第58話 あそこの骨折【ざまぁ】

――――【雅人目線】


 教室の窓から覗いてると八乙女の野郎が若葉と見知らぬ超絶美少女に挟まれ、両手に華で登校してきやがった。


「なっ!? 誰なんだよ! あの激かわの美少女はっ!!!」

「ホンマ、あほなん? あの子がうちが言うてた地味子や。まあどえらいイメチェンしてきたけど」


 音もなくオレの横に並んで、いちいちオレにつっこむ周防に腹が立つ。おまえの口にオレのロケットをつっこんで黙らせてやりてえ!


「ほな、せいぜい雅人のエロいテクつこて、地味子をあんたの女にしたりや~」

「おまえに言われなくてもそのつもりだ。オレを誰だと思ってる」

「ただのババ垂れやん」


「なっ!? こ、こ、このイケメンのオレをそんな風に呼ぶのか!」

「そう呼ばれたくなければ、確実に地味子をものにしぃや。ほな、うちは授業あるさかい居ぬわぁ~」


 あ然とする俺に向かって、余裕ぶった後ろ姿で手を振り、周防は行っちまった。

 

 くそったれ! 言いたい放題言いやがって!


 だがどうすれば……。



 オレの天才的頭脳をもってしても答えが得られなかったが、天はオレに味方した。


「せ、せんせぃ……あ、あのぉ、おなかが痛くて、保健室に行ってきてもいいですか?」


 3限目のホームルームで夕霧が恐る恐る手を挙げ、体調不良を訴えると、


「大丈夫? 無理しないで行ってきてね。付き添いはいるかしら?」

「なんとか行けると思います」

「じゃあ、気をつけて行ってくるのよ」


 八乙女の野郎がフェミニスト気取りで立ち上がろうとしたが、夕霧は首を横に振り、付き添いを拒否った。くっくっくっ、振られてやんの。


 オレはそれから5分ほど過ぎた頃に行動を移す。ふっ、この自然な流れを読んだ行動に愚者どもは感心せざるを得まい。


「先生っ! オレ、腹がヤバいんです。トイレに行ってきていいですか?」


 オレのひとことで教室内は騒然となった。オレの前後左右の席の奴らは、椅子と机を一斉にオレから遠ざけた。そりゃ、オレのバイオテロを知ってりゃ、そうなるわな。


「まあ、それはたいへん! 早く行ってきてね」

「ありがとうございま~す」


 先生はオレを心配そうに見ながら、オレがトイレに行くことを了承する。


 くっくっくっ、災い転じて福となす。この華麗なる作戦に誰も気づくまい!


 あえて腹と尻を手で押さえる演技をしながら教室をオレはトイレへ駆け込むふりをして、踵を返し目的地を変更する。


 オレはまんまと保健室へとたどり着き、高鳴る胸と股間の脈動を抑えるので必死だった。保健室のドアを開けると丸椅子に元ヤン秋月の姿はなく、気兼ねなく美少女を物色できることに小躍りしちまいそうだった。


 カーテンは一ヶ所だけ閉まっており、他は開いたまま。


 閉まっているカーテンを開けずにそーっと抜き足でくぐると……、


「ふはははっ! まさに眠り姫スリーピングビューティーじゃねえか! おまえはオレのキスで目を覚ます。ただし、下の唇だけどなぁ!」


 八乙女の野郎が自分専用のオナホにしようとしていた地味子が制服のまま布団をかぶり、すやすやと寝てやがった。


 カチャカチャ……。


 オレはいまや超絶美少女となった夕霧を見ると興奮を抑えられなくなり、いきなりズボンとパンツを脱いで、夕霧にかかった布団をまくり、下半身のほうから迫った。


 膝と膝を合わせ横寝になる夕霧。


 いいねえ、スカートから見えるヒップラインなんて最高じゃねえか。


「ではさっそく味見といくか」


 オレは夕霧のスカートの裾をまくろうと手を伸ばす。


「なにしてんだ?」

「うおっ!?」


 なんだ? どうなってんだ?


 保健室には誰もいねえと思ってたのに突然ベッド横のカーテンから元ヤン秋月がオレたちを覗いていやがった。


 やべえ……。


 どっからどう見ても、オレが夕霧を睡姦しようとしているとしか思われねえ。


「オレ……いえボクは夕霧の恋人なんです。いまから2人で愛し合おうと思って……」


 苦し紛れの言い訳ではあったが、元ヤン秋月はにこにこしながら、オレに近寄る。


 ふっ、マジチョロいぜ! こんな出任せを信じちまうんだからなぁ!


