第54話 決戦(4)
「リエール、勝つよ」
「お供します、ラベル様」
同時に地を蹴り腐ダマの元へと跳躍する。
腐ダマは合成混魔を出した。本当に懲りないヤツだ。しかし今度はクモとかムカデとかに見える魔物ばかり、恐らく毒攻撃とかをしてくると見た。
光焔刀を振るい腐ダマの身体から現れた魔物の頭を切り飛ばす、それと同時に立ちのぼる紫色の煙、それも燃やし尽くした。
『毒まで燃やすだと!? 本当にふざけた中年野郎だよ!』
「…………」
腐ダマが自らに強化魔法を発動、そして両手を禍々しい刃物に変えて応戦してきた。
二刀の光焔刀を振るい腐ダマの刃とぶつけ合う、リエールが背後に回り込むと背中から魔物を出してリエールを攻撃した。その魔物を一刀で仕留めるリエール、彼女もチートキャラだ、弱いわけがないだろ。
激しい火花が散る斬撃の応酬が続く、『炎心神威』を発動した用務員おじさんに接近してる腐ダマの皮膚が少しずつ焦げだしてる。
本来ならとっくに灰になってるか、灰も残らない筈なのに。やはりバグキャラは色々と怖いな。
更に腐ダマが背中からムカデを生やして来た、そのムカデの身体からは無数の刃が生えている。
それが俺とリエールを襲う、躱すと同時に斬り付けて燃やす。リエールに切られたムカデは動けなくなっていた。
「……
リエールの扱う魔法は特殊だ、多分ボスキャラの時と同じ魔法を使ってる。
星属性の魔法だ、コイツは特殊な魔法で相手の魔法関係の防御力が高いほどその威力が上がるって設定の魔法だった。
下手にバフで魔法防御力を上げると一瞬で全滅、全く上げないと結局全滅と言うクソゲー仕様の強さを有していたリエールである。
まっその話は置いておこう。
ムカデを掻い潜り腐ダマの身体に何度も斬り付ける。本来なら一度切られたら死にそうなものだがそこは腐ダマだ、全然倒れない。
攻撃する度に反撃してくるので対応するのも大変である。
二人で前後を挟んで攻めまくるが腐ダマもモリモリと刃ムカデを出して抵抗してくる。
多分あのムカデの刃、毒とか呪いとか絶対あるのでかすり傷一つでもヤバいと思うのだ。
リエールの回復魔法すら阻害してくる呪いとか使って来た手合いだからな、まあそれならかすり傷を一つも負わないで倒せば良いのでそれに向けて頑張る用務員おじさんである。
三体のムカデが迫って来た。ムカデは刃を個別に振るってくるのでその刃の中から当たりそうなのを切り飛ばして燃やす。ムカデも切って燃やした。
一体ずつ倒してると腐ダマがモリモリ出すスピードに追い付けないので基本的にまとめて処分する。
ムカデを瞬殺して何度目かの腐ダマへの接近に成功、ヤツは俺を警戒してる、両腕の刃を振るってきたのでそれに対応しつつヤツの身体に何度も斬り付ける。身体から吹き上がる炎を無視して俺に攻撃を続けて来た。
その背後にリエールが斬撃をかます、ヤツの身体を切り裂いた。殆ど真っ二つに切られた身体からまたムカデを生やして回転してくる。ムカデから距離を取る為に後退、見るとあの一瞬で切られた身体は復活していた、炎も消えている。
チート級の回復魔法とか再生能力でも持ってるんだろうな、たまゲームでもボスキャラでHPの桁がおかしいヤツとかたまに出て来ると萎えるわ。
「ラベル様」
「問題ない。傷跡も炎も回復魔法や再生能力で完全に無効化する事は出来ない、ヤツの身体を内側から焼き続けている筈だ」
火刑狂炎はそう言う攻撃である。
ちなみにこれらのワザ名は師匠と用務員おじさんの考案である、一度も使った事のない技ばかりなので師匠からその効果とか威力を聞いて色々と考えたのだ。師匠はカナ名を推してくるが俺は漢字派なので結構バチバチだった。
「リエールの攻撃もヤツから魔力を奪います、もうかなりの魔力を奪ったのでそろそろヤツもやぶれかぶれになってくるかと」
そういや
『この、虫ケラ共がぁああーーーーーーーーッ!』
腐ダマが気合いを入れた咆哮を上げる。
こちらも構えて再度突撃した。
近距離、中距離、遠距離、からの斬撃。その圧倒的な手数の多さに本来なら勝ち目はない、用務員おじさんの場合は『炎心神威』の能力で近づいてきた時点でムカデが焼き死んでいるので動きが遅くなってたりする、だから問題なく対処できているだけだ。
そしてそんな用務員おじさんへの対処に腐ダマが集中するからこそ物量で攻められないリエールもまた攻撃に対応出来ている。
戦闘の最中観察を続けた結果、ヤツの攻撃スピードが明らかに落ちてきた。
こちら側の攻撃を休まず続けた結果である。
ここで………押し切る!
