第68話 被害者の会
――――【若葉目線】
最近、兄さんは家を空けてることが多くなった。
理由は簡単。
夕霧さんがアイドルからV Tuberに転生して以前にも増して、忙しくなったからだ。
兄さんと夕霧さんを見ていると……ううん、それだけじゃない、他の女の子と兄さんが仲良くしているのを見ると心が痛くなってしまう。
私のなかでどんどん大きくなる兄さんの姿。
もしかしたら、夜這いの方法がマンネリ化しちゃって、飽きられてしまったのかもしれない。
夜の10時になると私は兄さんの寝床に潜り込んでいた。
夢と勘違いされたときに分かったんだけど、どうも兄さんは攻められるより、攻めるほうが好きそう。
だから兄さんが戻ってくるまで待機していた。
「ああ……疲れた……」
お風呂から上がってきて、パジャマに着替えた兄さんがベッドへ寝転ぶ。
あと数十センチで兄さんと接する距離になり、どきどきしてきて、大事なところがキュン♪ となってきてしまう。
お布団に潜んで兄さんが私の存在に気づくのを待っていると、いよいよそのときがやってきた。
リアル抱き枕作戦開始!
お布団をめくったときに私は兄さんに見つかってしまう。
「若葉!? なんて格好してるんだよ!?」
真ん中がくぱぁして乳首が見えちゃってるブラジャーに下着を穿かずにガーターベルトとストッキング着用しているのだから、兄さんが驚くのも仕方ないと思う。
あうううん……兄さんに見られてるだけで、お股が切なくなってくる。
「私は今日、抱き枕なのです。お気になさらず兄さんは寝てください」
「いや寝られないよ……」
兄さんのズボンを見ると大きく膨らんで、私で興奮してくれてることがうれしかった。
「もしかして、私の身体を見て興奮してるんですか? 私みたいな冴えない身体を見て興奮するなんて、やっぱり兄さんは変態ですね」
「いや普段ツンと済ませて清楚に振る舞ってる若葉がそんなドエロいかっこしてたら、男はおろか女まで興奮すると思う」
「はっ! 私は抱き枕でした……しゃべってはいけませんね。兄さんのお好きなようにいたしてください」
「若葉!? 若葉ったら!」
「……」
私はもう抱き枕だから、兄さんの問いかけに応えずにそのままベッドに居座っていた。
「ふ~ん、そういうつもりなんだ。じゃあ、若葉はいつまでマグロちゃんでいられるかな~?」
マグロ!?
私がびっくりしていると兄さんは口づけしていた。
はあぁぁん……。
大好きな兄さんから、ちゅっちゅっされるだけで、声が出てしまいそう。
ちゅばっ、ちゅばっ、れろれろ……。
「ああ……若葉の唇、柔らかくて綺麗でキスできてるなんて、夢みたいだ。抱き枕だから、好きにしていいよね?」
兄さんは丁寧に断りを入れたかと思うと兄さんの舌が私の舌をちゅっちゅっとキスしてきちゃう。
ら、らめぇぇぇ……!
なんなの、兄さんにキスされるだけでお布団がお漏らししたみたいに湿ってきてしまうのぉぉ……。
はあ……はあ……首筋も耳も鼻も……ううん、兄さんに舐められてないところはないくらいに愛されちゃってた。
「若葉がこんなにえっちな子だったなんてな……」
兄さんは私のいけないブラジャーを見て、ため息をついてしまった。
も、もしかして引かれしまった?
そ、そんな……兄さんに嫌われてしまったの?
いや、いや、いや~~!!!
