【第二章開始!】異世界の魔法学園で用務員をしてる産廃キャラおじさんは異次元ダンジョンで人権キャラに成り上がる(元から最強クラスの魔法使いだっただけです)

どらいあい

第一章

第1話 用務員おじさん

 ベルフォード学園、そこは世界最高峰の魔法学校である。通う生徒は世界各国の有名貴族、教師もまた然りでその教育も最高水準の物だ。


 学園の敷地も広大で様々な施設やら森や山や湖などもあり、日夜様々な魔法の研究をしている。

 しかしそんなファンタジーな学園にもあるのだ。


 イジメと言うのは。

 どうやら教育が最高水準でも何も学ぶ気がない者には無意味らしい。


「オイッ! 薄汚い平民の清掃員が図に乗るなよ!」


 短い金髪の少年をリーダーにした三人の生徒が倒れてる中年の男を足蹴にしていた。

 少年は学園の生徒で貴族、中年は平民だ。

 こうなった経緯は少年曰く自身が通りかかった時に中年がホウキで飛ばしたホコリが靴に付いたとかなんとか。


 ちなみに中年のホウキは少年を避けるように動いていた。

 単純に少年は少し前の授業で教師に怒られて、それの鬱憤を中年にぶつけているだけだ。


 完全に言い掛かりだった、しかし貴族と平民の関係とはファンタジーな世界でよくイメージするとおりで基本的にこんな感じなのだ。


 文句を言われても、暴力を振るわれても下の方の人間が泣き寝入りするしかない。

 剣と魔法の世界にも理不尽な現実は普通にあった。


「すみません……すみません……すみません」


 中年はただ頭を守りながら謝るのみ。

 やがて少年貴族もスッキリしたのか『今後二度と僕の前に姿を見せるなよ!』と言って何処かに行った。


 ちなみに中年に狙いを絞って散々言い掛かりと暴力を振るっているのは当の少年貴族の方である。

 それが変に有名になったのか、他の学園の生徒も清掃員の中年から距離を取っていた。


 清掃員とはいわゆる学校にいる用務員のおじさんだ、基本的するのが掃除だけなので用務員と言うよりは清掃員と呼ばれている。


 中年の名前はラベル=エリアドール、青い天パー頭と黒い瞳のいまいち冴えない顔をしたアラサー中年である。

 用務員の服についたゴミを落としながら中年は呟いた。


「ふうっもう少しお金を貯めてから辞めるつもりだったけど、そろそろ潮時かもな…」



 ◇◇◇◇◇◇



 俺はこの広大過ぎるくらい広大な土地を持つベルフォード学園で用務員をしている、まあ基本的に仕事は馬鹿広い学園の掃除や土地の中にある森の木々の剪定とゴミの処理だから清掃員呼ばわりされるのが常だ。


 仕事内容は別に良い、日本の用務員よりも多分だが給料も多く貰っているからな。

 ちなみに俺、前世日本人ですハイ。


 まあ異世界に転生しても神様に出会ってチート持って転生! とはならなかった。

 前世のゲームばっかしてた引きニートの記憶だけがあるアラサーだ。


 まさか前世で死んだ年齢とそう変わらん年齢まで人にこき使われる人生を剣と魔法の世界で生きるとは思わんかったわ。


「本当、前世も産廃キャラなら転生しても産廃キャラとは……」


 ホウキで廊下を掃除しながらしみじみ思う。

 産廃キャラとはスマホゲーで実装されたものの、これっ何の役に立つの? 使えないじゃんってプレイヤーに烙印を押されたキャラの事だ。


 まっ大抵本当に使い道がないキャラなので仕方ない。産廃キャラとはそんなもんである。

 まさに今の俺を言い表すのに相応しい言葉ですな………泣けてくる。


 最初はこんな卑屈じゃなかった。

 異世界に転生したならチートとかあるかもと十代中頃で冒険者ギルドに登録して冒険者になったりもした。


 そして最初の依頼で異世界産の野生動物にコテンパンにされて以降は二度とギルドに顔を出さなくなったのだ。


 その後はこの世界で親となった農民な普通の両親のもとで農民と過ごしていたら変な魔導師と出会った、そしてその人の元で俺は魔法の修行をする事になる。


 そりゃ異世界に来て魔法を覚えたいかと聞かれたらイエスと答えるだろう? しかしその結果、このベルフォード学園に連れて来られ、しかし別に学園の生徒になるなんてテンプレイベントはなく用務員として働く事になってしまった。


