第47話 超かわえろ天使ちゃん
気持ち良かったぁぁ~!
じゃない……先生と接触事故で液漏れしてしまうとか、若葉に知られたらどうなることやら。一応、固有スキルで確認すると排卵日ではなかったことが救いだった。
【八乙女くんに突かれる度に好きになっちゃう♡】
自室に籠もり先生の心のなかを思い出すのだが、とにかくストレートすぎた……。
あのとき先生を妊娠でもさせていたら、それこそ本当の事故だ。先生はやさしいし、おっぱい大きいし、俺にだけえっちだし……でいいことずくめで仮に俺と先生の赤ちゃんができてたら、責任を取る覚悟はあるんだけど。
問題は俺が完全にエロゲのノリに流されてしまったこと。
ヒロインは助ける、えっちはしない!
「兄さん、にやにやしてキモいです」
俺が拳を硬く握り、誓いを立てていると先生とのプールでの一夜で頬が緩んでいたのか、若葉がまるで吐いた物でも見るような目で見てきていた。
「ああ、そうだ。先生と旦那さんの問題が解決したから若葉といっしょにゆっくり過ごせるって考えたら、にやにやしてしまうよ」
「な、な、な、なにもっとキモいことを言ってるんですか! に、兄さんと私がゆっくりしっぽり過ごすなんて……」
戸惑いながらも語気を強めた若葉だったが、きゅーっとヤカンが沸いたように両手を頬に当ててのぼせていた。
正直なことを言えば、うちの権力を持ってすればあの程度の会社規模なら倒産に追い込むことはできた。だけどそれは旦那さん以外の役員と従業員を巻き込む形になってしまうので、買収して経営権を奪うのが、いちばんの方法だろう。
その結果うちの優秀な弁護士が旦那さんの資産からたっぷり満額とも言える慰謝料の1億円をせしめて、先生に渡すことができたんだから……。
「あれ? 若葉、あそこになにか建ててるけど、なにか聞いてる?」
「いえ、なにも……なんでしょうね」
先生の満たされない欲求については追々考えるとして、金銭面では俺なりに納得できる結果に満足していたとき、ふと窓の外を見ると離れのような建物が建てられていたのだ。
「善行おぼっちゃま、若葉お嬢さま、旦那さまがお呼びです」
また父さんか、母さんに訊ねておこうと思っていたら、メイドさんが俺たちを呼びにくる。
「えっ!?」
「なんでうちに先生が……?」
俺と若葉が父さんのいる応接室に入ると一条先生が俺たちににこやかに手を振っていた。
「2人は良く知ってると思うが、今日から新しく家庭教師をしてもらう一条みゆき先生だ」
「善行くん、若葉さん、よろしくね~」
俺と若葉は互いに顔を見合わせると息ぴったりに先生に訊ねた。
「「先生……まさか学校を辞めたとか」」
「ううん、大丈夫。慶一郎さんがマンションを引き払ってボロアパートに引っ越したんで、旦那さまのご厚意でこちらに住まわせてもらう運びになったのよ。家庭教師はそのお礼ね」
「先生、若い2人をよろしく導いてやってください」
「はい、旦那さま。いっぱい2人に教えていきたいと思います」
いきたいが、イキたいにしか聞こえないのは俺だけだろうか?
先生が父さんにぺこり頭を下げたかと思うと俺のそばに寄ってきて、耳打ちする。
「2人に正しい性教育を施してあ・げ・る♡ 逆夜這いと3
「ふぁっ!?」
驚いた俺の反応を見て、うふふとやさしい笑みを先生は浮かべていたが、俺は先生のデータを思い出す。担当教科は古典だが、大学の文学部出身で源氏物語を研究していたことを……。
――――翌朝。
「黒瀬、おはよ!」
「八乙女くん……おはよう」
若葉といっしょに教室に入ると黒瀬はよそよそしく俺にあいさつをする。
――――黒瀬に振られたのに懲りねえな、はは!
――――イケメンでもみんな落とせると思うな!
人間、知らないほうがいいってこともある。
男子たちから俺をあざ笑う声が上がるが、これが彼らに黒瀬姉妹と同居していて、2人から毎日ご奉仕を受けているなんて知られでもしたら、クラスの男子全員から恨まれかねない。
だから黒瀬には別々に登校し、敢えて学校ではよそよそしくしてもらうようお願いしていた。
それに……。
着席すると頬杖ついて、ぷく~っと頬を膨らませている若葉のこともあるから。
俺たちがラブコメしていると、教室の空気が変わったことを感じ取る。ざわざわと周りが騒がしくなり、俺に刺すような視線が投げかけられるようだった。
――――周防さまだ!
