第4話 運命の日
そして直ぐに修学旅行の日がやって来た、気が重すぎて足取りが重いですな。
あ~~荷物運びキツいわ~~。
場所はベルフォード学園の敷地内にある飛行艇の発着所だ、本当にどれだけの施設があるだよこの貴族様学園は。
最初こそドドンと並んだ見上げる程に大きな飛行艇に目を奪われたが学生が来る前に数十代の馬車で運ばれてきた荷物とやらを見たときに俺は絶望した。
朝っぱらから既に二時間ほど荷物運びである、重い荷物は用務員や飛行艇の船員が運び、何か高そうな物はメイドさんが運んでいた。
まだ夜明け前からこれだけの人間が修学旅行をするガキンチョ共の為に動いているとか、本当に碌でもないよなベルフォード学園。
内心ストレスフルながらも、これもボーナスの為と黙々と荷物を運んだ。
ちなみに俺は自分自身に『身体強化』の魔法をかけているので荷物の重さは大して感じない。
他のみんなには悪いが楽できる所は楽させてもらっている。まあ少しは重そうにして運ぶけどね。
何しろ魔法を使ってるってバレると貴族様じゃない俺はオークレン王国の法で裁かれるからさ。
そして更に作業することしばらく、俺に声をかけてくる者がいた。
「今度はちゃんと働いているようだな」
「おはようございます」
ウェーブのかかった金髪ロングヘアーのディアナ先生である。こんな朝早くから出勤とは恐れ入りますな。
まあ多分引率の教師なんだろうけど。
キリッとした切れ長の目は手抜き仕事とかしてないかを監視してる様に感じた。
「話は他の教師に聞いた、用務員だからと言ってベルフォード学園の関係者なのだ、余所でも迷惑にならない様に努めて欲しい」
「……はい、気をつけます」
凄いね、学園の生徒さんがハメを外しすぎないかを監視すればいいのにいち用務員にまで釘を差してくるとは。
本当に彼女とは別の飛行艇なんだよね? 嫌だよマジで。こんなのと同じ飛行艇とかさ。
生真面目なだけかも知れないけど、余裕がなさ過ぎるのを他人に伝播する行動とかやめてほしいじゃん。
ディアナは言いたい事を言い終わったのかツカツカとヒールの音を響かせ飛行艇の中に乗り込んだ。
どうやらこの飛行艇に乗るらしいので俺は何としても別の飛行艇に乗せてもらえる様にしたい。
そして更に一時間の荷物の運び入れをして何とか出発前の作業は終了する。
飛行艇の船員は自分達が乗る飛行艇を予め知っているのか直ぐに船内作業をしに飛行艇へと向かった。メイドさんは一度戻り着替えたり身支度を整えてから改めて学生のお迎えをするらしい。
そして用務員達は発着所の隅っこに集められる、ここで宿舎に帰る人間と飛行艇送りにされる人間でその表情に雲泥の差がある。どっちが良い笑顔をしてるのかは言うまでもないな。
「以上、それぞれ持ち場の飛行艇に行ってくれ」
「…………ん?」
あれっバイトリーダー、俺が乗る飛行艇について話してないよ?
しかも結構な速度で宿舎へと歩いて行ってるぞあれ。ちょっと……?
「あっラベルさん聞きましたよ~作業中に話してたあのディアナ先生と同じ飛行艇なんですよね?
しかも生徒には以前足蹴にされたって生徒までいるとかって」
俺はバッとバイトリーダーを見た、くそっ! 既に姿が豆粒みたく小さくなっている。
う・そ・だ・ろーーーーーっ!?
ちくしょうめ、ここに人目がなければ速効で転移してバイトリーダーを引っ捕まえるのに。
「そういや、バイトリーダーも飛行艇に乗るはずだったらしいのに残るんですね?」
それは多分代わりの人間(恐らく俺な)を生贄にしたのではないかと思われるよ。
そうか、だから俺だけ一人で呼び出しなんてされたのか。あの策士めマジで許さん。
帰って来たら魔物の餌にしてやるぞ!
「それじゃあオレは別の飛行艇なんで、お互い頑張りましょ~~」
「………あっああ、頑張ろうか」
本当にこのカルロ青年はストレスとか一切ない感じですな、こちとらもうお腹の調子が悪くなってきたよ?
そして何処か、遠くに流刑に処される犯罪者のような気分でディアナと同じ飛行艇に乗り込む俺だ。
やがて生徒が来る、俺は飛行艇内の端っこにある船員の個室を借りる事になったのでそこに引きこもっていた。
やがて出発時間となった、だまされ用務員おじさんは空へと旅立った。
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