 それから十数年、あの変人魔導師の師匠とはもう十年以上音信不通で俺は惰性で学園の用務員おじさんを続けてきた。


 振り返ってみると我が事ながら本当につまらん人生を送ってきたもんである。

 しかしプラスもあった、娯楽の少ない異世界は少し我慢すればお金が貯まった事だ。


 そして結構貯まった、金貨にして三十枚程だ。

 この世界なら贅沢しなければ残りの人生それなりに楽しんで生きていける金額となる。


 ここの用務員って給料だけはそこそこいいのである。日本だと給与は安めなんだけどな用務員って。


 俺はお金を貯めて夢のセカンドライフを夢見ている、故にこんなクソガキ共に馬鹿にされまくる仕事でもずっと続けてきたのだ。


 この学園の人間って基本的に用務員なんて見下すか空気さん扱いしてその存在を認識すらしないかの二択なんだよ、どっちも辛いのだ。


 本当に……しんどかった。

 今度給料を貰ったら一身上の都合で辞めますって言おう。


 俺が内心そんな決意をしていると、横か何か言ってくる声がした。

「そこはもう十分に掃除したんじゃないのか?」


 視線を向けるとそこにはとんでもない美女が立っていた。

 ウェーブのかかった腰まである金髪と青い瞳を持つ美女だ。


 学園指定のカッチリした青い教師服と紺色のタイトスカートは膝に少し届かない長さだ。

 スラッとした長い足にはストッキングと青いヒールをはいている。


 ヒールは関係なく元から身長も高い、切れ長の目と凛々しい雰囲気はまるで女騎士みたいな美女である、スタイルも抜群で出るところは出てもお腹回りはキュッとしていた。


 彼女の名はディアナ、このベルフォード学園の教師である。ここは教師も貴族しかなれないので俺をさっきまで蹴りまくっていたクソガキ同様に貴族様なのだろう。


 確か騎士として数多の武功を挙げて貴族になった家のご令嬢だったと聞いた憶えがある、このベルフォード学園でも有名人な女性だ、ここに長くいる俺の耳にもその優秀さは届いている。


 曰く、魔法一つで大型の魔獣や魔物を何十体も瞬殺するとかスケベな視線を向けてきた同僚を粛正したとか。怖いね~。


 しかし見た目だけは男の理想、その一つを形にしたようなブロンド美女が目の前にいる。

 しかしその理想のブロンド美女は俺を厳しい目つきでにらみつけるように見ている。


「……すみません、失礼します」

「学園を清潔に保つのが用務員である貴方の仕事のはず、貰う物を貰っている以上仕事は誠実にお願いする」


 正論だね、ただこちとらさっきまでこの学園の生徒に足蹴にされていたから少し休憩が欲しい。

 ってかこのブロンド美女、俺が蹴られてるのを見てなかったのか? 見てるわけないか。


 このベルフォード学園で用務員おじさんはまさに空気さんだ、視界入っても道端の石ころ同様に気にもされないのである。


 俺はブロンド美女に頭を下げて逃げるように移動した。

 そして一人になったタイミングにて。


「………ん? この反応は、魔物か?」

 俺がこのベルフォード学園全体に張っている魔法の結界に魔物の反応があった。


 魔法って本当にファンタジーで大抵の事は何でもありなのだ、だからか教師か生徒か知らんけどたまに魔法の実験で生み出した魔物を広い学園の敷地に放逐する阿呆がいる。


 そんな魔物の掃除も用務員おじさんの仕事なのである、まあ俺以外これを掃除してるヤツを俺は知らないけどな。そもそも騒ぎになる前に処理するし。


 何故なら騒ぎになるとうるさいんだよ貴族って学園の中だけでも面倒くさいのに外のモンスターペアレント共もうるさい。


「…………行くか」


 俺も魔法使いの師匠と修行したので魔法が使える、種類は色々だ、器用貧乏な魔法使いの魔法なのでそこそこレベルでしかない。

 俺は『転移』の魔法を発動して魔物の掃除に向かった。


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