第77話 突撃『星魔の塔』!

 我々は『星魔の塔』に突撃した、気分はダンジョン攻略……と言うより無駄に危険な場所を舞台に観光ツアーをしてる様な感じだ。


 何故かって?

「おお、こんなダンジョン見たことないぞ!」

「壁も床も白いわね、けど壁のレリーフの作りは見事だわ」

「姿こそ見えないがモンスターの気配はビンビンにする、いつ襲って来るか……」


「おっ宝おっ宝~~!」

「未発見のダンジョンなら、どれだけの財宝があるか。正直検討もつきませんな~」

「歴史的大発見……そそられる~」


「全ての魔物のサンプルを取るぞ!」

「オオーーーッ!」

「中はかなり広いね、あのまん中の更に細い塔みたいなのは何かな?」

「………知らない」


 一応説明するがさっきから好き放題会話してるのはディアナ達ではない。別の貴族学生や教師である。


 何というか、本当に我が表に出てる連中の会話だよな。普通ダンジョンに入るならもう少し緊張感を持ってるイメージがあったけど貴族様は違うらしい。


 もちろん魔法により魔物の接近については警戒してるけど、流石に自由行動まではさせてあげられないな。

 用務員おじさんは皆に声をかける。


「皆さん、常に誰かと行動を共にして決して一人での行動は避けて下さいね」

「「「「は~い」」」」


「………引率の先生?」

「せっ先生は私達なのだが? なあアルティエ先生?」

「静かに、我が師の言葉なら黙って聞くのが弟子だ」


 取り敢えず今にもバラバラに動きだしそうなのを抑える事は出来た。

 次は魔物に対する対抗策を講じる。


 用務員おじさんは『無限域の箱』を発動した。

 発動にはかなりの魔力が必要なので必然として結構派手な魔力を発するこの魔法。


 それに気づいた自称弟子達が何やら目の色を変えた。ディアナ達もこちらをガン見してきて少し落ち着かない気分の用務員おじさんですな。


 手元に白く光るキューブ状の物体が現れる。

 ただならぬ魔法だとこの場も面々も理解したのだろう、俺がこれから何をするのかを見ていた。


「ラベル、まさかその魔法は…」

「『無限域の箱』と言う魔法ですよ」

「バカな…あの伝説上の魔法を使えるのか?」


 伝説? 師匠曰く『異次元空間』を魔物相手にも使える様に改良された空間魔法ってだけらしいけど?

 曰く『あると便利な魔法の一つだ、まあ便利なだけの魔法なんてのは結局は無くても困らないタイプの魔法だけどな~』とのこと。


「この魔法はそれなりの強さの魔物までなら異空間に幾らでも閉じ込める事が出来ますからね、コレを使ってダンジョンの魔物の数を減らすとしましょう」


「………まさか、あの樹海を消した魔法とは」

「さっ流石は………我が師ですね…」


 他の学生も驚きとか凄い的な声をあげる、褒めても何も出ないよ?

 しかし用務員おじさんの気分は良くなるのでどんどん褒めて欲しいです。


 樹海の時と同様にキューブを細かくして空中にばら撒く、すると程なくしてシフォンから警戒の声が上がった。


「ラッラベルさん! 敵襲です、無数の生物がこちらに近づいている音がします!」

 もちろん既に魔法で魔物の接近は分かっていた。


 コレだけ騒げばどんなダンジョンでも魔物が来るのは当たり前だよ。

 魔物が現れる、さっきまで喋っていた貴族様達も油断なく身構える。


 『星魔の塔』の内部に現れた魔物は白い身体を持つガーゴイルや黒いゴーレム、他にも宙に浮きながら移動してくる大きな仮面とかおデブな巨人とかだ、ソイツらが奥からゾロゾロと現れた。


「アルティエ先生! 出るぞ!」

「無論です、生徒には近付けさせない」


「シフォン、デュミナ。二人は私の後ろに」

「ラビス、私達も戦いますよ」

「これでも強くなったんだからね!」


 他の学生や教師もやる気満々、そのモチベーションの高さには素直に凄いと思う。


 そして新たな敵だ、そのビジュアルから推察するとやはりゲームで見た敵キャラだな。

 無論敵キャラの裏を取る為に『解析』の魔法でその正体について調べさせていただくよ。


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