第65話 ダンジョン攻略、始動
さてっディアナが意外と悪女である事が判明したが、既にバラしてしまった過去についてはどうしょうもないのでこの際後回しだ。
流石に女子トークよろしくでベルフォード学園の他の人々に話しまくるとかはしないと信じたい、取り敢えずこの異次元ダンジョンの樹海に来たので明日やる予定だった事を済ませようかと思う。
……別に向こうでディアナと会うのが恥ずかしいとかではない。
用務員おじさんは右手の平を上に向ける。
意識を集中して、魔法を発動した。
俺の手の平の上に白く光る野球ボール程の大きさの四角いキューブ状の物体が出現する。
これは『無限域の箱』と言う魔法である、空間魔法の一種で、少し前までは用務員おじさんでも使うことが出来なかった魔法だ。
それが使える様になったのである。
この際なので自身のステータスを確認する。
【名前:ラベル=エリアドール】
【種族:異世界人】
【HP:26922/26922】
【ATK:???????】
【DEF:???????】
【異世界からこれといって何かしらの使命とかもなく転生してきた一般人。魔法は得意だが才覚の類はあるわけでもない普通の器用貧乏(?)、戦力はその場の空気やテンションで乱高下するタイプの人間なので不明、本当に謎。年齢イコール彼女いないタイプのおじさん】
テキストが本当に僅かに変化してる前は(?)とかなかった。
見てのとおり大半のステータスは謎だがHPが以前見たときよりも倍以上になっている、つまりは用務員おじさんはかなりのレベルアップをしたのだ。
理由は間違いなくあの腐ダマとの大決戦であろう、何より用務員おじさんが転生した先の世界はレベルアップシステムがある世界だったのである。
魔物とかモンスターとかと戦うと、経験値とか魔力とかをゲットする事で別に筋骨隆々な訳でもない用務員おじさんでもそこら辺のチンピラをデコピンで十数メートル先の壁にめり込ませる事が出来る優しい世界なのだ。
しかも、この世界は戦って相手を倒せなくてもその戦闘中に随時経験値が加算されていく感じのシステムとなっているらしい。
……何故なら師匠に言われたのだ。
─魔法の修行は魔力の強化から始まる、だから魔物と戦いまくって魔力を強化する所から魔法使いの修行は始まるんだ。ホレホレ! さっさと魔物に喧嘩を売ってこんかい!─
「ふっざけんなよ師匠! あんなのに勝てる訳ないじゃん、ドラゴンじゃんドラゴン!」
─安心しろ、勝てなくてもいい。適当に格上に攻撃してれば勝手に強くなれる、世界はそんな風に出来ているのさ、フッ……─
当時はこのコスプレ女、頭にウジ虫でも湧いてんじゃないのかと思ったもんである。今でも思っているけどな。
しかし実際にそれをやるとそれまで全く使えなかった魔法が速攻で使える様になったのだ。
ファンタジーな世界はファンタジーな世界でこれまた違う意味での理不尽が横行している。世界とはやはりどこか頭がおかしいと思うんだ。
まっ世界へのケチはここまでにして、問題はこの『無限域の箱』について説明する。
この箱の中は正に無限に広がる異空間が広がっていて、そして敵となる相手をこの箱の中に閉じ込める事が出来る魔法なのである。
決まればまず勝ち確の魔法の一つだ。しかしこの箱の中に相手を閉じ込めるにはこの箱に相手を触れさせなければならないと言うこれまた面倒くさい条件がある。
そこで用務員おじさんはこの『無限域の箱』にあるアレンジをした。
「…………ハッ!」
光る箱から細かい粒子が出てく来て光る箱が徐々に消えていく、本当に消えてる訳ではない。
つまりは箱に触れさせれば良いのなら、その箱をゴマ粒よりも小っさくして数を増やしまくれば躱せまいって話である。
無数の光の粒となった『無限域の箱』は少し操作してみて確信した、これは完全に用務員おじさんの支配下にあると。
試しにその光の一粒を樹海の巨大な大樹にヒットさせた。
そして『無限域の箱』の中の空間に入れと念じる、その瞬間その大樹は消えた。
そして大樹は『無限域の箱』の中に転移した事を理解する。
よしっ最高の結果だ。
これでダンジョン攻略の第一段階の目処が立ったぞ。
ダンジョン攻略の第一段階、つまりは…。
この異次元ダンジョンの樹海と魔物を、全て取り除く!
異次元ダンジョンを戦闘力ゼロの一般人でもお散歩出来る仕様にリノベーションしてやるのだ。
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