第2話 エロゲ転生
ゆっさゆっさと身体が揺すられて、目を開けると銀色に美しく輝く髪にエメラルドグリーンの瞳の美少女が俺を見下ろしていた。
彼女の目を見つめると、まるで
床に寝ていたはずの俺が
「もしかしてキミは
「そうです、私以外、他の誰に見えるんですか?」
えっ!? どゆこと???
二日酔いで夢でも見てるのか?
だが若葉の雰囲気は違った。
年齢はそう……10歳くらいで不思議の国のアリスが着ているパステルブルーのロリータ服を紺色に変え、リボン付きのカチューシャの替わりにブリムを被ったような服装をしており、かわいらしい見習いメイドといった感じだった。
JKの若葉も捨てがたいが、ロリ美少女に
さっき見た豚足のような手は明らかに俺の意志で自由に動く。もしかして俺は本当に
「若葉……ひとつ訊きたい。俺は誰なんだ?」
「俺? なにを朝から馬鹿なことを言ってるんですか……兄さんはご自分の名前すら忘れてしまうなんて、どうかしています。もしかして私をからかってるんですか?」
自称がボクから俺に変わったことに若葉は一瞬きょとんとして
「ちがうよ。夢じゃないか、確認したいんだ」
「善行、それが兄さんの名前です。いつまでも寝ぼけてないで早く顔を洗ってきてください。でないと学校に遅れてしまいますよ。ただでさえ頭の悪い兄さんが学校で勉強をサボって、さらに悪くなったらまた私が面倒を見ないといけないのですから」
「俺のこと、心配してくれてるの? ありがとうな若葉」
「そんなわけありません……私が兄さんのことを心配するなんて……」
俺の言葉に反論して、若葉は顔をぷいと背けるものの、白く透き通るような肌の頬を赤く染めている。
若葉は善行の分家の出自なのだが、
真実は善行が若葉の境遇を哀れんで彼女を本家へ引き取るよう両親を説得した……のであるが、若葉自身はそのことに気づいておらず、それが彼女に伝わるのは互いに絆を深めてからのことだ。
どこかよそよそしくて、同い年なのに敬語を使うのはそんな出自も絡んでいる。だがそんな若葉だからこそ、デレたときの破壊力は凄まじい。
俺を家畜のように蔑んだ目で見つめながら、起こしにきてくれた若葉に感謝しつつ、身体を起こそうとするのだが……とてつもない違和感を覚えた。身体は鉛のように重く腹筋が弱くて、うんうんうなるだけで起き上がれずに寝たきりになってしまいそう。
「世話の焼ける人ですね……兄さんは太りすぎなんです」
「ごめんごめん」
小言を言いつつも手伝ってくれる心根の優しい若葉が手を引いてくれたおかげで俺は起き上がれたのだが、きょろきょろと若葉の言っていることが本当なのか裏取りするように辺りを見回しながら、洗面所を探しに部屋から出ようとしていた。
とにかく足取りは酷く重たく、息は切れる。
「兄さん、どこに行くんですか? 洗面所はあっちですよ」
「はは……寝ぼけてた」
若葉の指し示す方向へゆくとドアの向こうに洗面台があった。確かに広い部屋だったが、まさかホテルみたいに部屋のなかにあるなんて……。
恐る恐る洗面台の鏡で俺の自身の姿を確認すると驚愕した。
「
まんじゅうと形容するのがぴったりなパンパンに張った顔、優しそうというより優柔不断で自信なさげな目つき。鼻は豚鼻と言われもおかしくなさそうなものがついていた。
あの幼い若葉は本物で、言ってることも本当。
なんと俺は本当に最愛の義妹を寝取られ学校の屋上から飛び降りるエロゲ『どきどきスクールダイアリー』のキモオタデブの三重苦の友人キャラ、
――――バシャ、バシャ、バシャッ!
特殊メイクかなにかかと思い、水しぶきが洗面台から激しく飛び散るくらいゴシゴシと顔を洗うが、まったく落ちるどころか、皮膚に水の冷たさと前脚と言ったほうが的確な手が触れるたびに善行の顔が俺自身なのだと自覚させらてしまっていた。
俺は数年後にあのかわいい若葉を寝取られ、飛び降り自殺を遂げてしまう運命にあると思うだけで、背筋にぞわっと冷たい悪寒が走る。
死にたくない……そんなことよりも若葉を雅人に寝取られるほうが、一、十、百、千、満天原サロメですわーーーーーーーーーーーッ! じゃなかった、何十、何百、何千、何万倍もツラメ。
まだ時間はある。
俺は座して死を待つつもりなど、毛頭なかった。『どきどきスクールダイアリー』、略して『スクダイ』は育成シミュレーション要素を含んでおり、それが雅人だけでなく、いまの俺である善行にも育成要素が適用されるなら、充分に最悪の未来を回避できる可能性がある!
誰も入ってこないよう洗面所の鍵をかけて、異世界へと送られたときに唱える呪文を唱えた。
「ステータスオープンッ!!!」
うほっ!?
確かカンストの数値は999なのにテストの赤点より低い数値にがっくり膝が折れそうになるが、善行にも一応ステータスが設定されてることに
固有スキル……
ヒロインのステータス及び、彼女たちの秘密を相手に知られずに知ることができる八乙女善行だけの固有スキル。なんともエロゲらしいスキルに吹き出しそうになってしまっていた。それと同時に葛藤も生まれてしまう。
そう、俺の
「兄さん! 兄さん! そんなのんびりしていると遅れてしまいますよ」
「ああ、分かってる。いまイクから……」
ドンドンと洗面所のドアをノックして若葉が俺を呼びにきていた。俺はドアを開け、若葉を一目見て選択を決定したのだった。
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読者諸君! キミたちはエロゲが好きかな? 作者はエロゲと聞いただけでムラムラむくむくしてくるダメ人間だ。そんなダメ人間の書くものでも面白かったら、フォロー、ご評価いただけると妄想が捗るのでよろシコおなにいします。
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