第80話 在るはずの道が無い

 取り敢えず数が多い魔物を『無限域の箱』でお掃除しながら『星魔の塔』のダンジョン観光を続ける我々だったのだが…。


 ……おっかしいな。

「ラベルさん、どうかしたのか?」

「…いえっ何も」


 そうラビスに答えながらも内心焦っていた。

 ゲームの時にはあったダンジョンコアへと続く道が見当たらないのだ。


 これは不味くないか? 個人的にはダンジョン攻略をある程度進めてあの腐ダマが復活する時にはボス部屋の前にいつでも行ける状態にしときたいと思ってたのに。


 そもそもダンジョンコアを奪取出来ないとまず総力戦を仕掛けても勝ち目はない。

 だからこそこうして我々はダンジョンコアをゲットすべく来てるのに。


 考えろ、考えるんだ。

 やはりゲームとリアルダンジョンじゃ大事な部分が違うのか?

 元からゲーム知識なんぞで異世界ファンタジーの理不尽をどうにかするってのが無理があったのか?


 しかしもう用務員おじさんに頼れる情報元なんてない。このゲーム知識だけがダンジョンからの脱出を可能に来てくれる唯一の道なのだ。


「………………」

 少し発想を変えてみる。

 本来ならとっくに見つかっているはずのダンジョンコアへの通路。


 何故にそれが無いか……隠してるのか?

 思えば現在このダンジョンはあの腐れダンジョンマスターを欠いた状態だ、それ故にダンジョンは現在、魔物とトラップによる自動迎撃モードになっている。


 なら当然ダンジョンの中枢となるダンジョンコアを護る為に何かしらしていてもおかしくはない。

 或いは、もしも腐ダマがそんな真似をしていた場合………。


 もしかしたらヤツは今から俺がしようとしてる方法で、かつてリエールを倒した可能性がある。

 そうでなければここまで完璧にダンジョンコアの存在を隠そうとする理由がない。


 そもそもダンジョンマスターでありボスだったリエールをあの腐ダマはどうやって倒したって言うのかも知らない。

 聞いとくべきだったか? もしかするとあの腐ダマ、こっちが考えてる以上に厄介な相手かもしんない。


 しかしダンジョンコアへの通路がない理由は大方分かった、なら後は見つける方法を人力から魔法に変えるだけである。


 用務員おじさんは『隠蔽看破』の魔法を発動した、その魔法による隠された筈の通路を発見する。

 なんの変哲もない壁の前に立つ、魔法で確認した所によると本来ここに通路があった。


 その通路に分厚い壁が形成されているのだ、厚さ五メートル以上あるダンジョンの壁である。


 これは本来なら破壊するのに骨が折れる、しかしそう言う事が出来る魔法もあるのだよ。

「……『螺旋鉄塊らせんてっかい』!」


 用務員おじさんが魔法を発動させると頭上に巨大で独特な形をした鉄の塊、ぶっちゃけドリルが現れた。

 ギュイィーーンと言う大きな音を発生させて大回転。ドリルがダンジョンの壁に向かって突撃した。


 ダンジョンの壁って本来普通の魔法だと破壊出来ないのだ。しかしファンタジーはファンタジー、普通の魔法なら無理なら破壊する専用の魔法とか作ってみようかと師匠発案で生まれたのがこの魔法である。


 ドリルなのは用務員おじさんが昔アニメで見たイメージを伝えて、壁に風穴を空けるのならこの形が一番クールであると伝えたのだ。


 結果として生まれたのがこの『螺旋鉄塊』である。ちなみに師匠はこの魔法の名前をギ○ド○ルブ○イクと名付けようとしたので速攻で却下したよ。


 本来破壊されない、ないしは破壊されたとしても直ぐに再生するダンジョンのファンタジーウォールである。


 しか~しこの魔法なら破壊出来るし空けた風穴が再び塞がる事もない。そう言う効果のある魔法なのである。

 ギュイィーーンと突き進んでズガガンとドリルが壁にめり込んでいく、回りのベルフォード学園の人々はあ然としていた。


 ディアナが何か言っていると思うのだがドリルの音が大きすぎて聞こえないのである。

 どうせ文句か何かだ、聞こえてたとしても無視するのが用務員おじさんなのだ。


 時間にして三分くらいだった、ドリルは隠されたダンジョンコアへの道を開いてくれた。

 仕事を終えたドリルは消える。


「ダンジョンコアへの通路を発見しましたよ」

「ラベル! あんな大音量の魔法を使うのなら先に言え! シフォンがうるさすぎて気絶してしまったではないか!」


「うぅう~~~ん」

 あっそう言えばシフォンって音に関係する魔法が得意だからか耳が人より良かったんだっけ。

 やっちまったな。


 顔色を真っ青にして仰向けに倒れるシフォンに申し訳ない気持ちで回復魔法を使う用務員おじさんである。

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