第41話 白豚悪役令嬢

「えっ!? これって生徒会長じゃないですか!」


 新入部員の一人、加藤が驚いた。俺は加藤に菜々緒たちが送ってくる迷惑LINEの画像を見せたからだ。昼休みに水泳部の部室に集まり、俺は新入部員たちに村井に勝てる秘策チート技を伝授しようとしていた。


「うおっ! こっちは白石萌香だ。うちの学校でも美少女10選に数えられる2人のエロ画像を八乙女がなんで……」


 もう一人の新入部員、吉村は萌香の画像を見て息を荒くして興奮気味だ。加藤は俺が美少女2人と関係を匂わす画像見て訊ねてくる。


「まさか八乙女くんって2人とヤッてるの?」

「ヤッてねえって……それにあの菜々緒と萌香がそんなビッチみたいなことするわけないだろ。2人に似たエロ画像をネットでズリネタに拾ってきただけだ」


 吉村は加藤によくぞ訊いてくれたって感じで2人の画像をマジマジ見ながら吟味していた。俺の返答に加藤と吉村は首を傾げていたが、俺はもちろん2人とシてないし、菜々緒と萌香の名誉ってもんがあるから、加藤たちには別人と説明を入れておいた。 


 まあ加藤たちが興奮するのは無理もない。顔こそスマホや手で隠しているものの、下着姿だったり、手ブラみたいに局部を手で覆うだけで一糸纏わぬ自撮りエロ画像を送りつけてきたのだから……。


 遠いセクシー女優やグラドルよりも身近にいる憧れの美少女のエロ画像は股間にくるものが段違いだ! まあ菜々緒と萌香の裏の性格を知る俺は富士山は登らないほうがいい、って感じなんだが。


 これが美少女だから許されているのかもしれないが、男が女の子に自撮りエロ画像を勝手に送りつけようものなら、ただのセクハラでしかない。俺も色々忙しくて菜々緒たちの相手をしてやんなかったのもあるかもしれないが。


 『スクダイ』の仕様として、一度ヒロインの発情度を上げてしまうと、ヒロインたちの相手をしなくなった場合、構ってほしいのかどんどんエロい方法で気を引いてこようとするんだよな。


 スマホのなかに入れておくと若葉に見つかったとき、ヤバいということでそこからデータを移し、わざわざ高画質に出力できる用紙にプリントアウトし持参したので、2人に告げた。


「好きなものを持って帰ってくれ。村井戦に向けて激励を兼ねた俺からのささやかなプレゼントだと思ってほしい」


 吉村はたまっているのか、画像を何枚も血眼になって選んでいる。それを見た加藤は笑ってつっこんでいた。


「吉村くん、そんな頑張ると枯れちゃうって」

「大丈夫だ! 1日最低5回はイケるからな」


 大人しい加藤は菜々緒、エロそうな吉村は萌香を選んでいた。2人が嬉々として好みのエロ画像をチョイスしたことで、俺は真意を告げる。


「2人とも今日からそのエロ画像を見ながら、オナ禁するんだ。そうすれば、2人は簡単に村井に勝てる」

「は?」

「え?」


 まさにハトが豆鉄砲を食らったみたいに2人はエロ画像を手から離してしまい、ハラハラと床に落ちてしまう。


「これから3年間の高校生活、村井の奴隷になるか、勝って女子部員たちからモテモテになるか、どっちがいいのか俺は2人に任せるよ」


 期待に胸を……いや股間を膨らませながら呆然とする2人に告げて、俺は部室をあとにしていた。


 2人がちゃんとオナ禁をすれば、確実に村井に勝てる算段はあった。


 なぜなら、これはエロゲ世界。


 オナ禁ブーストは正しくはオナ禁というより射○をしないこと、それが必須だった。


 猿みたいな性欲の雅人がヒロインたち相手に○精を我慢できるはずもなく、スタッフはあえてプレイヤーが選択しないであろう修行僧のような禁欲を課すことで、一時的にドーピングを遥かに越える運動能力と体力を得られるように裏技を仕組んでいた。


