第19話 マン汁

――――【若葉目線】(部屋へ乱入前)


「はあぁぁん……に、にいさん好きぃぃ……むちゅ、むちゅ、ろうれすかぁ? わらひのキスゅぅぅ。今日はなんであそこで止めちゃったんですかぁ? 萌香さんに見せつけながら、しちゃうとか興奮しちゃいませんか? えっ!? もうダメ? 仕方ありませんね……私をめちゃくちゃに……してくださぁぁぁぃぃ、にいさんぁぁぁーーーん!」


 ふう……。


 ベッドの上で来たるべき日に備え、スクワットに腹筋など日課のトレーニングを終えて、思い出すのは兄さんと萌香さんが再会していたこと。


 私を襲う圧倒的絶望!


 なんてことなの。もし、兄さんが萌香さんに欲情して、えっちしてしまうことになったりなんかしたら、どうしたらいいの!?


 それにもうちょっとで私のおしりを見て、ムラムラと欲情した兄さんが本能に赴くまま、私の身体をむさぼってくれると思っていたのに、すべてが台無しにされてしまった。


 おかげで兄さんが恋しく、今日のトレーニングが捗……身が入って仕方がない。


 ポン、ボトリ。


 眼帯ビキニトップに、泳いでもいないのにビチャビチャになってしまったTバックを洗濯カゴに入れておく。


 兄さんの赤ちゃんを身ごもったら、ビキニトップもお乳でビチャビチャになるのかな? 赤ちゃんだけじゃなく、兄さんにも私のおっぱいいっぱい飲んで欲しい。



 ジャーーーーーーッ♪



 蛇口をひねるとシャワーからお湯が出てきて、私の身体に当たり、胸から滝のように流れてゆく。


 兄さん……おっぱい大きな女の子は好きかなのな? 萌香さんより私のほうが大きいよね? もしかしたら、萌香さんも兄さんのミルクを飲んで大きくしようとか、企んでたり……ダメっ、そんなの許さないんだから。


 一滴たりとも兄さんのミルクはあげたくないの!


 萌香さんは兄さんにつらく当たるけど、どこか兄さんに甘えてる節がある。


 兄さんになら、強く言っても大丈夫みたいな幼馴染ならではの着かず離れずの絶妙な距離感で、女友だちから、なにか一歩間違いが起こればすぐに彼女になってしまいそうに思えた。


 兄さんが萌香さんのものになっちゃう!


 兄さんのミルクは私だけのもの、お口だけじゃなく、こっちにも注いで欲しい……。


 気づくとシャワーのお湯をいちばん強くして、当ててしまっていた。



 シャワーを浴び終えると備えつけのお風呂から出て、スポーティな下着に着替えたら机の引き出しから秘密道具を取り出した。


 秘密道具は聴診器。


 なぜか兄さんの部屋に仕掛けた盗聴器はすべて見つけられてしまうのでアナログなんだけど、聴診器がいちばん都合が良かったの。


 ――――ホワワワワ~~~ン♪


 でも聴診器を見た瞬間、妄想が捗ってしまう。なぜか白衣を着た兄さんが私の胸に聴診器を当てていた。


「ら、らめれすぅ……ぐりぐりしちゃぁぁ……」

「大変だ、どんどん膨れていってしまっている。毒素を吸い出さないと。しまったぁぁ! なんてことだ、ポイズンリムーバー見当たらない。かくなるうえは口で吸い出さねば……」


 兄さんは私の下着をぐいっと引き上げる。私の胸に溜まった毒素は兄さんに音を立てて吸い出されてしまった。


 催淫効果のある毒素だったのか、私はぶるぶると震えていて、兄さんのズボンにしか目がいかなくなる。


「お注射してください! 先生の固い立派な注射器で薬液を早く私の中にっ!」

「痛いかもしれないが、我慢するんだぞ。この薬液を投与すれば、助かるからな!」


「は、はい……ありがとうのざいましゅぅぅ、しぇんしぇぇーーっ!」


 はぁ……はぁ……。


 い、いけない。


 早く兄さんの隣の部屋を探らないと!


 口角から垂れたよだれをハンカチーフで拭うと、すぐに聴診器を兄さんの部屋と接する壁に当てていた。


 ――――そうよ! 善行の鈍感ばかぁ……。


 なっ!?


 あの“ばかぁ“は恋人同士だけが許されるいちゃつきの罵倒に違いないわ!


 ――――善行かっこいい……。


 ――――やさしいイケメンはもっと好き!


 兄さんとの仲が良くないと思われた萌香さんが、兄さんとなにかいちゃつき始めるような言葉が聞こえてきて、私は心のなかがざわざわと黒いもやで覆われて不安になる。


 そう思うと居ても立ってもいられずに、そばにあったこっそり兄さんの部屋に紛れこむためのコスプレ用デラボットをまとい、兄さんの部屋へと突撃していた。


 すると萌香さんメスブタが兄さんを全裸で誘惑していて、私は瞬間的にカッとなり……。


「ご主人公サマぁ! ただいまから意地汚いメス豚を調教します。少し離れていてくだサイ」

「ひっ!? なんなよ、なんなの? こいつ、や、やめてよ……やめぇぇ……ら、らめらめっ」


 女の子の弱いところを熟知している私は、気づくと萌香さんをくすぐり倒してしまっていた。


「あひひひ、あはははは、らめ、らめだって、若葉ぁぁぁーーーーーっ」


 始末完了!


