第34話 説得をしてみる
マスタールームからディアナの居場所を探す、彼女は個室にいるようだ。
いきなり転移して入るのは流石によろしくないのでマスタールームから徒歩で向かう。
個室のドアをノックするとディアナがドアを開けてくれた。
「ラベルか、何かあったのか?」
「はい、実は…」
バリー達のダンジョン攻略について要点をまとめて話す。ディアナの方も何か知っていないか、或いは意見の一つでも聞いておきたいと思った。
「私も初耳だ、恐らくバリーは自らが音頭を取った作戦で成果を出したいんだろうな」
「ディアナさんから見て、現状でのダンジョン攻略は可能性としてどれくらいあると考えてますか?」
「私も詳しい訳ではないが、ダンジョンは基本的にダンジョンのボスを倒せば帰還出来るワープポータルが出現すると聞いた事がある」
ゲームでありがちなご都合設定だよね、まあそれがないとダンジョンの奥でゲットしたお宝をどうやって持ち帰るのかって話だ。ワープポータルがないならダンジョンの入口まで直通の通路がボス部屋に現れるとかもあった。もちろんゲームでの話だ。
「だがダンジョンはボスのいる場所やその近くに当然ながら強力な魔物が配置されている筈だ。そしてこの樹海はまず間違いなくそこからかなり離れている、そこの魔物相手にも相性次第ではあの様だからな……」
ディアナの言わんとしている事は分かる、ぶっちゃけるとその通りだ。
この樹海の魔物に苦戦してるレベルだとダンジョン攻略とかまず無理ゲー、レベル上げしてきてから出直してきなさいよって話である。
しかしこの異次元ダンジョンには来たくて来たわけじゃない我々だ。その辺もう少し空気を読んで手加減して欲しいもんである、具体的にはもう少し楽に倒せる敵をプリーズ。
「ラベルは……いや、その話を聞いた時点で理解しているんだろう? バリーの行動は自殺行為だ、ヤツは自身の力を過信し過ぎている」
「恐らくその通りかと、ここはダンジョンです、一人の人間の力が例え通用したとしてもそれだけでは攻略は出来ません。ダンジョンは覚悟を持った人間が複数人集まって、始めて攻略を進める事が出来る場所ですから」
そもそもそう言う難易度のゲームだったって話ね。チートキャラ一人でソロで攻略余裕で~す、なんてゲームではなかった。
そもそもそんなゲーム、つまらない過ぎてクソゲー認定してしまうと思うんだよ。ゲームの難しさは適度なのが一番である。
「ラベルの言う通りだな。そのバリー達の行動は辞めさせよう」
「はい」
「私が『転移』の魔法で向かおう、お前も来るか?」
「お願いします、バリーさんとは無理でも一緒に動くつもりの人達に話をしてみたいと思います」
「ああっ無駄な犠牲を出すわけにはいかない、すぐに向かうぞ」
ディアナの魔法で転移する、転移先はバリー達が魔法で作った土のかまくらみたいなのが幾つもある場所である。
あの中で寝泊まりしてるらしい、見た目はショボいが魔法による結界とかを駆使して夜襲にも最大限の対処をしている様だとリエールが言っていた。
「私はバリーの元に行こう、ラベルは一緒にダンジョンを攻略しようと言う者達。恐らくは教師達だろうが、彼等に注意喚起と可能なら攻略を待ってもらう様に言ってほしい」
「分かりました、バリーさんも気が立っているかも知れません。お気を付けてディアナさん」
「ああっ分かっているとも…」
用務員おじさんはディアナと別行動である。
事前にリエールとマスタールームにて攻略に前向きな連中はピックアップ済みだ、『天眼』の魔法でソイツら集まっている場所には目星をつけてもいるのでそこに真っ直ぐ向かう。
幾つかある土かまくらの一つ、そこを覗くと六人のベルフォード学園の教師と思われる服装の人間がいた。
てかコイツらは以前あったアホトーク教師陣達じゃん、確かにこの人達は用務員おじさんに基本的に敵対してくる連中だったけど、まさか彼らがダンジョンを攻略しようってのか?
まあ以前会った時もディアナと共に生徒を探していた、つまりは彼女から見ても自分の身は自分で守れる力は持っていると判断された面々って事だ。
しかし唯一の問題として。
「貴様は、以前見た用務員か…」
「性懲りもなくまた我々の前に姿を見せるか」
「丁度良い、貴様には言っておくべき事がある」
「ディアナ先生にあまり馴れ馴れしくするな!」
「この下民が!」
とまあ用務員おじさんに対しての敵意が尋常じゃないことである。
コイツらを説得するの? ある意味ダンジョン攻略よりも難易度高いんですけど。
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