第32話 英雄の夢(3)
「は? 何故この僕が今以上の力を得る必要があるんだ」
向上心ゼロのバリーに謎の声は答える。
『そんなの今のままの君じゃああの中年には勝てないからだよ』
「なっなんだとぉおっ!?」
謎の声の言葉にバリーは怒りを覚える、未だに用務員おじさんの実力云々には欠片も気付いていない彼は、多くの魔物を粉砕した実積も相まってラベルなどいつでも始末出来ると考えていた。
『いいかい? あの男はボクすら知らないこのダンジョンの隠されたエリアを見つけた。つまりはヤツはこのダンジョンの構造を知っているって事だ』
そもそもお前は何なんだと言う質問が普通は真っ先に浮かぶだろう、しかしバリーはそんな事には興味がないのか何もツッコまない。
「ダンジョンの……構造だと? 馬鹿な、そんなもの知っている訳がないだろう。それを知っている存在なんて精々ダンジョンマスターくらいの筈…まさか」
『そうっあのラベルってヤツは裏でダンジョンと繋がっているんだよ、そして間違いなく君や他の貴族達の命を狙っている。良い思いをさせて土壇場で裏切ってベルフォード学園の貴族達を全て亡き者にする、そして全員をダンジョンのエサとする事で自分だけは助けてもらおうってしてるのさ!』
「………あの用務員風情が、そんな身の程を弁えない事を?」
ラベルが聞けば暴論じゃんと口にしそうな話である、しかし前世で遊んだ事のあるゲームでこことクリソツなダンジョンがありましてと言う話も中々にぶっ飛んだ話なのでどちらが信憑性があるかは微妙な所だ。
ただバリーにとっては謎の声の説明は、自身を正当化し、何より自らが絶対的に正しいと考えるには都合が良かった。
『身の程を弁えなていないのはあの態度を見れば分かるだろう? 最早、君達貴族相手にも対等以上で接してきだしてないかい?』
「くっ……薄汚い下民風情が!」
謎の声は言葉巧みにバリーの猜疑心とプライドを刺激する、元からバリーが分かりやすい性格なのもあるが驚く程に簡単にラベルに対するヘイトがモリモリと上がっていった。
『恐らくあの中年はダンジョンマスターと繋がっている。真正面から戦えば間違いなくダンジョンマスターが力をヤツに貸してくるだろう、そうなれば幾ら真の力を解放した君でも勝てない』
「ふっふざけるな! こ、この僕が……このバリー=ザイゴンが下民に負けるなど有り得ない!」
『そうだね、君は貴族として生まれた時から選ばれた才能の持ち主で、特別な人間だ。だからこそ多くの貴族であり仲間を救う事は君にしか出来ない…』
「……ッ!」
『より、大きな力を得る必要がある。その方法を君に教えてあげようか………?』
謎の声には抑えきれない喜色の気配があった、しかしプライドを散々刺激されたバリーはその事に気付かない。
謎の声が語った内容に一瞬戸惑いを見せるバリー、しかし謎の声が更に語り掛けるとその表情から迷いが消える。
『君には大義がある、その為には……多少の犠牲は仕方がないんだ。英雄となる君には分かるよね?』
「とっ……当然だ」
バリーは謎の声の言葉に従い行動を開始した。
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