第76話 ■十年前(2)
「よっしゃあ勝ったぁああーーーーっ!」
自分は勝利した、木の棒で巨大な緑のキモムカデ達を打ち倒したのだ。
木の棒や服に体液がかかっているのは不愉快極まりないが、今は生きている事に感謝である。
しかし、何というか自分は理解した。
どうやら自分の身体はチート仕様らしいと。
断片的な記憶しかない自分だがこんな細い腕で振るわれた木の棒で、普通はこんな化け物は倒せない事は何となく分かる。
ならば何故倒せるのか、そう思った時に頭に浮かんだ言葉。それがチートだった。
良く覚えていないがチートさえあれば、この世の不条理は大体何とかなる代物らしい。
キモイ上に異臭すらするムカデ達の死骸の山を見ていると、これを自分がやったとは思えない気分だった。
何故なら自分は小さな女の子だからだ。
そして恐らくだが美少女に違いない、何故かそうだと確信が持てた。声の感じからしてそうであろうとね。
むしろ違ったら神様的な存在に文句を言いたい気分にかられるのは何故だろうか。
いやっ今はそんな事はどうでもいいのだ、ともかくまたこんな気持ちの悪い化け物に襲われない様にさっさと逃げねば。
謎の樹海へとまた歩き出そうとしたその時。
「!?」
突然、地面から黒く滲む闇が現れた。
その闇は形を成して丸くて艶のある球体へと姿を変える。
何だこれは、爆弾?
知的好奇心から木の棒でツンツンする。
ツンツンツン、ツンツンツンツンツンツン。
すると黒く球体から目玉が現れる、確かモノアイってヤツだ。
「………キんモ…」
「────」
何故だろう、モノアイを見ていると少し傷付いたぞ的な感情が伝わって来た。
もしかしてテレパシー的なヤツを発しているのだろうか?
「お前………敵意はないのか?」
「────」
肯定する意思をテレパシーされた、どうやら戦うつもりはないらしい。
しかしこの見た目、あんまり見掛けで判断してはいけないと思いつつも思う。
お前絶対に闇属性だよねと、そして闇属性って基本的に悪いモブではないのかと。
詳細は分からない、しかしこの危険極まる場所にて敵対しない存在は有り難いと感じるのも事実だった。
「…………ん?」
するとモノアイが黒く滲む闇をムカデの死骸に放つ、数秒程で死骸の山を闇が呑み込み、そして消えた。死骸の山も消えた。
「お掃除したの?」
「────」
違うと言う意思をテレパシーされた。
更にテレパシー……ふむふむ、どうやら倒した化け物を吸収したらしい。
このモノアイは倒された化け物を吸収して強くなりたいようだ。
しかし自分は別にそんな事に付き合う理由はない、何とかここを脱出したい。
「─────」
更にテレパシー………。
「……このダンジョンを脱出する方法を知っている?」
肯定する意思をテレパシーされた。
「─────」
「は? 何故自分の事を?」
更にテレパシーで自分をこのダンジョンで待っていたと伝えられた。そんな事言われてもな~。
「─────」
「………は? 自分が……一度死んでる?」
そしてモノアイのテレパシーは伝える。
どうして自分はここに来たのか、そしてどうして自分は死んだのか。その理由すら知っていると。
無論ツッコミたい所は幾つもある、と言うか死ぬのを待っていたとコイツは死んだという自分に向かってぬかしている事に気づいているのか?
気づいていないなら、コイツはおバカさんの可能性が高い。そしておバカさんとは総じて記憶力が……そんなヤツの口車に乗るのは気が引ける、気が引けるがここに他に手を借りれる存在がはたしているかどうか……。
「……仕方ないな~~」
このモノアイはどうやら色々と知っているらしいし先ずは対話してみますか。自分は疑りながらもテレパシーの内容を聞いた。
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