第33話 サバイバル三日目

 異次元ダンジョンでサバイバルを開始して三日が経過した。当初は色々と問題が山積みだったダンジョンサバイバルも用務員おじさんの前世の微妙なゲーム知識的なヤツでなんとか乗り切った予感。


 やはり食事や身体を清潔に保てる環境がサバイバル中に発見できた事はかなり大きい、セーフティポイントへとベルフォード学園のお貴族様な学生や教師陣を招いた当初は飛行艇の船員と揉める事を危惧していたのだがそれも杞憂に終わった。


 貴族様達がお風呂に入り、食事をして余裕が出て来たタイミングにて。リエールが動いてくれたのが大きい、船員や用務員おじさんに対してこれまで通りに上からの立場で物を言い始めた貴族様がチラホラと出て来たタイミングにて笑顔でその後ろに立って……。


「保護されてる立場でどの面下げてラベル様やその他の方々にその様な舐めた口をきいているのですか?」


 そう言ってリエールはその貴族の男性教師を黙らせた。リエールの放つ殺気はえげつなく男性教師は何も言えなくなってしまった。


 まあ元から自分達の立場がないことは理解してたであろう貴族様だ、しかしプライド的なヤツがサバイバル中でも働いてしまったんだろうな。

 ………ちなみにリエールの強さもちょろっと見てみた。


 【名前:イーリエール】

 【種族:不明】

 【HP:7777777/7777777】

 【ATK:96666】

 【DEF:96666】

 【ラベルの僕、特にこれといった過去は不明。閲覧不可能。水色の髪をツーサイドアップにしていて、水色の瞳を持つ着物メイド】


 凄いね、なんかの裏ボスキャラにしか見えないよ。こんなのに殺気ぶつけられたらそりゃあ黙るしかなくなるよねって話である。何なんだろうこのふざけた強さは、普通にリエールに頼んでこのダンジョンを破壊して貰えば俺達は脱出出来てしまうのではないんだろうか。


 …いや、ダメだな。やはり隠しダンジョンのストーリーに可能な限り沿ってこのダンジョンはクリアしたい。何故ならそれが一番多くの人間が脱出出来る可能性が高いから。


 ここって力だけで無双出来るタイプのダンジョンじゃないからね。出て来る魔物も悪意増し増しな鬼畜ダンジョンだ、気を引き締めて事に当たって行こう。


 まあ何はともあれリエールがにらみをきかせる事で貴族様が余計な圧力を用務員おじさんや船員さん達にかける事はなくなった。

 意外な話としてディアナはリエールと意気投合していて貴族様達の抑えに一役買っているらしい。


 あの二人がぶつかると面倒だなと考えていた用務員おじさんからすれば大変助かる話である。


 そんな感じで平穏化したセーフティポイント、余裕が生まれればそれなりに人のために動くのは貴族様でも変わらないのか教師陣も学生もセーフティポイントに行かない事を選んだ面々の元にチラホラと顔を出している様である。


 日毎にこちらに合流するベルフォード学園の貴族様が増えてきた。合流しないまでも身体を洗うくらいはしている様だ、食料は向こうも確保しているが流石にずっとサバイバル飯は貴族様には堪えるらしい。


 基本的に人より良い暮らしをして、それが当たり前ですと生きてきた連中である。むしろいきなり始まったダンジョンサバイバルでよくここまで無事な人間が多いもんだと感心した用務員おじさんである。


 取り敢えず、多少の問題を抱えながらも我々はダンジョンを生き抜いていた。しかしその三日目にして事態は動く事になる。


「………バリーさん達がダンジョンを攻略しようとしている?」

「はいっマスタールームにて樹海にいる貴族達を監視していましたが、そのように話をしていました」


 場所はセーフティポイントの俺の個室にて、リエールと二人きりで話をしていた。

 リエールの貴族様監視体制については色々と思う所はあるが、現在は彼等に魔物からの襲撃があった時の事を考えて好きにやらせている。


 それよりも問題は先程リエールが持ってきた情報である。

 どうやら痺れを切らしたバリーは本格的にこのダンジョンを攻略しようとしているらしい。


 現状我々はダンジョンの中心部から離れた樹海に潜伏しており出て来る魔物もこの異次元ダンジョンでは恐らく弱い部類の魔物だけを相手になんとか生き残っている状況だ。


 正直この状況でダンジョンを攻略するとか辞めて欲しい、こっちにもプランってのがあるんですから。しかしバリーは既に動いているらしい。


「貴族達の中でも腕の立つ者に話をして、少数精鋭でダンジョンの中心部にある『星魔の塔』に向かおうとしています」


「……………」

 流石にそれは危険過ぎるな、ここはなんとか思い留まってもらうしかない。


「ディアナさんに話を持っていきましょう、彼女ならバリーさんはともかく、他の教師達を止める事が出来るかも知れません」


 

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