第17話 救出活動ととある真実

 また樹海に舞い戻った俺は人目がなくなった事を確認する、それ以降は早歩きから猛ダッシュで走り、船員を探した。


 魔法による反応はなし、バリーの言う事が本当ならとっくに補足出来てる筈なのだが…。

 やっぱりウソだったのか?


「それとも……試してみるか」

 俺は『隠蔽看破いんぺいかんぱ』の魔法を発動する。この魔法は魔法、或いは特殊な力で隠された物を見つける事の出来る魔法だ。


 そんな魔法を発動してみると予想は的中、今までで全く魔法の探査に引っ掛からなかった新たな人間の気配を察知した。

 一体どこのどいつだよ、遭難してる人間に探査魔法の妨害までダメ押しで使ったヤツは。性格がイカレ過ぎてませんか?


 ほらっディアナ達もまず間違いなく魔法とか使って俺……じゃなくて学生達を探してた筈だ。


 それなのにその捜索者達が誰も船員を発見してなかった事に違和感はあったんだ、俺も魔法でモンスターやら人間の存在を確認しながら樹海を移動してたけど、そんな多くの人間の反応なんて全くなかったから。


 その理由が判明した、船員達は何者かの魔法による妨害で魔法による感知が出来なくなっていたんだ。


 まったく、人間のする事じゃないね、これもバリーの仕業なのか? 魔法によるものならかなりいやらしく高度で、何よりゲスな真似だ。

 あのノイズの件もある、これは本気で一度バリーと話をする必要があるな。


 しかし先ずは船員達である、補足に成功したので最早走って移動する必要もなし。速効で転移した。


 そして転移した先、俺の視界には今まさにダンジョンの魔物に襲われようとしてる船員達。

 無論とっくに『天眼』の魔法でその存在は確認済みだ、速効で魔法の餌食にしてやる。


「皆さん! 大丈夫ですか!?」


「だっ誰だ!」

「助けてくれ! 助けてくれーー!」


 俺は大きな声を出して魔物の気をまず引く、船員達の助けを呼ぶ声も大きかったけどなんとかこちらに魔物の意識を向ける事が出来た。


 あれだけ大声を出せるのならまだ大丈夫だろう、こちらを睨む魔物は奇声を発しながら殺気を放ってきた。

 鎌の様に鋭利な刃の様な六本の足がクモ型の下半身から生えている、上半身は人型で肌は灰色、顔と思しき場所にはモノアイのみで鼻や口はなかった。あとハゲ。


 なんてキモイ魔物だろう、まあダークファンタジーみたいなステータス『キモイ』がめっちゃくちゃ高い連中よりかはマシだと考えよう。


 しかしな~んかこの魔物、どっかで見たことあるような気がやっぱするんだよな……。

 少し余計な事を考えていると魔物が先制攻撃を仕掛けてきた、六本の足のうち前側の二本を伸ばしてきたのだ。


 速い上にキモイ、最悪だな。燃やしてしまおう。

「……先ずは足からですね」


 迫る二本の足を『電流の壁』の魔法で防御、突然現れた稲妻の防壁に足をブスンと突っ込んだ魔物は自分から突っ込んだくせに大きな苦悶の声を上げる。

 更に俺は『風刃乱舞』と言う『風塵の刃』の上位版の魔法による無数のカマイタチ攻撃で残りの足を切り飛ばした。


 トドメの前に知りたい事がある、フィニッシュは『光杭鉄管こうこうてっかん』という突き刺した相手が動けなくなる巨大な光る杭で攻撃する魔法を発動、その杭を胸に突き刺して無力化した。


 魔物が糸が切れた人形の様に脱力する、これで当面は大丈夫だろう。


「皆さん大丈夫ですか?」

「助けて……くれたのか?」


「勿論ですよ」

「飛行艇を墜落させた俺達を?」


「原因は次元の裂け目ですよ? 仕方ありませんではないですか」

「あの貴族のガキは全部俺達のせいだと、帰ったら一人残らず打ち首だと言っていたんだ…」


 バリー……。

「そんな権限は貴族の子息にもありませんよ、何よりダンジョンから脱出した後の事はその時に考えませんか? 今はこのダンジョンを脱出する事が大切です」


 船員達は力なくとも返事をする、そして全員が自分達が逃げてきていた方向を見た。

 そこには魔物にやられた何人もの船員の遺体があった、多くは魔物の攻撃で損傷も激しく酷いものだ。


 その惨状を見るに、魔物は人間を食らう事はせずにただ捕まえたヤツからオモチャか何かとして攻撃して遊んだ様に思えた。

 ダンジョンの魔物はそのダンジョンのダンジョンマスターの性格が表れると聞くが、それだとこのダンジョンのボスは相当に禄でもないって事なのかも知れない。


「すまない、時間がないのも危険なのも分かってるんだが、せめて部下達を弔いたいんだ」

「構いません、ただ出来れば私の目の届く範囲の方達だけでお願いします」


 このボロボロの船員、歳は五十代くらいかな。部下って事は船長か副船長みたいな立場の人だったのか?


 他の船員もそのアラフィフの後に続いて黙祷を息絶えた仲間に捧げる。本当は埋めてあげたいのだがダンジョンには魔物がまだまだ沢山いる、生きている人命を優先する以上死んだ彼らにはあまり時間をかけられないのだ。


 金色ポーションも有限、あの数は助けられない。ならば助ける人間の選定をするか? そんな時間はないのだ。


 ごめん。


 俺はアラフィフ達が黙祷をしてる間にもう一つの用事を済ませる事にする。

 完封した魔物に接近してある魔法を発動した。


 その魔法は『解析』である、あのゲームとかでお馴染みの敵モンスターとかの情報をアナライズしてくれる魔法だ。


 【名前:アドキエル】

 【種族:アラクネ】

 【HP:0/15000】

 【ATK:2000】

 【DEF:2500】

 【ダンジョンで生み出された元はアラクネと言う上半身は人間の女性、下半身はクモの魔物。戦闘能力のみを特化させた結果、姿は歪み、生物ではなく戦闘モンスターとなった存在。】


 なんか知りたくなかったフレーバーテキストもついてるが、こんな感じのステータス表示になるのはゲームオタクだった前世が所以なのだろうか、だとしたらオタクとは業が深い…んなわけあるか!

 けど案外ここの情報って役に立つんだよ。

 しかしそうか、アラクネ……アラクネか。


 俺の予想が当たっていた。

 俺はこのダンジョンを知っている、何故ならここは……。


 俺が前世で死ぬ前にプレイしていたファンタジーゲームの隠しダンジョンだ!

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