第11話 飛行艇を探そう

「…まあ、ラベル……さんの話は理解した。納得はしていないがな」

 ラビスはこんな感じだ、しかし用務員おじさんの話とか今はどうでも良いのである。


 シフォンやデュミナにも話を聞かせるつもりで語った、別に大した話じゃない俺は魔法が使えるだけの普通の用務員おじさんである。

 しかし三人からは無言でジト目を向けられた、何でだよ。


 後は国の法律で魔法が使えるとしょっ引かれる事を話したので、この辺りはラビスも貴族だから普通に理解した。そして話は今後の方針に移る。


「ラベルさんはこれからどうするべきだと思いますか?」

「少なくとも飛行艇が墜落した所には行くべきかと」


「確かに、生き残ってる人間と合流出来ればそれだけ安全に繋がるもんね」

「それもありますが墜落する前に私が魔法で皆さんの荷物や飛行艇に積まれた食料を保護しました、それが目的だったりします」


「そっそんな事もしていたんですか?」

 シフォンに呆れられる、なんで? 用務員おじさんはそこそこいい仕事をしてる筈だよ?


「聞けば気絶した私を助けてくれたとか、なんでそう言う事を最初に説明してくれなかったんだ」


「まあ他の魔法が使える学園の先生達とかと合流すれば、私はお役御免となるだろうと思ってましたから」


「いやっそう言うのではなくてだな……」

 ラビスは何やらブツブツ言っているがまあ気にしても仕方ないのでダンジョンについて更に話す。


「ここは間違いなくダンジョンです、しかもあのレベルの魔物が出て来るなら間違いなく戦える人間が多くないと危険ですので出来れば早めに他の学園の方と合流もしたいですね」


「確かにな」

「怖いですしね」

 同意するラビスとシフォン、そしてデュミナが率先して前に出る。


「それならさっさと出発しよ! またあんなのが出て来たら嫌だしね」

 と言う訳で我々四人は出発することになった、進む方向は飛行艇が落っこちる前に跳んでいった方向だ。


 目の前には鬱蒼と大きな木々が生えまくってる、見てるだけで嫌な気分になる光景だ。

 森林浴? 魔物がいるような森でそんなんしてたら死ぬじゃん、気を引き締めて行こう……まあ…。


「身を隠して襲ってくる魔物がいるかもしれない、皆気をつけるんだぞ」


「あっ魔法で周囲は警戒してるのでその心配はありませんよ、足下に注意して転んだりする方を気をつけて下さいね」


「……………」

 何でにらむラビスさんよ。



 ◇◇◇◇◇◇



 その後はこの樹海を黙々と探索する、流石に魔物がいる場所を観光気分で歩ける訳もなく変な物音すら立てないようにと慎重に彼女達は進んだ。


 本当は『飛行』の飛んでも良かったんだけど、この三人は皆『飛行』の魔法が使えないらしい。そんな三人を俺が飛ばす事は可能ではある、けど飛んでる最中にベルフォード学園の人間と出会うと色々と説明が面倒くさい。


 そこで余計な事は言わないことにして歩く事にしたのである。


「はぁ~~足がもうパンパンだよ~、おじさん、『転移』とか使えるんなら一瞬で飛行艇の所まで行けないの?」

「……………」


 俺は黙秘した。


「確か『転移』を使って飛行艇から脱出したそうだな。なら『飛行』の魔法は使えないか? アレは熟練者なら他者にも発動して飛ばす事が可能になると聞いた事があるのだが…」

「……………」


 俺は黙秘した。


「あっ! この用務員ここから先は本気で魔法を使えないふりする気だよ、合流したら一般人のふりして他の魔法が使える人達に魔物の相手を任せる気だ!」


 やかましい、まあその通りだけど。

 すると樹海の奥からメキメキと木が折れる音がした、あの黄色でメタリックなカマキリが五体ほどいると魔法で認識する。


「今の音は……?」

「そろそろ飛行艇も近い、ここで派手な音がする魔法は目立ちすぎるか。ここは……」


「あっやっぱり何かの魔法でとっくに飛行艇の場所を確認してるでしょ! 転移してそこに行くと自分が魔法を使える事がバレるのが嫌だからわたし達を歩かせたのね!?」


 やかましいわ、デュミナがピーピーうるさいのでカマキリには登場する前に退場してもらおう。


「え? まさかアレってあのマンティス系の魔物が何体も……」

 シフォンは目が良いらしい、しかし無視して俺は『暗影の刃魔』と言う魔法を発動した。


 無音で俺の影が樹海の影に伸びる、その影の中を俺が魔法で召喚した形を持った何かが移動していた。それがカマキリ達の元に行く。

 数秒後にはカマキリ達は影から飛来する漆黒の刃にバラバラにされた。


 『暗影の刃魔』は両手両足が刃物になっていて影に潜み。移動する魔物を一時の間召喚し使役する魔法である。

 用務員おじさんは召喚魔法も使えるおじさんなのさ。


「………? 魔物がバラバラになって消えたような、ふふっ気のせいですよね」

 そうそう、気のせい気のせい。

 ラビスは無言でこちらを見てるがまあ無視しても大丈夫だろう。


「お前達! 大丈夫か!?」

 すると俺達の元に女性声が届いた、この声は聞いた憶えがある。


 ディアナの声だ。どうやら合流するという目的は果たせたみたいだ。




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