第59話 師匠の抱負

「デュミナ、ラベルさんも忙しいんだからそんなに急かしてたらいけないわ」

「む~~シフォンがそう言うなら……」


 シフォン、紫色の瞳を持ち、少しウエーブのかかった明るめのブラウンヘアーを伸ばしている今も学生服を着ている方の女学生である。

 温和や雰囲気を持ち包容力がある清楚系美少女、しかしスタイルは全然清楚じゃなく色々と大人びているがデュミナと同い年である。


 少し前までは引っ込み思案気味と言うか、自分の意見はあまり言うタイプじゃなかったが今は少し心境の変化があったのかわりと物を言うタイプになっている。デュミナのブレーキさんだ。


 この子も普通に弟子入りしてる一人である。本当に行動的になったもんである。サバイバルによって彼女も大分成長したって事だろうか。


 ちなみに現在我々はセーフティポイントに新たに増設した戦闘訓練ルームにて模擬戦をしている真っ最中だ。

 白い金属製の身体を持つ人型っぽいゴーレムを相手にアルティエとラビス、デュミナとシフォンがそれぞれ二人一組となって一体ずつゴーレムと戦っていた。


 シフォン達は既にゴーレムを倒している。ラビス達の方が遅れた理由は、ラビス達の方のゴーレムが強めに設定されていたからだ。


 流石に戦闘方面はラビスとアルティエの方がシフォンとデュミナよりも強いからな、それぞれにあった難易度のゴーレムを用意した。

 そう言う細かい設定が出来るのが戦闘訓練ルームの良いところだ。


 ……まあそれを設定出来るのはどっかの着物メイドだけなんだけどね。


 ちなみに、何気にシフォンとデュミナが戦う所なんてこの戦闘訓練ルームで初めて見た。

 シフォンは音に関係する魔法が得意らしく音波を魔法陣から出してゴーレムの動きを阻害していた。


 そして意外だがデュミナは身体強化系の魔法を使って近接戦闘を仕掛けていた。ゴーレムの巨体にドロップキックをかます少女の姿はとても印象の残っている。


 アルティエは遠距離や中距離からの強力な魔法による攻撃と言う魔法使いの王道スタイル。

 ラビスは『魔力剣』を手に真っ向勝負の騎士みたいな戦闘スタイルである。


 こうしてみるとそれぞれに魔法って個性があるよねと思う、当たり前か。

 観察すればやはりベルフォード学園の教師も学生も才能があり未来が楽しみな面々ばかり、およそ将来性なんてもんがないアラサーには少々眩しいよ。


 サバイバル脱出後まで弟子だなんだと言う話がどうなるか分からないが、この子達を皆この異次元ダンジョンから脱出させたいと改めて思う用務員おじさんである。


「皆さんお疲れ様です。今日の所はこれまでとしましょう」

「我が師よ、まだ魔力も体力も問題ありませんよ?」


 アルティエは流石に教師だけあり余裕を残している、しかしそこに声を発する者が現れる。

「アルティエ先生、ラベルは他の生徒の方も見に行きたいのだと思うぞ…」


 ウエーブのかかった輝く様な長い金髪と青い瞳が特徴的なこれまた美人な女教師である。スーツ姿に近いカッチリした青色の教師服と紺色のタイトスカートを着用してヒールをはいてる、見た目はやり手の金髪キャリアウーマンみたいな女性だ。


 名前はディアナ、ラビスに近い凛々しい感じの女性である。責任感があり生徒の事や同僚である教師を守る事を第一に考えている、かなり真っ当なタイプの貴族様でもある。


 ちなみにディアナは弟子ではない、普通に考えて学生はともかくベルフォード学園の教師が弟子ってなんだって話だよな。俺は用務員なんですよ?

 アルティエの事は棚に上げた。


「確かに、我が師は今や多くの弟子を抱えていますからね」

「………その原因になった自覚はあるのですか?」


「それは重々と、しかし魔道を進む者としてあれ程の物を見せられては師事をこいねがうのも仕方のない事をではないですか? ディアナ先生?」


 アルティエっていきなりキャラを変えてくるから困るんだよね。まあそう言う人間は日本でも散々見てきたので慣れてはいるけど。

 アルティエがあの手の連中見たいにならない様には気をつけたい師匠である。


 そんな師匠の抱負を胸に我々は訓練ルームを後にした。

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