兄さんは私のすべて、私の生きがい、兄さんに愛されない人生なんて生きる価値がないよぉぉ……。
「ううっ、ううっ……わ~ん……」
「若葉!? どうしたの!? なにか俺、悪いことしてしまった? 痛かった?」
抱き枕ってことを忘れて、悲しさから声をだして泣き出してしまったことから、兄さんは私を気づかいおろおろしてしまっていた。
「わ、私が兄さんに愛されたくて、うっぐ……うっぐ……こんなえっちな格好したのが引かれたんじゃないかと思っちゃったんです……ううっ」
「な~んだ、そんなことだったのか……俺はえっちすぎる若葉も大好きだ! ビクトリアンメイド服でツンとお澄まし顔の若葉も、うさ耳バニーのハイレグもたまらなく好きに決まってる! 俺を罵倒してくるのも愛情の裏返しだってこともバレバレだっし、若葉に言葉責めされてるみたいで俺の性癖を目覚めさせてくれたんだ! もう俺に若葉なしで生きていけると思ってんの? 無理だって!」
「ううっ、ううっ、兄さん……兄さん……好き、好き、大好き! もう絶対に離れませんから! ウザいって言われても離しません! ずっとずっと一緒にいますから!」
私の想いに兄さんは深く頷いたあと、ブラジャーからはみ出た私のお豆さんをペロペロと舐めてきて、それから気持ち良くされすぎて気づいたときには私は自分のベッドに寝かされていた……。
あれ?
私の部屋に兄さんが入ってきたということは、枕のサインは見られちゃった!?
は、恥ずかしい……。
――――翌日の放課後。
「若葉、ごめん。俺、用事があるから先に帰らしてもらうな」
「はい、お気をつけて」
先に帰る兄さんを見送ったあと、ひょこっと私のクラスを窓から覗いている女の子がいた。
「こんにちは、若葉はん。元気しとった?」
「周防さん!」
「そんな警戒しやんといて~な。なんもせえへんわ」
「うそ! 私、知ってるんです、あなたが私のクラスメートたちに酷いことをしようとしてたことを……」
「それもこれも善行のためを思ってのことやん。善行をあんたのもんだけにできるええ方法があるんやわ。うちが教えたるさかい、おいで。悪いようにはしやへんし、な。おいでーや」
「そんな見え透いたうそに私は騙されませんから!」
私が語気を強めて、周防さんの誘いを拒絶していると黒瀬さんや夕霧さんが心配してきてくれた。
「どうしたの、若葉さん?」
「……な、なにかお困り……ですか?」
「あ、うん……ちょっと……」
兄さんを巡るライバルなんだけど、いい子ばかりだから、嫌いになれない。
「ホンマ、つまらん女やなぁ……まあ、ええわ。次は来てもらうし」
私が周防さんを見ると2人の視線が彼女に集まり、居心地が悪くなったのか、彼女は教室を出て行ってしまった。
いったい私にどんな用事があったんだろう?
――――【雅人目線】
「オヤジ! どこに行ってたんだよ」
「ああ……借金取りに捕まってた」
「なっ!?」
はっきり言って、オレのオヤジはクズだ!
本人は大学教授とか言ってるが実際のところただの講師でパチンカス。しかしオレほどでもないがイケオジなので女にそれなりに持て、あそこが乾いたことがないらしい。
「家に金を入れてるっつうのも、まさか……」
「そうだ、借金してた!」
オレの親だが、はっきり言おう。
こいつは馬鹿だ!!!
もうオヤジのことを訊くのも嫌になってきたので話題を変える。
「そういや今朝からおふくろがいねえんだが、オヤジはなんか知ってるか?」
「ああ? 冴子か、あいつはオレの身代わりに借金取りに預けた」
「はあっ!?」
「あいつは若いホストに入れあげてるから、いいんだよ! 借金取りとそのホストが連んでやがったからな。オレが金策に失敗したら、熟女もんに出演させるだとよ」
はははは……呆れ果てて笑うことしかできねえ。
オレのオヤジはマジくそ野郎じゃねえか!
「で、その金策の当てはあんのかよ?」
「ある! それもこれもぜんぶ周防沙織ってケツの青いメスガキに騙されたせいだ」
「なんだと!? オヤジも周防を知ってんのか?」
「知ってるもなにも、あいつが上手い金の成る木があるってことでオレのセフレの家出娘がアイドルになったから、そこから毟り取れって言われたんだよ」
こいつはいい復讐の口実が出来たな。
オレは周防に利用された男どもに声をかけることにした。
周防沙織被害者の会を結成してやるっ!!!
―――――――――――――――――――――――
クソ男どもVSクズ令嬢! 勝つのはどっちだ?
まあ善行しか勝たんwww たぶん、2、3話で2章が終わります。
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