第40話 バトルオブ用務員

 指先から放たれる紫のビーム。

 速効で『転移』を発動。用務員おじさんは騎士団長様と距離をとった。


「あら、よく今のを躱しましたね。やはり侮れないわ貴方…」

「お誉めにあずかり光栄です」

 ちなみに今の『紫電の閃光』は『魔障壁』とか『魔法反射』みたいなバリアを張る魔法を問答無用で貫通してくる貫通属性の魔法である。


 こっちの使う魔法を見てのチョイスが何気にエグいな、もう少し用務員おじさんを侮っていいのですよ? 先程のおたくの部下みたいさ。


 しかし雷魔法でもある『紫電の閃光』を使うか、普通ゲームとかなら基本的に敵さんが使う魔法って弱点どころかダメージが半減したり無効化したりするもんだ。

 ならやっぱり中ボス的な騎士団長様には雷魔法が効かないのかね、だとすると属性魔法は本当に全て効かないのかも知れないな。


「考え事をしてる余裕があるのかしら!」

「………ッ!」


 今度は向こうから来た、ハルバートが振るわれる『魔装手甲』を発動してる両腕を振るって防御だ。

 こっちは両腕で防御したり攻撃して手数の多い筈なのに向こうの方が押してる感があるな。


 攻撃速度が尋常じゃないハルバート、本来ならどっかを掴んでハルバートを取り上げたいのだけどそれすら難しいときた。

 更に騎士団長様はハルバートを魔法で強化してきたぞ。


「次はこれよ『雷の刃』!」

 雷魔法をハルバートに纏わせての攻撃、咄嗟に小さな『魔障壁』を使ってハルバートを受け止める。

 するとまた指先から『紫電の閃光』を発動しようとした。


 しかし同じ手は二度も通用しないのが用務員おじさんである、こちらも『紫電の閃光』を発動してお互いの魔法をぶつけ合った。同じ魔法なら相殺出来るのである。

「!?」

「……ハアッ!」


 用務員おじさんは『流砂の大蛇』と言う魔法を発動した。魔法で生み出された砂が大蛇の姿となり騎士団長様のハルバートに纏わり付く。

 向こうも振り払い砂の蛇を破壊するが砂の蛇は直ぐに復活するのだ、砂なので雷魔法も効かないしね。


 遂には砂の蛇にハルバートを絡め取られてしまった、こちらの期待した通りの活躍をしてくれたスネーク君に心の中でお礼を言う。

 また新たな武器を出して来る前にケリをつける。


「ここで決めます!」

「望む所よ!」


 騎士団長様は『風塵の刃』を放ってきた、こちらは『無風の結界』で風が吹かない領域を作って不可視の魔法を打ち消す。

 次は『紫電の閃光』を放ってきたので同じ魔法で相殺する。


 用務員おじさんは『流水波』と『氷結陣』のコンボ発動しようとする。向こうが先に『流水波』を凍らせて来て無力化された。


 接近して『魔装手甲』と『魔装足甲』を武器に戦う、向こうはどうやら素手での戦い方も上手いらしく鎧を着込んでるくせにやたらと早い反応でこちらの攻撃を受け流してきた。


 何度拳を撃ち込んでも対処してくるか、また武器を出そうとしたらそのスキを絶対に突くのにそれに気付いてか武器を出そうとも最早しない。

 やりにくい相手である。


「まっ魔法の攻防と至近距離での戦闘を同時にやるだなんて、なんなのよこの人達はーーー!?」


 アルティエが少しおかしくなってる、そりゃソロで戦うヤツは一人で色々出来ないと色々困るでしょ? だから魔法も戦闘も出来る様になったのである、器用貧乏なおじさんをなめるなって話だ。


「私にも至近距離で使える魔法はあるのよ! 『紫電の手刀』!」

 うわっ両手に紫の雷を纏って来た、これは触りたくないな。


「ならばこちらはこれですね」

 接近戦は無理だと判断して少し離れる、それと同時に『拘束』の魔法を使って動きを封じた。

 向こうは『拘束解除』の魔法を発動して魔法を解く、更にこちらに『稲妻の鎖』と言う雷魔法版の拘束魔法を使って来た。


「これで終わりよ!」

「……そうですね」


 勝負をかけるならここだな。

 『異次元空間』の魔法を発動、日頃から中に適当にしまっていたアイテムを一つ取り出した。

 それは片手で持てる手鏡である、『イタズラ妖精の手鏡』と言う魔法のアイテムだ。


 手鏡を用務員おじさんに迫る『稲妻の鎖』に向ける、すると魔法が消えた。

「えっ魔法が消え…」

「─たわけではありません、この鏡の中にしっかり存在していますよ」


 続けて『イタズラ妖精の手鏡』に騎士団長様を映す、その瞬間手鏡に封じてあった魔法が魔法の発動者である騎士団長本人に発動した。


 このアイテムは魔法を封じるだけでなく魔法の効果対象を入れ替えるという中々に強力なアイテムなのだ。『稲妻の鎖』は騎士団長様を捕らえる。


「きゃああああーーーーーっ!」


 バリバリバリと電流が走り騎士団長様も苦悶の声を上げる、なんだやっぱり雷魔法が弱点だったの?

 自らの魔法に拘束され、雷によるダメージを受けてようやく大きなスキを見せてくれた。


「そ、そんな物があるなら何で最初から…」


「切り札も使うタイミングが大事ですからね…『魔力の拘束』」


 相手の身体だけでなく魔法の発動も阻害する『拘束』の魔法の上級魔法を発動、これで騎士団長様の無力化に成功した。


 そして現場には勝った用務員おじさんと倒れた騎士団長様、そして用務員おじさんのバトルを一部始終を見ていた姑息ナイトとアルティエがいた。

 他の紫骸鎧はまだ魔法にかかったままだ。

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