第55話 決着

『おっおぼぉおおおおーーーーーーーッ!?』


 頭に光焔刀がぶっささってしまった腐ダマの口やら耳やら鼻の穴から炎が溢れとる、流石に拷問レベル高杉たかすぎな光景にやらかしたかもと思う用務員おじさんだ。


 ちょっとマジでギリギリな戦闘に気分がハイになってたかもと……仕方ないな。

「これで終わりです」


 コイツは腐ダマだが悪戯に苦しめる事はしたくない、ならば次の攻撃でお終いにするべきだな。

 用務員おじさんの右腕に光焔刀が戻り再びドッキング、そして光焔刀を水平に構える。


 ……バリーに言った言葉を思い出す、あの力を得た後、一番最初の使い方を間違えた云々って話だ。


 俺が力を求めた動機は多分、親とか自分自身への怒りと憎しみだ。それは間違った理由だったのだろう。


 しかし俺には師匠がいた、師匠は力を与えてくれたが使い方にも厳しかった。


 ──良いかぁ~、別にその力はお前のもんだ、私利私欲で使っても気分一つで何をしてもその場にオレがいないのなら好きにしろ、まっお前無駄に律義だから大抵の場合は問題ないさ─


 あれ? 別にそんな感じじゃなかったっけ?


 ─但し、使う時を迷ったなら落ち着け、頭の中で思い出せ。お前の中でお前とお前が大切だと思う連中に、それは胸を張れる力の使い方なのかをな─


 ……………。


 俺は魔法を得て、一番最初から使い方を間違えないで済む方法を教わった。だからこれまでもこの魔法を間違った事には使ってこなかったと思う。


 そしてそれは……。

「最後の時まで。変わらなかったよ」


 頭を燃やす腐ダマが両膝を地面につける、流石の腐ダマも直ぐには回復出来ないか。しかし俺には分かる、コイツは後数十秒もすれば回復する。


「………滅却一刀めっきゃくいっとう


 光焔刀を水平に一度、振るう。

 その刃先から細く赤い光が空中をはしった、その光は腐ダマを回り込むように伸びる。

 光は腐ダマを囲む赤い光輪となった。


 俺はヤツに背を向けて歩き出す。

 終わりだ。


「…………赫焉天潰かくえんてんつい


 赤い光輪が更に巨大になる、ちょっと巻き込まれるかもなので早歩きで避難する用務員おじさんである。スタコラサッサ~~。


 ズンッと言う重い音と共に俺の背後に真紅の光の柱が現れる。多分だけどこの柱、ダンジョンを貫通してると思うんだ。

 真紅の光の柱は数秒程で消え、腐ダマの姿は完全に消えた。

 ヤツの気配も完全にな、これで試合終了である。


「…………ふうっ何とかもなるもんだね~」


 用務員おじさんはサムライじゃなくて魔法が使える用務員おじさんなので、最後の最後は魔法っぽく仕上げてみました。

 ここまで色々と身体とか精神力を酷使したおじさんを誰かしら褒めてほしいよ。


「ラベル様、お見事です」

「……リエール……後の事は頼むよ」

「はい」


 もう歩くのも限界である、俺は顔だけ動かして無事な面々を確認する。

 ディアナ、ラビス、シフォン、デュミナ、エコー、ラナミス、アルティエ、ドニードさんそれに倒れてるバリーも、他の学園関係者の連中も無事だな。


「ラッラベル……お前は一体…」

 ディアナの質問にも答えてあげたいけど、その余裕も残念ながらないらしい。


 俺は笑顔を浮かべてディアナ達に言った。


「……無事で良かった」


 瞬き程の時間もかからない、俺の身体は灰となって崩れ去った。

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