「リエール!」
「ラベル様!」
ムカデを焼き払い接近する、腐ダマが『飛行』で上に逃げようとしたのを跳躍したリエールが顔面を蹴り飛ばして地面に叩きつけた。
その頭に向かって光焔刀を振るう、ヤツの肩から腕が生えてきた。その手は刃となっていてこちらの斬撃を受け止める、なら右の腕から生やしてる光焔刀を頭に向けて突きを放つ。
髪が伸びた、光焔刀から頭を守るように動くと髪が硬質化して盾となる。金属同士がぶつかる音がした。
「…………ッ!」
そのまま力を込める、硬質化した髪の盾は赤熱し溶解し始める。腐ダマは急いで態勢を立て直そうとして立ち上がった。
『!?』
その瞬間、斬撃を受けてもいないのに身体から炎が吹き上がる。
本来、火刑狂炎は一度受ければ死んで灰になるまで敵の身体を燃やし続ける。ヤツが疲弊した事でその力を抑えられなくなったのだ。
髪の盾を焼き払い斬り掛かる、ヤツは刃の腕を左右三本ずつ生やしてる合計六本で迎え撃って来た。
「ラベル様ーーーーッ!」
リエールは俺と対峙する腐ダマの真横から突撃した、腐ダマの右腕の腕二本でリエールの突撃を止める。しかしリエールは流れるように動き、放った斬撃が腐ダマの腕二本を切り飛ばした。
『!?』
リエールの最後の動きだけ明らかに違う、この一撃の為に力をセーブしていたのか。
ならばあの攻撃は『ここで決めろ』と言う合図だ、ならばと俺は前に出る。
腐ダマの左側の三本の腕が振るわれる、一本を切り捨て、一本は刃を砕き、一本は受け流した。
「ラベルさ」
『邪魔なんだよお前はーーー!』
リエールが腐ダマに蹴り飛ばされた、コイツマジで許さん。
俺一人に集中する腐ダマ、なんとしてもこの俺を殺すつもりか!
残った腕を振るい鬼神が乱舞するが如く攻撃してくる、こちらも二刀流で迎え撃つ。
刃と刃の剣戟が更に激しさを増していく。
「
『死ねぇーーーーーーーーーーーッ!』
光焔刀が纏う赤い燐光が爆ぜる、俺とヤツを中心に爆撃と斬撃が無数に発生した。
ヤツは魔物を背中から出そうとするがすぐに爆発にやられてしまう。
斬撃と同時に爆撃も放つ自爆上等の攻撃である、無敵モードじゃないと絶対に使いたくない。
もう出来る小細工はない、後は全てをかけてコイツを倒すのみである。
ヤツも攻撃に全ての魔力を回してきた、一気に攻防はクライマックスだ。
刃のぶつかる音は爆撃の爆発音に消される、お互いの雄叫びもまた同じだ。
ヤツの腕を切る、しかしまだ腕だけは再生してきた、刃を砕く、こちらも再生する。
「!?」
そして遂に、こちらの光焔刀に違和感がきた。
左手に持つ光焔刀が砕かれた。
こっちは再生とか出来ないってのに、なんてこった……。
『ボクの勝ちだぁあっ!』
………………なんてな!
「………俺の勝ちだよ」
覚えておけよ。勝ちを確信した時が一番大きなスキを見せるちまうもんなのさ。
俺の右腕から生えている光焔刀が消えた。
光焔刀は刀だけで空中を飛来して腐ダマの頭を背後から貫いた。
『……はえ?』
光翼の時から背後の剣は単体で動いていたでしように、どうしてそれから昇華した魔法が同じ事が出来ないと思ってるの?
光焔刀も単体で動かせるのだ。
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