 カクンと糸が切れたようにベッドにアヘ顔を晒して倒れた萌香さん。


 ええ、あなたが悪いんですよ。私の兄さんにけがれた手で手を出すから。


 私が恋敵を分からせたところで兄さんがこちらをじっと見つめて、訊ねてくる。


「……若葉だよな?」

「チガイマス。若葉さまはお部屋でお休み中デス」

「じゃあ、部屋に行って確かめてみる」

「ダメデス。兄とはいえ、妹の部屋に勝手に入るのはデリカシーに欠けマス」


 本当はいつでも夜這いに来て欲しいのに……。



 ブルルルルルル♪



 兄さんはスマホを取り出すと、電話をかけているようで、私のスマホから着信音が盛大に漏れてしまっていた。


「スマホを鳴らすのは卑怯者のすることデス! 若葉さまから預かった……きゃっ! 兄さん、首を取ろうとしないでください!」

「やっぱ若葉じゃん……」


 スポンと頭が抜け、かっこいい兄さんのお顔と対面できたのはいいけど、兄さんに正体がバレてしまった……ど、どうすればいいの!?



――――【善行目線】


 今度はちゃんとしたメイドさんが持ってきてくれた萌香の大好物を3人で食べていた。


 若葉の嫉妬心には困ったものだが、気持ちは分からなくもないし、なお一層愛おしく感じるのも本音といったたころだ。


 若葉にしてやられた萌香だったが、彼女の大好物をまえにそんなことなどすっかり忘れているらしい。萌香は嬉々として、スプーンで果肉から絞った天然のシロップのかかった雪山を掬う。


「うんまー! やっぱ善行ん家のマン汁たっぷりのかき氷はサイコー!!!」


 ぶっ!?


「マン汁言うな! マンゴーシロップのかき氷って言えよ。誤解されたら、どうすんだ。まったく……もう食わせねえからな」

「ふふ、じゃあ私のマン汁飲ませてあげよっか?」

「い、要らねえよ……」


「マジもんのマンゴーが甘くて、実もゴロゴロ入ってんの、はまっちゃう。うちじゃ、高くてぜったい食べらんないからね~。いいなぁ……善行のお嫁さんになったら、毎日食べれる?」

「「なっ!?」」


 俺と若葉は萌香の突拍子もない言葉に驚いてしまう。わなわなと無言で怒りにうち震える若葉だったが、俺はすかさず萌香につっこむ。


「なに言ってんだ、マンゴーのかき氷ごときで結婚相手を簡単に決めるなよ」

「簡単になんか決めてない、真剣だよ♡」

「あのなぁ~、んん――――!」


 萌香は彼女が使ったスプーンでしゃくっと冷えたマンゴーの実を掬うとすかさず、俺の口にをつっこんでいた。


「ね、おいしいでしょ!」

「あ、うん、まあ……な」


 そのスプーンで萌香が、かき氷を掬い口に運ぼうとしたときだった。若葉ががっしり萌香の腕を掴み離さない。


「な、なによ、若葉。食べられないじゃない。離してよ」

「二人とも不潔です。兄さんのだ液を舐めてしまうから、消毒しないといけません」

「いいんだってば!」


「もう二人とも喧嘩するなって。せっかくまた三人集まったんだしさ」

「はい……」

「う、うん……」


 ていうか、これって喧嘩の原因はもろに俺……なんだよな? 俺の言ったことを二人とも素直に受け止め、一時休戦といった感じでマンゴーシロップのかき氷を完食する。



 萌香は家に来るまえまでは険のある顔つきだったのに、帰り際は昔遊んでたときと同じように屈託のない笑顔を向け、小さな子どものように腕を振って別れのあいさつをしていた。


「それじゃ、また明日ね~!」

「お~! 腹壊すなよ」

「あははは、あいつじゃないんだから大丈夫!」

「ずっともか……悪くないな、萌香となら」

「なんか言った?」


「なんも」

「変なよしゆき~。そだ、ちょっと耳貸して」

「ん?」


 俺が耳を萌香に傾けると……。


「さっきのこと、嘘じゃないからね」


 ちゅっ♡


 萌香は若葉から死角になるようにして、耳元に寄せた唇をすっと下ろしたかと思うと俺の頬に柔らかい感触がした。びっくりして萌香に顔を向けると彼女は手を後ろに組み、足で芝生を蹴って顔を赤くして照れているようだった。


「マ、マジ帰るから~!」


 ぴゅーっと俺から逃げるように送迎用のセダンに乗りこみ、運転手が閉めるまえにドアを慌てて閉めて、萌香は顔を両手で覆う。


 なんだよ、ただのかわいい幼馴染かよ……。



――――早朝。


 幼馴染との再会はすれ違いを解消させてくれたわけだが、そうなると当然、若葉が黙っているわけがなく早朝にまた俺の部屋のドアが開いしまう。


 いまではすっかり若葉の部屋着と化したメイド服を脱ぎ、サイドテーブルに畳んで置いていたのだが……。


 なっ!?


 薄目で若葉の様子を探っていると、メイド服を脱いだ彼女がなぜかなかに水着を着込んでいたことに驚いた。


 しかも普段清楚な若葉が面積の少ないビキニを着るなんて……。


「兄さん、私のシロップの味……ちゃんと覚えてくださいね。他の女の子のものは二度と飲めないように……ふふふ」


 若葉は俺の枕元に立つとビキニのウエストに指をかけながら、微笑んでいた。


―――――――――――――――――――――――

マンゴー汁……略してマン汁! うん、健全w

雅人から守ったヒロインたちがぐいぐい来ちゃうw

もちろん、独占欲の強い若葉たんが黙ってませんよね~! 腹筋鍛えて、善行から搾乳する気まんまんの若葉ちゅわんwww 若葉たんの逆夜這いにご期待の読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。

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