第44話 おじさん対バリー(1)
「きっきき貴族である僕を蹴っただと!? 貴様、自分がどれだけの大罪を犯したのか理解しているのか下民が!?」
ドロップキックかまされてもそれだけ吠えられれば大したもんですよ。やはり謎バフによってバリーは格段に強くなっているようだ。
しかしまあ……だからなんだ程度の問題だけどな。
「その貴族に手を出した貴方が言える事ですか?」
「貴様さえ消せば済む話だ! だから死ね!」
バリーが今度は『火球』の魔法を発動してきた、放たれたファイアーボールが用務員おじさんに向かって飛んでくる。
バリーは魔法を使えるだけだ、使いこなしてる訳じゃない。だからこそ対処も簡単だったりする。
「……………『浮遊』」
用務員おじさんの『浮遊』の魔法により放たれた火球は数メートル手前で静止して空中にフヨフヨと浮き始める。
「…………なんだ……と?」
「バリーさんの魔法は発動した後はただ物理法則に任せて私の元に飛んでくるだけ、それだと矢や銃弾と同じですよ。物を浮かせるだけの『浮遊』の魔法で事足ります」
『飛行』の魔法と違い無機物くらいしか浮かせられない魔法だ、そもそも浮かせてもフヨフヨとゆっくりしか動かせないので使い道は限られる魔法である。
けど飛び道具相手ならわりと使えるのだ、拳銃どころかガトリング砲の弾すら『浮遊』の魔法の前には無力なのである。
「そして………大火……」
─その炎の魔法はもう使うな─
─その炎は
おっと、師匠の言いつけを破る所だった。いけないいけない。
用務員おじさんは『魔法強化』と言う魔法を発動した。
バリーの魔法で作られた火球に用務員おじさんの魔法を上乗せして数十倍の大きさに巨大化させる。
それをバリーへと放つ。
「下民に出来る事なら……僕にだって出来る! 『浮遊』!」
残念、俺の魔法は放った後もコントロールを失わない為にその動きも完全に制御している、他人の魔法の影響なんて受けないのだ。
バリーの目の前の地面に着弾、地面が爆音を響かせながら爆発した。
爆風に吹っ飛ばされるバリー、ゴロゴロと転がっておりますな。しかしバッと起き上がりこちらをにらんでくる、未だに衰えない殺意全開だ。
「………ふざけるな!」
「ふざけるなと言われましても」
「貴族でもないお前が魔法を使うな! ただ黙って僕の魔法で殺されていれば良いんだよ! なのに、なのに貴様みたいな下民が……!」
今更ながらに思う、一体どんな教育を受けたらこのバリー見たいな少年が育つのだろう……いや、魔法は偉い貴族様だけの物、だなんてふざけたルールがまかり通る封建国家だからか。
「私も生きているので、殺されたくはありません。そして貴方が命を奪った人達もみんなそうだったんだと思われますよ?」
「………黙れ」
暗い瞳を輝かせるバリー、明らかに異常な状態だ。
「全てはこのダンジョンから一人でも多くの人間を救う為なんだよ、クククッそしてこの僕が、本物の英雄となる為には必要な犠牲だったんだ!」
地面が隆起する、『岩窟の大槍』か。上級魔法である。
用務員おじさんは『魔障壁』を発動して岩の槍を防いだ。
「何故だ!? 何故下民の、それもたかが用務員如きがそんな力を持っているんだ!?」
「私が強いのではありませんよ、貴方が弱いのです」
「なっ……なんだと……?」
「人を救う? 船員の方達を囮や盾に使い。お世話になった教師を気に入らないからと亡き者にする、そんな人間が英雄になる……? 笑わせないで下さい」
『魔力の拘束』を発動した、バリーはその場で身体を無理矢理柔らかくしようとインストラクターの先生に色々されてる可哀想な人みたいに身体をミシミシさせながら金縛りにあう。
「がッ! ぐ……ォオアオッ!?」
「私が知る英雄は、多少傍若無人な所はありましたが自身の力の使い道を決して誤る事はなかった。バリーさん、あなたは力を得た後の一番最初の使い方を間違えたんですよ」
「ダッマッレッ! アァアアーーーーーーーッ!」
「!?」
バリーが力ずくで『魔力の拘束』を破った。
マジかよ。力技でどうにか出来る魔法じゃない筈なのだが……。
「……まさか」
『解析』の魔法を発動。
【名前:バリー=ザイゴン】
【種族:人間】
【HP:8693/8693】
【ATK:231(+7691)】
【DEF:141(+6523)】
【貴族のボンボン、禁術を用いて他者から魔力を奪い自身の強化に成功した。魔法の副作用と何者かの精神干渉によりまともな判断力を失っている】
テキストが変化している、いや、問題はそこじゃない。禁断? 禁断ですと?
「……まさか、『生魔吸収』!?」
「ククククッまさか『生魔吸収』まで見抜くとはな。どうやら本当にその知識は大したものらしい、褒めてやるぞ……無論直ぐに殺すがな」
『生魔吸収』相手の魔力を奪うだけでなくその生命力も魔力に変換して根こそぎ全てを奪う魔法だ。
マジで禁断、相手の命を奪う魔法だからな。そんな魔法、幾らベルフォード学園でも学生に教える訳がないだろう。
やはりバリーの背後には碌でもない黒幕がいるな。
全身から教師陣から奪った魔力を発しながらバリーは満面の笑みで語り出す。
「あの連中を殺した理由? 良いだろう、本当の理由を教えてやろう。とは言っても見てのとおりだがな? ククククッ…」
「バリーさん……何故そこまでして力を…」
「用務員の分際で、そんな力を持つ貴様には死んでも理解出来るものか……その魔力も根こそぎ奪い取ってやる!」
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