じたのか、訊ねてきたのだが俺の腕に若葉の巨乳が当たっていた。


「兄妹じゃないですか、なに恥ずかしがってるんですか? それとも兄さんは本当に邪な気持ちを私に抱いてるの?」


 わざとだ。


 うちの生徒だけでなく、歩いてる女子の視線を感じていたのだが、若葉もそれを察知して“私の兄さんなんだからアピール“をしているのかもしれない。


「やっぱり若葉はかわいいな」

「ふぁっ!? と、とつぜんなにを言いだすんですかっ! 兄さんに誉められてもうれしくないです」


 言葉とは裏腹に若葉は人差し指同士をもじもじとすり合わせ、顔を真っ赤にしていた。


 俺がくっつくと嫌だと言うが、若葉からはすり寄ってくる。ちょっとわがままだが、本音を覗くとそれすらかわいいと思えてくる。


 なんせ、


【兄さんのたくましいものを見て、ミルクを飲んだらひとりえっちが捗っちゃった♡】


 とのことだから……。どうやら若葉は俺から搾り取ったあと、俺を想像して自分の部屋でいたしていたらしい。


 俺が若葉の微笑ましいツンデレにほっこりしているときだった。俺たちの進路を塞ぐうちの高校の制服を着崩した男たち。彼らは髪を染めたり、ピアスをいくつも開けたりしていて、品行方正とは真逆を行っている。


「おいおい、通学路でいちゃつくんじゃねえよ」

「ああ!? オレらに見せつけてんのかよ?」

「うひょーーっ! おっぱいデカくて、かわいいとか、最高かよ。んな奴と登校してねえで、オレらといっしょに大人の学校に行こうや」


 善行がこいつらにボコボコにされ、雅人と出会うきっかけになる不良たちだった。


「……」


 若葉は不良たちを汚物を見るかのような目で蔑んでおり、会話すらする気がないのか無言を貫いている。俺は若葉を親指で差しながら、不良たちに言い放った。


「だとさ。つるまねえとナンパのひとつもできねえとか、チキンハートくんたちが雁首揃がんくびそろえてるんですかね? ああ、がんだからグースハートの間違いか」


「新入生のガキがっ! てめえなんか、ここでボコボコにして二度と学校に来れないようにしてやるっ、やっちまえ!」


 若葉に離れてるように言うと「兄さん、負けないで」と励ましの言葉をもらう。頷くと同時に不良たちが俺に襲いかかってきていた。


「仕方ないな。若葉におまえらみたいな汚物を見せ続けるのは忍びない。社会のゴミみたいなおまえら全員まとめて消毒してやる、かかってこい」


 やれやれ、さっそく免許皆伝の力を披露しなければならないとは……。まあこいつら、ヒロインを輪姦するようなマジでクソ野郎どもなんで、やるしかねえよな。


―――――――――――――――――――――――

すっかりむっつりスケベに育ったけしからん美少女の若葉たんw そりゃ、雅人でなくとも寝取ろうとする輩はいますよね。善行は若葉たんを守るため、ヒロインたちを攻略しないといけませんが、そうすると若葉たんのやきもちがヤバいことに。若葉たんがさらにドスケベになるのが見たい読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

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