 ぶらぶらと校舎へ戻るなか、考えごとをする。村井は実力主義でコーチングにも一家言ありそうだったけど、シンクロでも潜水でもないのに息止めって意味あるのか? 俺はそう疑問に持たざるを得なかった。



 教室へ戻ってくるとなにやら騒がしい。


「おっ! 八乙女が戻ってきてくれたぞ!」

「助かった!」


 若葉を取り囲んでいたクラスメートたちに囲みのなかに入れてもらうと、あの後ろ姿があった。


「兄さん! どこに行ってたんですか……」

「ごめん、ちょっと打ち合わせがあってね」


 若葉は俺が戻ってきたことで駆け寄り、俺の後ろに隠れブレザーの袖と裾を掴んでおり、声の震えからかなり怖がっていることが丸分かりだ。


 ふん! と若葉が席を離れたことで黒髪にマゼンダのメッシュが入ったどっからどう見ても、ヤバそうな美少女が俺へ向かってきており、目が合うなり嫌みったらしい口調で言い放った。


「あら~、うちから逃げ出した善行やないの」


 独特の京言葉っぽい関西弁に聞き覚えこそあったが、思い当たる人物がまったく浮かばない。


「俺はキミのことなんて知らない。人違いなんじゃないか?」


 なっ!?


 俺が見知らぬ美少女へ告げると若葉を守ろうとまえに出た親衛隊の男子たちを軽々と押しのける光景に驚く。


 ラグビー部に、柔道部、野球部、バスケ部とはるかに美少女より身体が大きいのにだ。


「あらひどい言い草……元許婚というのに簡単に忘れてもろたら、困りますわ~」

「まさか、まさか、おまえはあの周防沙織だって言うのかよ!?」

「そうどす。正真正銘の周防沙織はうちやからね」


 容貌が変わり過ぎていて誰だか分からなかった……。


 勝手に椅子を引いて座り、俺たちの目のまえで優雅に扇子を仰ぐ地雷系お嬢さまは善行の婚約者で、本来の姿はこんな美少女じゃなかった。


 周防とデブな容姿からスモウちゃんの愛称で呼ばれ、ルートによっては雅人とヤるバッドエンドが存在していた。もちろん今のような美少女とではなく、関取みたいな体型でだ。



 バキンッ!!!



 なんだと!? 固有スキルパパラッチでの探知が弾かれ、頭のなかで金属同士がぶつかる激しい音が響いていた。


「あら、乙女の心の内を覗こうなんて、いやらしすぎやありまへん? まあ、うちのこと気になっとるって、ことやねぇ。善行はん」


 そうか、探知遮断のスキルを習得してるんだな。そんなことを知ってるのは普通じゃありえない。しかも俺と同じように容姿の改善を図って成功している。


 おそらくステータスもスモウちゃんの比ではないかもしれないな。


 俺が周防の考察していると彼女はそーっと寄ってきて、耳元でささやいた。


「抱かせてあげてもええよ」

「ああ、身体を重ねて語らえば、すぐ分かりあえると……」

「さすがやね~、話が早いわぁ~。じゃあ、いまから多目的トイレに♡」


 固有スキルでは分からなかったが、周防は発情度100パーセントになってんのか!? そう思ってしまったが、俺の答えは最初から決まっていた。


「若葉を怖がらせるような女とヤるわけないだろ」

「なっ! なんですって!? ヤりたい女ナンバーワンに輝いたうちの誘いを断るなんて」


 周防は持っていた扇子をバキッと折って、俺を威嚇するように睨んでいた。


「それになんか病気持ちっぽいし……」

「病気持ちぃぃ!? 性病なんか持ってへんわ!」


 誰も性病とはひとことも言ってないんだけどな。どちらかというと病気っぽいのはメンタルのほうだから。ボソッと俺がつぶやくと周防はきっちり拾って、つっこむところは、やっぱり関西人っぽかった。


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やっぱりスモウちゃんは雅人にお任せするのがいいのかなぁ? みんなまとめて、ざまぁをご希望の読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

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