第7話 金色のポーション
……ん、学園の女子学生が三人ほど集まっているな。何かあったのか?
保管庫を出た俺が廊下を浮かびながら進んでいると、人影に気づく。
速効で『飛行』を解除して下りる、うん揺れは大分治まったな。
見ると一人が横になっていた、流石に見捨てるような真似はしたくないので話し掛ける。
「どうかしましたか?」
「!? あっ貴方は……」
「ただの用務員ですよ、そちらの方は…」
見ると長い銀髪をポニーテールにしてる女子学生が頭から少し血を流していた。
その子に膝枕をしているのがお尻の辺りまで伸ばした明るいブラウンヘアーと紫色の瞳が特徴的な女子学生で明らかにあたふたしてるのが小柄で赤みがかった茶髪をツインテールにしてる青い瞳の女子学生だ。
ツインテールがかなり焦りながら話す。
「ラビスちゃんが、ラビスちゃんが船が揺れた時に頭を打って……!」
「そうですか」
見たところそこまで大した怪我には見えない、しかし頭の怪我は甘く見ない方が良いのは常識だ。
俺は銀髪を避けて傷口を見る、その時に魔力をソナーのように発して頭の内部の方の傷を見た。
うん、そこまで深くはないが少し中にもダメージを受けてるっぽいな。何分医者でも何でもない俺にはぼんやりとした分からない。
しかし念を入れるなら確実に完治出来る方法を使うか。
俺は作業着の懐に手を入れてゴソゴソとした演技をする。ブラウンヘアーの子が何をしてるのか聞いてきた。
「あの、何をするつもりなんですか?」
「少し待って下さい。確か知人から貰った回復ポーションが…」
俺は『異次元空間』の魔法を発動した。
『異次元空間』は魔法で異空間を創り出してその中に四次元なポケットよろしく色々な物を保存出来る魔法だ。
但しこちらは欲しい物を頭に浮かべるだけでそれを手にする事が出来る親切設計である。
掴んだ物を取り出した、小瓶に金色の液体が入っている。昔師匠から貰ったポーションである。
使った事はないが師匠曰く『身体が消し飛んでもなければ大抵助かる』ポーションらしい。その効果が本当ならチートアイテムじゃない? って思うよ流石は異世界だ、そんなアイテムが沢山あるのかと驚いた過去を思い出した。
「かっ回復ポーションですか? 何でそんなものを用務員の貴方が…」
「安物のポーションですよ、これを使うと筋肉痛が和らぐんですよね」
俺はテキトーな話をした、出来るだけ速くこの銀髪ポニーにポーションを使いたいので話は後回しだ。
本当は回復魔法でも使って治してあげたいが、用務員が魔法を使える事がバレるのでコイツにかける。多分この二人も回復魔法は使えないんだろう、使えたらとっくに使ってるだろうし。
二人の女子学生はかなり怪しんだし悩んだが他に手がある訳もなく、渋々ながら用務員のポーションを使う事を了承してくれた。
金色のポーションを一滴だけ傷口に垂らす。
傷口にポーションが触れた瞬間傷が消えて血の跡も消えた、スゲ~これが回復ポーションの力か。
始めて使ったけどこんなのあったらこの世界に医者とか要らないんじゃない?
俺がこの世界で生まれた故郷の田舎では病院なんてなかった理由が分かった気がする。
………いや回復ポーションなんてのも俺の故郷になかったけどね。田舎はボンビーなのさ!
一応魔法でも確認したが頭部内部のダメージもすっかり良くなってるみたいだな。
「すっすごい! こんな一瞬で傷が治るポーションなんて見たことないんだけど!?」
「ええっそのポーションはかなり高級な代物ではないんですか?」
「いえっ貰い物なので値段は分かりませんね…」
ちょっと効果が目立ち過ぎてしまったか?
ここはくれた師匠に全部の責任を丸投げしとこ。
しかし安心したのも束の間、飛行艇が大きく揺れた。気絶してる子は無言だが残り二人の女子学生は悲鳴を上げる。
『天眼』の魔法で外の状況を確認すると、どうやら完全に次元の裂け目の中に飛行艇が入ってしまったようだ。裂け目の内部は完全な闇、そこを光源もないのにハッキリその姿浮かぶ飛行艇を確認出来た。
その時、同時に闇の向こうにかなり大きな浮遊する物を発見する。
それは島だった、闇の中をかなり大きな島が浮かんでいた。
恐らくアレが、ダンジョンだな。
島の大半はかなり大型の樹木が形成する樹海に覆われている、しかし島の中心部にはここからでも確認出来る程に大きな建造物群が見えた。
そして『天眼』の魔法で気づいた事がもう一つ。
この飛行艇……故障してる、恐らく次元の裂け目の魔力の磁場にやられたな。煙が所々からモクモクしてる。
恐らく飛行艇の船員は気づいているだろう、飛行艇の異常は船員室の計器とかで知れる筈だからだ。
問題は素人目から見てもこのままだと墜落する事が分かる事だ。
無事に不時着する事にかけるか?
それとも……。
「ううっさっきの揺れはなんでしょうか」
「怖いよね、おじさんもどうかしたの?」
どうやら少し考え込んでるのが顔に出ていたようだ。悩んでる時間はないか…。
「すみません、二人に少し話しがあります。良いですか?」
俺は二人の女子学生にこの飛行艇から脱出するかを聞こうと思う、本当は魔法を使える事を黙っておきたいが、流石に助けられる人間を見捨てて自分だけ転移するとか有り得ないしね。
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