第12話 アホトーク教師陣

 ディアナは数人の学園の先生達を連れて現れた。

 その表情はラビス達の生存を知り安堵をにじませる、しかしキリッとした表情に直ぐに戻った。


「色々と説明したいが今は危険だ、実はこの近くにかなり強力なマンティス系の魔物が」

「ディアナ先生! 魔物の反応が突如消滅しました!」


「は? それはどう言う事だ…」


「………………」

「……おいっラベルさん」

 俺はラビスの質問に黙秘する、どうやらディアナ達もあのカマキリを補足していたらしい。こんな事ならほっとけば良かった。


 実はディアナ達の接近も魔法で分かっていた、だから偶然再会したって感じを演出する為にそれとなくラビス達を誘導していた訳なのだが…。


 三人から『何で近くに来てたのに教えなかったの?』って視線を向けられる。ドッキリとかサプライズってヤツだよ、まあそう言う事をして成功した試しがないタイプの人間だった俺だけど。


 そんな事よりもまあいいじゃないかと言いたい物だ、何しろベルフォード学園の先生方の登場である。これでもう用務員おじさんの出番とかないよ。


 俺はにこやかにラビスへと話す。

「よかったですねラビスさんこれで助かりますよ」

「…………」


「シフォンさん、デュミナさん。今後は先生方の指示に従えば問題なさそうですね」

「「…………」」


 無言は辞めてくれる?

 するとディアナがこちらに話し掛けてくる。

「…やはり貴方は」

「用務員をしているラベルと言います」


「そうか、名乗ってもいなかったな。私はディアナ、ベルフォード学園で教師をしている」

 うん知ってる、同じ職場で働いてるもんね。なんかそう言う所本当に律義というか何というか…。


「私達は飛行艇が墜落する前にすべての生徒を集め、教師数名による大規模な転移魔法で脱出したのだが。貴方達はどうやって?」


「飛行艇が大きく揺れたタイミングでこの樹海に放り出されたんです、私は運が良くそちらのラビスさん達によって怪我もなかったんです」


「「「………………」」」

 無言は辞めてくれる? そりゃあここまで平然と嘘を並び立てる大人にドン引きする気持ちは分からなくもないけどさ。

 ほらヨイショしてるんだから話を合わせるとかしてよも~。


「そうか、ラビスとデュミナは実技での魔法の成績も優秀だし。咄嗟に行動出来たのは素晴らしいぞ、シフォンもよくこんな状況でパニックにならず冷静な行動が出来たな、私は教師として三人を誇りに思う」


 三人が苦笑いを浮かべてディアナの話を聞いている、仕方ないのだ、流石に教師陣にまで用務員おじさんが魔法を使って彼女達を助けた事を話すのは不味い。


 ベルフォード学園の教師もまた貴族しかいない、そして人間とは歳を無駄に取れば取る程悪い部分が熟成されて手に負えないタイプの人間になってくるってのはままある話なのだ。


 現にラビス達を差し置いてディアナに事の次第と状況を報告する俺に剣呑な視線を向けてくる連中がいる、君ら学園の教師だよね?

 チンピラとか半グレとかじゃない筈だよね?


「なんだあの用務員は……」

「ディアナ先生と言葉を交わすだと?」

「たかが下民が……」

「生徒達も何故用務員など助けたんだ?」

「見捨てれば良かったものを」

「オッサンめ…」


 ほ~う、流石に簡単な魔法でこちらに声が聞こえないように小細工はしているが。よくもまあそれだけ悪意しかない言葉をボソボソと言えたもんですな、これで生徒達に物を教える立場のであり更には貴族様なのだから笑えない。


 ちなみに教師陣は確かに二十代も多いが俺とは大差ない年齢のヤツもいる。オッサン呼ばわりしたヤツは明らかにお前もオッサンだろと言いたい年齢のやつだった。


 オークレン王国、本当に大丈夫なのかと将来が不安になってくるわ。

 まあ現在、謎の異次元ダンジョンでサバイバルしてる用務員おじさんが国の未来を心配とか片腹痛いわって話だけどね。


 まあディアナも背後の教師陣のアホトークには気づいてないみたいだし、この状況でそれについて話しても場の空気が悪くなるだけなので俺も何も言わない。


「………………」

 ん? シフォンが少し怒ってないか? 

 ディアナの後ろのアホトーク教師陣を少し睨むように見てるような……まさかね。


 シフォンを見ていたらアホトーク教師陣の一人がディアナとラビス達に話をしだした。

「ディアナ先生、ラビス達も再会は結構な事だがここは危険だ。急いで移動しましょう」


「分かった」

「分かりました」

 シフォンとデュミナ、そして俺も頷く。

 まあこれだけ教師がいればダンジョンの魔物も何とでもなりそうだけど、そこ教師として生徒達の身の安全を優先しての言葉通りなのだろう。


 アホトークしてた割に少しは教師らしい事もしてるじゃないの。

「用務員、貴様も助けてはやる。しかし生徒や我々教師は貴族なのだ、くれぐれも身の程は理解した態度と行動を心がけよ」


「…………はい、分かりました」

 こんな状況でも釘は刺してくるのね、少しは君らの行動に感心した俺の気持ちの持って行き場がなくなってしまったよ。


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