第64話 胸デカイからってさ…
「はいっと言う感じの事があったわけなんでよねぇ~~」
ディアナの額から人差し指を離す。
これ以上は流石の用務員おじさんでもプライバシーが恥ずいのでオフレコである。土下座シーンまでが限界だ。
と言うか本来なら土下座シーンとか普通に何で見せたんだ自分って思う。魔法使って思い返してみると全然土下座する流れとか無かったから尚のこと恥ずかしい。
あの時は師匠もいきなりの土下座にはかなり面食らっていた、ってか引いてたな。
ある意味若気の至りである、大変恥ずかしい話だ……今からでもディアナに与えた情報を無かった事に出来ないだろうか。
一方のディアナは俺が与えた情報にあ然としていた。まあ内容が内容だけに決して面白い話ではないからね、その辺は自覚してる。
酒の肴にもなりそうにない過去なんて本来は人に語るもんじゃない、話して何になると言うんだ。
それでもこうした理由は、やはり彼女の人柄に用務員おじさんは素直に惹かれる部分があるからだろうね。真っ直ぐな人間には素直に好感が持てる。
しかし無言なのは困る、ここは年上の用務員おじさんが小粋なジョークの一つでも披露するしかないな。
「しかしあの時は全く役に立たなかった金色のポーションが、今回の騒動ではあれ程役に立つとは思いませんでしたね~ハッハッハッ」
「………………」
……小粋なジョーク、失敗。言わなきゃ良かった。
まあそういうセンスがない自覚はあったのだけどね、もう少しなんとかならんもんかね。
しばしの沈黙、そしてディアナが口を開いた。
「ラベルは……強いんだな。魔法云々ではない、それだけの経験をしてきたからこそ強い人間になれたんだ」
「私はそんな大層な人間ではないですよ、何も守れていないじゃないですか…」
「少なくともここにいる全ての人間はそうは思っていないさ、なにより…」
ディアナが俺の両手を握る。いきなりな事にいい歳して俺は顔が赤くなるのを感じた。
「私も少し、貴方を理解出来た。あの怪物を退けた貴方の強さには相応の理由があった事、そしてその事を私に打ち明けてくれた事に感謝するぞ」
こう言うシーンで絵になる美人ってやっぱり最強だと思う、浮かべた笑顔が年齢イコール彼女なしの恋愛雑魚オヤジの心にクリティカルヒットだ。
こんな冴えないおっさんにクリティカルヒットかまして何がしたいのだろうこの子は、本当に非モテに対してこう言うのはヤバいって…。
取り敢えずこの場は冷静さを装いつつ何とか用務員おじさんとして対応さなければ。
「……大袈裟ですよディアナさんは、しかし私も誠意を持って皆さんと向き合いたい。お互いに出来る事をしなければこのダンジョンから脱出は出来ませんからね」
「ああっ必ず生きて脱出しょう。ラベル」
「はい、必ず」
お互いの手を固く結ぶ、おっさんの手と違いディアナの手は柔らかく、少し体温が高めなのか熱くかんじた。
「しかし、考えてみるとこちらだけ恥ずかしい過去を披露し過ぎていませんかこれ?」
正直な話、ここまでディアナに用務員おじさんの過去を披露する必要まではなかったかも知れない思った。
「ふふっ今さらそこに気付いたのか?」
「……ディアナさん」
「あっ言っておくが、私の過去の話なんてしないぞ? 女の過去を知ろうなんて言うのは男としてナンセンスだからな」
そう言って魔法で転移してセーフティポイントへと消えるディアナ。
あっあやつ…アレだけ人の過去を覗いておいてマジっすか?
いくら金髪美人で胸がデカイからってさ…何をしても許される事なんてないとおじさんは思いまっせ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます