第9話 ダンジョンの魔物

 ダンジョン、日本人やってた頃はゲームやマンガでお馴染みだったアイツである。

 そしてテンプレと言うべきか、この世界でもダンジョンには当たり前のように魔物が現れる。


 その強さがおおよそのダンジョンの難易度とイコールにされる、さてっこの異次元に存在するダンジョンの難易度はどのくらいだろうか?


 ゲームとは違いこちとらガチでサバイバルしてるから魔物の強さは弱めでお願いします、出来れば脱出方法がちゃんとあるダンジョンであることを祈る……何故ならゲームじゃないので脱出出来る保障とかないからな。


「……………?」


 ただ、上空から見たときに少し思った事がある。

 この感じ、何となくどっかで見たことがあるんだよな。


 まさか前世でこんな場所に行った憶えはない、しかし変な既視感があるのも事実。

 ん~~何なんだこれは……。


「用務員のアナタ、ちゃんと周囲の警戒をして下さいね」

「…分かりました」


 ラビスに怒られてしまった、既に魔法で周囲の索敵は行っているのだがそんな事は説明する気はない。取り敢えず周りをキョロキョロしながら働いてますアピールをしとこう。


 ちなみにラビスは立ち姿も堂に入っている、武器こそ持っていないが武器を使った戦闘訓練とかをしているのかも知れない。


 シフォンはこんな状況には慣れていないのだろう、少し疲れが見える。

 まあ見た目だけでも貴族の令嬢って感じでか弱そうな感じだし仕方ないか。


 デュミナはちんちくりんな見た目通り周囲をキョロキョロして小動物系の気配を感じる、しかし変な緊張はしてないので多分パニック状態になったりする心配はなさそうだ。


 まあ三人ともベルフォード学園で魔法を学んでいる貴族の学生なのだ、詳しくは知らないが授業で魔物の出る場所、つまりはダンジョンとかにも行って実技で魔物を倒したりとかもしていると用務員同士の話で聞いた事がある。


 ならばこんな用務員おじさんなんぞが前に出なくてもこのダンジョンの魔物を千切っては投げて自力で飛行艇の落下ポイントまで移動出来るかも知れない。


 是非ともそうなって欲しいもんである。

 と言うかダンジョンだろうとなんだろうと、こちとら若い女子生徒が三人もいるんだ魔物なんてお呼びじゃないんだよ、出て来んなって思う。


「…………!」

 しかし残念ながら魔物は空気ってヤツを読まないみたいだ、魔法に反応があった。


 たまたま気付いた感じを装いラビス達に危険を知らせる。

 魔物が接近してる方向を向いてキョロキョロ……そして警告する。


「すっすみません、向こうから変な音が聞こえませんか?」

「何ですって?」

「「………………」」


 この用務員おじさんが魔法を使える事を知ってる女子生徒二人が無言で何かを訴えてくる。

 ここは用務員おじさんが行けよって? ヤダヨ怖いじゃん、こんだけ凛々しい感じのリーダーシップ強めの子がいるんだしその子に切り込み隊長を任せるわ。


 ラビスは視線を俺と同じ方に向ける、すると何かを気配を感じ取ったのか静かに俺やシフォン達よりも前に出た。


 そして草木をかき分け現れる魔物。

 初めて見る魔物だ、見た目はカマキリに近い、体色は黄色で妙にメタリックに輝いている、しかしロボットとかゴーレムって感じでもない、生物だ。


 目が赤く光っている、その身体の大きさは俺の倍はあるとみた。明らかにこちらを敵視していて両腕の鎌をブンブン振って威嚇してきてる。


「マンティス系の魔物か、あの手の魔物は鎌の攻撃も厄介だが瞬発力があり短時間なら空も飛べる。決して近づかないで、私が相手をする!」


 ラビスが右手をかざす、すると魔法陣が手の前に現れた。その魔法陣から放たれる白い光の粒子が収束して、その形を剣に変えた。

 デュミナが興奮気味に説明する。


「アレはラビスの『魔力剣』の魔法よ! どんなに硬い魔物でも真っ二つに出来る程に高い攻撃力の高い魔法なの!」


「それは凄いですね」

 『魔力剣』は中々高度な魔法だ、それをあの若さで扱えるなんて。


 ラビスの何処となくこの状況でも自信のある態度は生き残れる実力があると思ってのものだったのか。


 『魔力剣』を手にして構える姿もまた堂に入っている。恐らく剣術も学んでいるだろう、じゃないとあの魔法は宝の持ち腐れだからな。

 ディアナにも感じたけどこっちは本格的に女騎士的なのをイメージしてるっぽいぞ。


「……悪しき魔物よ、我が剣の錆となれ!」


 ラビスが走る、速い。そして自分よりかなり大きな魔物相手にも全く怯まない胆力も大したもんだ。

 魔物は両腕の鎌を自分の頭と同じ高さまで上げて構える。


 日本人をやっていた時にテレビで見たのだが、カマキリ、中でも擬態して獲物を待つタイプのカマキリは自分の間合いに獲物が入った時の動きは目で追えないくらいに速い。


 この世界のカマキリみたいな魔物はあの図体でその動きをやる。魔物の巨体がブレた。

 一瞬で振るわれた両腕の鎌、それが気がついたら地面に深々と突き刺さっていた。


 つまり、ラビスはあのカマキリの攻撃を回避したのだ。

 カマキリの懐に入ったラビスは脇を抜ける瞬間に胴体を『魔力剣』で斬りつけた。


「!?」


 しかしカマキリの胴体に当たった『魔力剣』は白い光の粒子となって消滅した。

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