――――お美しい……。
――――男子ってバカよね~。
一変した雰囲気の原因物質が俺に接近し、言い放った。
「この程度でうちに勝ったとか思ったら、大間違いやからね。うちを裏切った善行はんはぜったいに許さへんさかいに覚えときよし。いまは他の女といちゃついてたらええわ」
俺が周防を裏切った?
婚約破棄のことなのか? だったら、あれは前近代的ってことで両家の話し合いのうえの合意で無くなったはずなんだけど……。
買収の件を詰ってくるかと思ったら、逆恨みみたいなことをだけを言って、台風一過といった感じで去ってしまった。
「周防さん、なんだったんでしょうか?」
「さあ?」
俺と若葉は2人で首を傾げていた。
だが、今日に限ってやたら騒がしい。
「ふっかぁぁぁーーーーつ!!!」
教室の前のドアから響いた大声にみんなの注目が集まるが、みんなは手を止め一目確認するも声の主がう○こマンと分かるとそれぞれ元に戻ってしまっていた。
「おいおいおい! このクラスの主が戻ってきたっていうのに歓迎もなしかよ! まったく湿気たクラスだな」
雅人の言葉を聞いたクラスメートたちみんなが思ったことだろう。パンツをびちぐそで湿気らせた奴にそんなことを言われたくない、と。
みんなの空気を悪くしているのにまったく空気の読めない雅人は男子たちに自慢げにスマホを見せていた。
「底辺どもに見せてやろう! オレが病院でズリネタに使っていた最高にエロい動画配信者をなぁ!」
――――えへへ……えなこね、いま下着つけてないんだぁ♪
マスクをして腕で乳房を覆い、下半身をもう一方の手で隠す美少女の声。
「なんだよ、超かわえろ天使ちゃんじゃねえかよ! み~んな知ってるつうの。バカかよ、男ならチャンネル登録すんのがマストだっつーの」
「マジ、稲垣って使えないクソみてえな奴だな」
しかしクラスメートたちは雅人の知ったかぶりを馬鹿にする。
「お、おい……オレがせっかく紹介してやったっていうのに、なんだよ、その態度はよぉ! てめえらぜってー覚えてやがれ!」
俺もチャンネル登録しているから、すぐに声を聞いた瞬間、下半身センサーがピコンと反応して誰だか分かってしまっていた。
「くそっ! こんな露出してやがる痴女がそばにいやがったら、即分からせてやんのによぉ! この近くにはどこにもいやがらねえ」
「きゃっ!?」
雅人は馬鹿にした男子たちに中指を立てていたが文句を言っていたため確認ができず、後ろにいた目が隠れてしまうくらい前髪が長い地味な女の子にぶつかっていた。
「大丈夫?」
「あ、あ、ありがとうございます……」
彼女が俺のほうによろよろと寄ってきたので、肩を抱いて華奢な受け止める。彼女は赤くした顔を上げて俺にお礼を言っていた。髪の間から覗く形の整ったまぶたにキラキラとした綺麗な瞳にドキっとした。
「あんだ? いたのかよ」
「ご、ご、ご、ごめんなさい……」
雅人にぶつけられたのに、女の子は身体を小さくして謝っていたが、雅人は謝ることはない。
「おい、雅人! ぶつかっておいて、謝罪なしはないだろ。夕霧さんに謝ったら、どうなんだ?」
「けっ! フェミニスト気取りかよ。どんくさい地味子が悪りいんだろ」
「い、いいんです、八乙女くん……ぼーっとしてたわたしが悪いんだから……」
「だとよ、はっはっはっ!!!」
俺が雅人をとがめたんだが、夕霧は俺の袖を掴んで引き止めると、雅人は笑って教室の外へ行ってしまう。
本当なら雅人にムカつくところだが、俺はむしろうれしかった。
雅人に彼女の正体が身バレせず、雅人の出会いフラグを折ったのだから……。
俺の袖をつかむ目隠れ美少女こそ、超かわえろ天使ちゃんこと夕霧恵麻だった。
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新ヒロイン、えろTuber恵麻ちゃん登場www
また危なっかしいそうなヒロインが出てきましたが、雅人の毒牙がかかる前に善行は救えるのか!? いやむしろ、雅人がざまぁされるのを楽しみにされてる? 復活しても
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