第14話 またアイツか…
現場はやはり騒然としていた。
飛行艇は不時着には成功してるっぽいが端から見れば墜落してるのと大差ないなあれは。
飛行艇から距離を取ってはいるが、流石に樹海に行くわけにもいかないベルフォード学園の人々はどうすれば良いのかと不安を募らせているのが見て取れた。
そしてやはり船員は全く居ない、無論あの状況だ、そして教師達には生徒を助ける義務はあっても船員達を守る義務はない。
…しかし悲しいものは悲しい。
飛行艇でたまたま知り合っただけの関係だがそれなりに話をして親しくなった船員も数名はいたからさ。
まあ下っ端同士で話が合ったのだ、それにあんな大きな飛行艇をどうやって飛ばしてるのか話を聞いてみたかったしね。
「………………」
「それではラビス達は他の生徒達と合流してくるといい、他の先生は一度集まってほしいと言う事です」
「分かりました、デュミナ、シフォン。行きましょう」
「分かったわラビスちゃん!」
「はい、ラビスさん」
何とか安全な場所に到着した事もあり、生徒さんであるラビス達との臨時パーティは解散の流れとなった。
俺としてもここからは普通の用務員としてせいぜい雑用でもしてれば後はベルフォード学園の教師陣がダンジョンからの脱出は何とかしてくれると期待したい所だ。
するとラビス達三人がそれとなくこちらに来た。
「ラベルさん、ここで詳しい話を聞けないのは残念だが本当に色々と助かった。ありがとう」
「おじさんのお陰で何とかなったね、サンキュー」
「ありがとうございました。まだまだダンジョンの中なので油断は出来ませんが、お互い生きてベルフォード学園に帰りましょう」
なんかこう言う風にお礼を言われるのって随分と久し振りな経験な気がする。少し気恥ずかしい気分になりながらも悪くないなと考える。
ラビス、デュミナ、シフォンにそれぞれ返事をする。こちらも助かりましたとか生きて帰りましょうとかね、おじさんなのはその通りだけど辞めて欲しいな。自分で言うのはいいけど人に面と向かって言われると、心にさざ波みたいな何かが立つお年頃なのだ。
学生も貴族、故に関わると碌な事がないとあのバリーとの一件で俺は決め付けていたのかも知れないな。話してみると案外いい子達じゃないか。
そして一人になった用務員おじさんはその辺りに腰を下ろして少し休憩である。
まあ色々と大変なのはここからだが、何とかなりそうかも知れないな。根拠とかゼロだけど。
おっと、感傷に浸っている場合じゃない。早速ここを指揮する人々が何やら行動をしだした。
「生徒諸君聞いてほしい! どうやら飛行艇の中の食料などは事前に魔法で保護されているらしい、我々教師達の半分は飛行艇炎が消えたらその食料などを取りに中に入る、生徒諸君は…」
どうやらラビス達が俺の話を教師陣に話をしたみたいだ。恐らく用務員おじさんの活躍は適当に誤魔化して話してくれたのだろう。これで直ぐに食料やら飲み水やらで問題が起こるという事はなさそうである。
その後、学園の皆は食料やらを手に入れて、後はどこかに移動する事になった。
その飛行艇に向かう教師達の中にはディアナの姿もあった、まあ魔法で飛行艇内に魔物類はいないので大丈夫だろう。
本来なら用務員おじさんとして雑用の一つも買って出るタイミング、しかし中に魔物なんていませんから荷物持ちでもしましょうか? とか言い出すとこれまた変な目では見られるので判断がムズい。
仕方なく今回はディアナ達教師陣を見送る事にした、代わりに他の生徒達や残った教師達の話に聞き耳をたてて飛行艇がここに墜落した時の状況を確認する。
なんでも飛行艇が墜落した時の轟音はダンジョンの魔物を結構呼び寄せたらしく、最初は教師だけでなく戦える生徒まで派手にドンパチしたらしい。
しかしあのカマキリみたいな魔法に耐性のあるタイプの魔物は殆ど居なかったらしい。
落ちた場所がたまたま普通の攻撃魔法で倒しやすい魔物ばかりがいる場所だったのか?
「或いは……そう言う魔物だけをけしかけた?」
いやっまさかな。ゲームとかならダンジョンマスターとかいてソイツがダンジョンの魔物を操っているとかテンプレだけど、そう言うのはこちらのファンタジー世界では全く聞いた事がない。
ダンジョンもダンジョンボスもいるが、そのダンジョンボスがダンジョン全体の動きをコントロールとかしてる訳ではないのだ。
と言うのがこの世界に生きる人類の常識である、ただ一つ不安なのは、ここは異次元ダンジョンである。はたして俺達の世界の常識が通用するのか、それすら不明な場所なのだ。
そんな事を考えながら飛行艇に向かったディアナ達を待っていると…。
「ほうっまさかまだ生きていたのか? この下民が!」
まさかのあの人を足蹴にしたクソ生徒の登場だ、確か名前はバリーだったっけ、腰巾着の二人も一緒である。
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