「せ、先生、なにを!?」

「ああ? いいことに決まってんだろ」


 秋月はオレのバックに回り、股の間から手を差し入れてくる。オレの如意棒は案外きれいな手に掴まれ、思わず声が出そうになったが抑えて、平然を装う。


「おおっ、なるほどなぁ、済まねえ済まねえ。夕霧ばっか気を取られて先生のこと無視しちまった。先生が相手してくれんなら、年増でもオレは抱いてやってもいいんだぜ」


 すでにオレにほれていたらしく、口調を元に戻して言ってやると、秋月はそのままオレの身体は抱え上げてしまう。


「へ?」

「ははは、ガキが舐めた口聞いてんじゃねえぞ、ゴラァァァァァッ!!! あたしと寝てえっつうんなら、力づくで抱いてみろやぁぁぁ!」

「お、折れりゅぅぅぅぅぅーーーーーーー!!!」


「どうだぁぁ、喧嘩仕込みのアルゼンチン・・バックブリーカーの威力は!!! あたしはこの辺じゃ炎怖嶺須エンプレスっつうしがねえレディースの初代総長やってたんだがなぁ」

「なんだとーー!?」


 しがねえどころか、むかつく珍走団やら組事務所は片っ端からぶっ壊した女傑がいるって聞いたことがあったが、まさか秋月なのかよっ!!!


「おらぁぁ! さっさと白状しろや。てめえ、夕霧になにしようとしてたんだ。早く言わねえとバッキリ逝っちまうぜ」


 なんて馬鹿力なんだよ!


 周防とタメ張れんじゃねえか!


「言うから! 白状するから許してくれぇぇ! はぐぅぅぅ……あんたが思ってる通り、オレは寝てる夕霧を犯してやろうと迫ったんだよぉぉ……白状したから、早く下ろしてくれぇぇーーー!!!」


「それは分かった。だがあたしのことを年増っつったことは絶対ゆるさんからなぁ!!!」

「ひっ! 卑怯だぞ! オレはちゃんと口を割ったのにぃぃ、ぐぎぃぃぃーーー!!!」


 オレは思い切り元ヤン秋月の地雷を踏み抜いてしまい、拷問を受けていた。


「しゃあねえな、うるせえし、夕霧も起きちまうから離してやる」


 ようやく秋月はいじめ飽きたのか、オレを抱え上げる力が緩んで地獄が終わろうかと思ったときだった。


「な、なに……えっ!?」

「夕霧、済まん。この馬鹿を病院送りにしてやるから、少し保健室から出てくれないか?」

「は、はいぃ……」


 目を冷ました夕霧が秋月に担がれたオレを横目に保健室を出て行ってしまう。



 バキーーーッ!!!



 その直後骨が折れたような音が、保健室に響き渡った。それと同時にオレの身体は乱暴に床に落ちてしまう。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」


 オレの如意棒がバッキリと折れ、変な方向を向いてしまっていた。


「うわぁぁぁ……うわぁぁぁーーーーーー!!!」

「あー、済まねえ。感覚が狂って、チン骨折陰○折症しちまったな、ははは」


 秋月は笑って、股間を押さえる俺を見ていたが、なにかケアしようとはしていない。


「仕方ねえなぁ、病院にでも連れて行ってやっか」

「てめえ! ぜったい訴えてやるっ!」

「はあ? おまえ……あたしを訴えたら、夕霧をレイプしようとしていた動画、拡散すっぞ!」

「なっ!? 教師が生徒を脅すのかよ!」


「生徒でも犯罪者は犯罪者。関係ねーよ」

「ぐぬぬ……ぐぬぬ……」


 暴力女の秋月と話している間にも、オレの患部は見る見るうちに内出血して、どす黒く染まってしまっていた。


 こ、これじゃ、女とヤれねえじゃねえか!


 せめて、目のまえで仁王立ちする秋月だけでも分からせてやりてえのにぃぃぃぃ……。

 

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たくさんのフォロー、ご評価ありがとうございます。あと2万字程度で20万字なんですが……な~んにもお声がかかりませんw 書けるところまで書こうと思いますので、またフォロー、ご評価の応援いただけますと執筆の励みになるのでよろしくお願いいたします。

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