第60話 地獄のメイド体験を…

 現在のセーフティポイントは大混雑している。

 用務員おじさんが後先考えずに人間を避難させたせいである。


 着物メイドが空間を拡張しているので少しずつ問題は解消されているのだがやはり色々と問題は起こるものだ。


「ふざけるな! 次にラベル師匠に見てもらうのは俺達だろう!」

「私達だって修行に付き合って欲しいのよ!」


「まっ魔法薬の研究とかもしたいのですが、あの灰から人間を蘇生させてしまう秘薬を見せてくれませんか?」


「それよりもこの未知のダンジョンの調査を我々として欲しい!」

「まっ魔物の資料を作りたい、学界で発表すればとんでもない事になりますよ?」


 ………まっ起こる問題の大半が用務員おじさんに関係してる事なので無視も出来ないか。

 訓練ルームから出て来た中年男を取り囲むベルフォード学園の人々である、そして人を挟んで様々な口論をしたりと好き放題だ。


「お前達、静かにしないか!」

 ディアナ先生の一喝である。

 一気に静かになる一同、何気にこの頃は彼女が用務員おじさんのシールドみたいな役回りをしているのだ。ゴールデンシールドディアナですな。


「……ディアナ先生もこの頃ラベルさんと一緒にいる時間増えましたよね」

「ハッ!?」

 シフォンの背後からの奇襲である、ディアナが仲間に裏切られたみたいな顔をしてシフォンを見る。


 シフォンは視線を横にずらして素知らぬ顔だ、本当に最初の頃と印象変わったわこの子。

 会ってから数日しか経っていないんですけどね。


 そしてシフォンの一言が引き金となり勢いを取り戻す学園の自称弟子達……まあ俺も師匠には無理を言って弟子にしてもらった人間、弟子入りを断られた人間がどんだけ途方に暮れるのかは想像出来るので一応は全員弟子入りを許した。


 まさかここまで俺を私を的な自己主張高めに来るとは思わなかったけど、考えてみれば当たり前か。

 ここは日本じゃないしこの子らも日本人じゃないんだ。少し弟子を取るって事を甘く見ていた事を反省する用務員おじさんである。


 まっだからと言って投げ出したりはしないけどさ。


「それでは次はオリビアさん達の戦闘訓練を見せてくれませんか?」

「おっお願いします!」

 一時のブーム的な何かだと思うので、用務員おじさんが付き合えるだけ付き合ってあげますか。



 ◇◇◇◇◇◇



「………ふうっ疲れた」

 個室にてゆっくりしている、やはり一人では対応が大変だった。ダンジョン攻略も考える必要があるのに弟子達の相手で一日が潰れてしまった。


「お疲れ様ですラベル様」

「……リエール」


 着物メイドことリエールが現れた。

 フワッとした感じの水色の長い髪をツーサイドアップ、瞳も水色で服装は青い着物とメイド服を合体させたようなフリル付きの物を着ている、下はフリル付きの丈の短いスカートと黒のロングブーツをはいていた。


 リエール、この異次元ダンジョンの本来のダンジョンマスターであり隠しボス的な立ち位置にいた小柄な少女である。


 何気にめっちゃ強いので怒らせてはいけない女子ランキングはディアナと同じくトップだ。

「あの貴族達を魔法で数日眠らせてしまいますか? ダンジョンの攻略を邪魔をされているようですが…」


 ホラね、こう言う事を本気で言ってくるのよこの子。そしてそれが出来るからね。


「まっまあ落ち着いて、多分ここから先の手順は俺の考える通りなら問題ないからさ」

「………そうなんですか?」


 俺にはこの異次元ダンジョンに酷似したダンジョンを前世で楽しんだファンタジーゲームで攻略した記憶がある。

 まあ色々とゲーム知識とは違う事が起こってはいるけど……何とかなると思うことにしてる俺だ。


 無論保険はかけておくけどな、前回はそのお陰で命を拾った用務員おじさんである。これから行うクソ仕様なダンジョン攻略については作戦も完成しているのだ。


 腐ダマとの決戦から三日が既に経過していた。

「リエール、ヤツがダンジョンの力で復活するまでは後四日なんだね?」


「………恐らくとしか言えませんが」

「………」

 その辺りの情報がアバウトなのは仕方ない、まっ多少前後しても問題はないのだ。


 この三日で用務員おじさんの体調も魔力も回復した。明日からは本格的にダンジョン攻略である。

 そう意気込んでいるとドアをノックする音が聞こえた。


「……誰ですか?」

「……………………………僕だよ」


 聞き覚えのある声である、ドアを開ける。

 ドアの前にはメイド喫茶とかで良く見るメイド服を更にファンシーに、そして露出度を上げたヤバめに進化させたメイド服を来てる少年がいた。


 そうっメイド服を少年が着ていた。

 少年の名はバリー、少し前に調子に乗りに乗った罰としてリエール考案の地獄のメイド体験を受けている哀れな少年である。


 短い金髪と青い瞳のとてもウザい性格をしているイヤな少年、しかして良く見るとかなり中性的な顔立ちをしていたのが彼の運の尽きだった。


 ショタとかお呼びでない用務員おじさんにはさっぱりだが罰と言うか大義名分を得たリエールとその他(ベルフォードの学園の女子達)によって着せ替え人形にされていたのだ。


 ………哀れだ、惨めだと思う。ざま~みろ。

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