第67話 ■十年前(1)
「ッ!?……こっここ何処?」
気がつけば見知らぬ森にいた、森?
なんかやたらとデカイ木ばっかりが生えている、まるでアマゾンの樹海をもっとスケールアップした世界みたいだ。
……アマゾンってなに?
頭の中が混乱している、自分が誰なのか思い出せない、覚えているのはこことは違う何処かに、以前の自分のものらしき記憶が断片的にあるっという事だけだ。
深い森の中、虫が動く音なのか風で葉が揺れる音なのか分からないが常に何かの音がしていた。
ただ一つだけハッキリしてる、この森は自分が知っている安全な場所では……ない。
「!」
そこまで距離が離れていない所から、木が折れる様な音がした、あの大木が……何かにへし折られているの?
明らかに自分の記憶の中にあるような動物の類が出来る事ではない。そしてそれが自分の方へと来てるという直感があった。
「にっにげなきゃ…」
音がする方向とは逆方向へと逃げる、足場が悪く動きにくい。元から体力もないのか直ぐに息が上がってしまった。
まるで長い間身体を動かしてなかった人間がフルマラソンでもしてるかの様な…。
「だからフルマラソンって何よ!」
こんな状況で一人でノリツッコミ……もう無駄な思考は辞めて逃げる事に専念しよう。
しかしそう決めた途端に異常自体発生。
地面が不自然に揺れたかと思うと爆発した。
いやっ違う、地中から何か大きなものが現れたのだ。
それは緑色で艶のある身体をしたとてつもなく大きなムカデであった。
「あんぎゃあああーーーーーーッ!?」
口から抑えなきゃと分かっていても悲鳴が溢れてしまう、何故なら自分は女の子だからだ。
なっなんつーキモい化け物なのだろうか、この世のキモを全て集めたかの様なキモキモモンスターの登場だ。
ムカデの顔ってあんなに怖いとか、あのサイズでワサワサ動く足の感じとか、もうホントに全てが受け入れ難い存在だった。
そして明らかにそのキモムカデは自分を狙っていた、ムカデに睨まれるなんて今後の人生では二度とないと思う。
………いやっ今後の人生、多分ないかも。
周囲の地面が爆発する、土煙の中から新たなキモムカデが何体も現れた。
何という事だ、まさかのキモムカデによる包囲が完成してしまった。
いきなり変な樹海に来たと思ったらキモムカデの大軍に囲まれて万事休すとか、自分は前世で何をしたと言うのだろうか?
……………前世で?
「!?」
前世について思考した時、突然新たな記憶が頭の中に流れ込んできた。
真っ暗な世界、とても冷たい世界、何かに強く抱かれていた。
顔に何かが……それは暖かくて、けど直ぐに冷たくなった、またっ暖かくて直ぐに冷たくなる。
これは何だろう?
「─────! ─────! ─────!」
誰かが何かを言っているのだろうか、いやっそれは声じゃない……けど自分を呼んでいる?
どうしてかそう思った。
誰かに自分は呼ばれていると思った。
「…………死ねない」
絶対に死にたくない、そんな思いが溢れてくる。
自分は足下にあった木の棒を手に取る、怖すぎて、頭がおかしくなったのかも知れない。
けど、こんな所で死ぬには分からない事が多すぎるのだ。絶対に何も分からないままで死んでたまるか。
ここは何処なのか?
自分は何者なのか?
あの記憶は何なのか?
あの温かくて、直ぐに冷たくなるのは何なのか?
自分に誰が何を言っていたのか?
全てを知るには、ここを生きて出るしかない。
「かかってこいやぁあっ! こんちくしょうがぁあーーーーーーッ!!」
自分は木の棒を手にキモムカデの大軍に立ち向かった。
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