第63話 レドニカ=エリアドール
なんかやたらと煌びやかな、王様とかが着そうなモフモフが首あたりにあって、白に金糸の刺繍が入ったマントと豪奢な服を着ている若い女だ。
白を基調として青い線の入った衣装と銀色のヒールブーツみたいなのをはいていた。
突然現れた何たら座のスターみたいなヤツ。
冒険者ギルドの野郎達の目が釘付けになった。
長い黒髪は毛先部分は赤く、瞳は赤みがかったオレンジ色をしていた。綺麗な瞳だと思ったが…。
なにより変なコスプレ女だと思った。
「助けるって、アンタ魔法使いじゃねぇんじゃ…」
「人を見かけで判断するな、オレは魔法使いなんだよ!」
「その服装で?」
「オレは派手な方が好きなの、女の好みに口を出す男はモテないぞ」
知ってるよ俺がモテない事なんて、ってそんな事はどうでも良いんだよ。
魔法使いと言う言葉に冒険者ギルドの人間がザワつく。
「おいおいおいっまさかアンタ、その赤ん坊をどうにかする気か? そんなのほっておけよ」
「……黙れ、こんだけ大人がいて国の法律だ? こんな辺境でバカじゃねぇのか? 他人助ける能力がない人間が、言い訳で国なんて言葉を使ってんじゃねぇ!」
言い訳、女の言葉が俺の心に残る。
女は俺の手を引いて冒険者ギルドを出て行った。
そして場所を女が泊まっているという村の安宿に移す。そこには俺と妹と女だけだ。
コスプレ女は妹をそっと抱き上げる、何気に丁寧に赤ん坊を抱っこする姿が以外と様になっていて驚いた。もちろん雑に扱えば全力の体当たりをかましてやるつもりだったがな。
「よしっ先ずは妹の方だ、まだ死んでも数時間くらいか? まあこれなら……っ!?」
女が妹を見て表情を固くした。
「魂が……ない? そんなバカな事が、死んでも数日間は赤ん坊でも魂は身体に残る筈だぞ…」
女がブツブツと何かを言っているが、その内容は俺には分からなかった。
「どっどうしたんだよ……妹を、助けてくれんるんだよな?」
女は懐から金色の液体が入った小瓶を出して妹の額に垂らした、しかし何も起きなかった。
金色の雫が妹の頬を垂れていった。
女は俺を真っ直ぐ見た。
………そして頭を下げた。
「すまん、出来ると思っていたが無理だった。その子を生き返らせるにも魂がない。それならコイツでも無理だ」
「そっそんな……ふざけんなよ…アンタさっき助けるってっ!」
そこまで言って言葉を止めた。
一体何を言ってるんだ俺は、そもそも死んだ妹を生き返らせるなんて……出来る訳がないだろう。
頭の中は子供じゃないんだ、そんな当たり前の事すら俺は判断出来なくなっていたのか?
「……ごめん、そもそも俺に力があればこんな事にはならなかったんだ。全部弱い俺のせいだ」
力が欲しいと思う。
もう何も、守る物もないくせに、そう思った。
「くそっくそくそクソ! せめて火を興せる魔法でも使えれば妹を……温める事くらいは出来たかも知れないのに、俺は……何も」
無力な自分が嫌だった、あまりにも惨めで情けなくて…悔しくて……。
「……すまないな」
コスプレ女が俺の手に触れた、温かい光が俺を包み込んだ。
俺の身体の傷が全て消えていく、身体の中のボロボロの内蔵まで痛みが引いていくのを感じた。
このコスプレ女は本当に魔法使いだったのか。
情けなくて…悔しい……だから。
「………なあ、その……魔法を。俺に教えてくれないか?」
気づけばそう言っていた、見ず知らずの相手に。
「魔法を覚えたいか?」
「うん、けど……この国じゃあ無理なんだろう?」
「オレは国がどうとかはぶっちゃけどうでもいい、問題なのはお前が本気なのか、そしてお前が何で力を、魔法を求めるのか。その理由だ、言っとくがその妹を蘇生させるなんて無理なんだぞ?」
コスプレ女はまた俺を真っ直ぐ見つめてくる、嘘偽りなく事実を言っていると分かる。
コイツの目には冒険者ギルドの連中や俺の親だった二人と違って汚い物が何もない。
何処までも清んでいる、太陽の様な瞳だ。
「オレの名はレドニカ=エリアドール。名乗れ小僧」
こっ小僧……初めて言われた。
「俺はラベル、ただのラベルだ」
「そうか、ならお前に」
名前で呼ばないんかい! 何なんだこのコスプレ!
「──オレは魔法を与えられる、お前が本気ならな」
「……………っ!」
俺はその場で土下座をした、本気を見せろと言われて他に方法が思いつかなかったからだ、そして師匠に俺が何で魔法を求めるのか。その理由を話した。
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