第53話 セクシー劇場

 自分を卑下して、泣きながら震えている夕霧に告げた。


「いや、むしろ絶対生きなきゃいけないレベルのかわいさだ! つか俺、えっちな女の子は嫌いじゃないし……」

「は、は、は、はわわわわわわわ…………………」


 俺は夕霧の手をスマホごと包み込んで握り、彼女に力説した。まあえっちの件は、さすがに恥ずかしさで夕霧を直視できなかったけど。


 すると夕霧は混乱ここに極まれりと言った感じに言葉にならない声を上げていた。


「や、八乙女くんにだけは知ってて欲しかったから……こんなこと言っても、誰も信じてくれないだろうし……」


「ううん、そんなことないよ。よく言ってくれたね。でも夕霧がえなこだったなんて、びっくりしたよ」


 確かにいつも前髪で目元を隠している夕霧を見ても、えなこだと分かる奴はさすがにいないだろうな。


「でもなんで俺に打ち明けてくれたんだ?」

「わ、わたし……や、や、や……」

「ややや?」

「や、やっぱりナイショです……」


 熱した鉄のように赤くなった夕霧は途中で水をぶっかけれれたようにぷしゅ~んと勢いよく蒸気を発生させ、元の肌色へと戻る。



【すき、すき、すき、八乙女くんのことがすき♡】



 夕霧の心のなかを見させてもらうと俺への想いであふれているようだった。


 好感度と信頼は比例しているのかもしれない。


 俺にスマホの画面を見せて、自分の痴態を赤裸々に明かす夕霧だったが、それだけ俺を信じてくれたことがうれしく思う。


「夕霧……ピン留めあるかな?」

「……あ、あるよ……」


 かばんから取り出したピン留めを借り、目元を覆っていた前髪をこめかみ辺りの髪の毛といっしょにまとめた。若葉やメイドさんたちが髪をまとめるときにやってるヘアピンをばってんにさせて。



 なんということでしょう!



 さっきまでの地味さはどのへやら。俺の目のまえにはアイドルもモデルも女優も……みんな霞んでしまうような美少女が現れたのです!


 はっきり言って、大したことはしてないんだが前髪を上げた夕霧を見てるだけで匠になったような気分になる。


 純粋に素材が良すぎるんだ。


「み、見ちゃダメぇぇぇ……」


 だが夕霧はマジで見目麗しいといった顔を両手で覆ってしまった。


「夕霧……ごめん、俺我慢できない。見たい! 夕霧が見せてくれないなら、いまここで土下座して、見せてくれって頼むから」

「えっ!?」


「それこそ、おぱんつ見せてください! って頼むよりも俺は夕霧の素顔が見たくて仕方ないんだよ」

「……うう……おパンツ見せるほうが恥ずかしくないよう……」


 完全に羞恥の感覚がズレてしまっている夕霧は目を片手で覆いつつ、指の間から俺を覗き見ていたのだが、俺の言葉を取り違え、スカートをめくり上げようとしていた。


「お、おいっ! 夕霧!?」


 俺が慌てて止めようとするも間に合わず、まるで劇場の幕が開けるように夕霧のスカートはせり上がってゆく。



 八乙女に電流走る!!!



 とうとう夕霧劇場は開演を迎えてしまい、夕霧はスカートを口で咥えて、託し上げていた。


 なっ!? 紐パン!?


 ブラウスですべて見えるわけじゃないが、おパンツの両側面には貞操の守護者といった感じの紐で結ばれていた。


 あの紐が外れたとき、夕霧は……。


 いやいや変なことを考えるな!


 高まる夕霧に対する妄想を抑えようとするも、鼠径部を覆うピンクの布は薔薇のようなアクセントとレースに縁取りされてセクシー極まりない。



 しかし……。



 それよりも素晴らしいのは夕霧の見せる恥じらいの表情だった。


 紐パン咥え託し上げからの頬を桜色に染めての恥じらいとか、チート過ぎる……。なにかいけないことを夕霧に強要している悪徳領主のような気分に陥ってしまっていた。

 

 ストンとスカートという幕が下り、おパンツ公演は終幕となってしまう。


 思わずアンコール! と叫びそうになったが、さすがに自重した。 


 だが夕霧は自重してくれそうにない。


「うう……おパンツで許してもらえませんか? だめなら、こっちも見てください……」

「なにしてんのっ!?」


 器用に片手でブラウスのボタンを外してゆき、ブラウスの隙間からおパンツとお揃いのセクシーなブラがチラチラと見えてしまう。


「八乙女くんはおっぱいか、おしり……どっちが好きなんですか? でもわたしのおっぱいも、おしりも見るに値しませんよね?」


 ブラウスを半脱ぎになったかと思うと、今度は下半身をくねらせて、今度は後ろのスカートをめくりおしりを見せてくる。


 おっぱい教徒も夕霧のおしりを見たら、改宗しかねない神々しさだ……。


 夕霧のおしりは柔らかで美味しそうな桃がおパンツからはみ出てしまったと言い表すのが正しい。布が半分も覆いきれておらず、かろうじて割れ目の周りだけ逆さに向いた二等辺三角形の布で隠れているようなものだった。


「もう充分だから、止めようね、ね。ほんとに夕霧のおしりも肌も綺麗だからっ!」


 内心もっと見たいと思いつつも、これ以上……いやすでに誰か図書室に入って来られたらマズ過ぎる状況に、俺は夕霧のストリップを止めるよう諭すように説得を試みた。


「ホントにですか? 実はわたしの肌なんて汚いと思いながら、見たくないから止めさせようとしてませんか?」

「見たい! 見たい! 見たいけど、ここじゃマズいから!」


 口をすぼめて、拗ねた夕霧のまた違った表情がかいま見れたのは良かったのだが、いつの間にか夕霧のブラウスは肩から滑り落ち、かろうじてスカートのウエストと腕に引っかかっているだけになっている。


「見たいんですね……良かった! 場所なんて気にしないでください。ぜんぶ見せたいのは八乙女くんだけなんです……」


 あ~言えば、こ~言う……とにかく俺に乙女の柔肌を見せたい夕霧はあろうことか、腕を後ろに回してなにかもぞもぞとし始めた。


 俺はまさかと思い、夕霧を止めようとする。


 トサッ!


 だが俺は勢い余って夕霧を図書室の大きな机の上に押し倒してしまった。しかも俺の右手は夕霧のブラのなかに入り、柔らかなおっぱいに触れてしまっていた。


 左手は夕霧が頭を机にぶつけないよう保護できたのだが、それはそれで問題があった。夕霧を押し倒して抱き抱えているようなものだから……。


「ご、ごめん……そんなつもりじゃなかったんだ」

「はい……なかったけど、いまはそのつもりになってくれたんですね……」


 顔を隠していた手はすでに外れており、目元を見られた恥ずかしさというより、この状況に対してうぶな恥じらいを感じているようだった。


 ここで止めてしまうと、せっかく自信を持ってくれようとしていた夕霧の自己肯定感をつぶしかねない。


 それに……。


 ダメだ……夕霧のこと、家に持ち帰りたくなってしまうくらいかわいく思えてくる。



 パチンッ!



 そのときだった。弾けた音とともにブラジャーは外れてハラリとテーブルへとずり落ち、夕霧の乳房が露わになってしまう。


 かーっと顔を赤く染めて、俺から顔を背けて視線を逸らす夕霧。


 俺と夕霧は無言になってしまった……。


 このまま夕霧のペースに乗せられてしまうと、それこそセクシービデオの撮影になりかねない。



 ガラガラッ!



 俺が危惧しているとドアが乱暴に開いて、ガラの悪そうな声が静かな図書室に響いた。


「うい~、なんだよ。本なんか興味ねえっつってんのに雅人の奴、面白いもんが見れるとか言いやがって!」


 声の主は忘れもしない日下部だった。


  俺は予想外としか言いようがない日下部の登場により、慌ててテーブルの下へと夕霧とともに隠れて様子見していた。


「くそ! 雅人の奴……ガセばっか掴ませやがって。図書室に美少女がいるとか言ってやがったが、んな子どこにもいねえじゃん! つか美少女どころか、人すらいねえ。くそったれが!」


 日下部はムカついたのか強く本棚を蹴る。


 ドサッ! ガンッ!


「くぅぅぅ~いってぇぇぇぇーーーーーー!!!」


 するとちゃんと収納しきれていなかったのか、本棚の上段に収められている分厚い百科事典のような本が日下部の頭上に落下し、クリーンヒットした結果頭を抱えて悶絶していた。


『ぷっ……おっかし』

『くすくすっ、うん……うん……』


 夕霧と顔を見合わせ、俺たちは2人で声を殺して日下部を笑う。


 なんて言ったって、勉強もろくにしない日下部が勉強しろと言わんばかりに百科事典から叱られたようなもんだから。


「くそったれ! こんなとこ二度と来るか!」


 日下部は額にたんこぶを作り、図書室から出ていってしまった。


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いつもお読みいただき、ありがとうございます! こえけんも残すところ、10日を切ってしまいました。応募作にママ系AMSRがなかったので、そちらを書いてみたく、もしかしたらエロゲの方はお休みするかもしれません。休まずこっちも書いてくれ~という読者さまがいらっしゃれば、フォロー、ご評価お願いいたします。

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