第19話 遺跡を起動する

「おおっここは明らかに何かしらの遺跡だな」

「すげぇっなんだこりゃあ!」

「冒険者に憧れた時期を思い出すぜ」

「ほぁ~~~」


 サバイバルも忘れてあ然とする船員達だ。やはり古代遺跡とかってロマンの塊を愛でる心は多くの男子が持ってるんだろうな。

 あと巨大ロボとかも異様に男子の心はを掴んで離さないもんだ、このクソダンジョンを巨大ロボで粉砕とかしたいよホント、必殺技で消し飛ばしてやりたい。


 そんな物騒な事を考えながも遺跡の調査は丁寧に行う。魔法でスイッチの場所は把握しているが、出来れば自然な感じで見つけたい。あまり何でも魔法で解決し過ぎるのも問題なんだ。


 何でもかんでも俺をアテにされたら困るしそもそもゲーム知識が本当に異世界で通用するのか、全ては未知数である。


 変に安全だと言って油断させてゲームと違ってギミックを起動させたらヤバイ魔物がドド~ンと登場なんて可能性も考えておくべきだよな、物事が上手く行った試しなんて俺の人生ではほぼゼロなんだから。


 そして到着した場所はまさにツタとかそこら中に生えている大小様々な石材を以て作られた遺跡群、それらが崩れ落ちた感じの場所だった。


 木々の隙間からの木漏れ日が良い感じにその遺跡群を照らす、何かのファンタジー作品のロケーションとしては百点満点の場所だ。『天眼』で確認した通り魔物の姿は影も形もなく魔法で気配を探ってもその気配もない。


 油断はしないが先ずは魔物の姿がない事に助かった、船員達は遺跡群の開けた場所で休ませている。何かあったら大声をお願いしますと伝えてあり、俺は食料とか水が流れる川とかないかを探してみると提案しての一人行動に移っていた。


「…………静かな場所だ」


 一人でこんな幻想的で静かな場所にいると、自分がダンジョンサバイバルの最中だって事もついつい忘れてしまいそうになるな。


 後は少し時間を置いてからさも偶然を装いスイッチを押して遺跡を起動、ここのセーフティポイントへの入口を出現させれば大丈夫だろう。


 このエリアに来た時点で魔物の強襲はほぼないと思うが、そのセーフティポイントに行くのはかなり大事なのだ。

 何故ならそのセーフティポイントがこの隠しダンジョンの特別ストーリー、その時のダンジョン攻略の活動拠点。


 ゲームの時は主人公を始めとしてキャラクター達が問題なく生活出来る様にと様々な施設がある設定だった、お風呂とかキッチンとか……。


 この隠しダンジョン脱出の為の古代の飛行艇とかが隠されているのだ。


 それらが本当にあるのかを確認する為には、やはりこの目で確認するより他になし。

「………そろそろいいか」


 と言う訳でお目当ての遺跡群の一画、石の柱と柱の間に隠される様にあるスイッチを押す。

 ポチッとな。

 するとゴゴゴとと言う揺れがきた、そしてしばらく待つと遺跡が自動的に動いて石畳が引かれた平らな祭壇が地面からせり上がってきた。


 その祭壇の中央に青い魔法陣が出現する、これがセーフティポイントに移動できるワープポータルである。それでは早速船長達を呼んできますか。


「なっなんじゃこりゃあ!?」

「私も驚きました、まさか偶然に見つけたスイッチを押したら突然これが現れたんです」


 普段クールな船長がとても驚いている、他の船員も似たような反応だった。

 俺も似たような感じの驚く演技をしながら話す。


「以前聞いた事があるのですが、ダンジョンにはこう言うポータルでのみ行ける場所があるらしいんですよ、そこには魔物もいない、それどころか我々人間が問題なく生活出来る環境と施設が用意されているとか…」


「そっそんな馬鹿な話を信じろってのか?」

「いえ、私も流石にそこまでは、そこで先ずは私一人で入ってポータルの先を確認してみたいと思います」


「……本気か?」

「はい、もしもポータルの先に魔物がいた場合、この中で生存出来る可能性が一番高いのは私ですからね」


「……すまねぇ、命の恩人に何から何まで」

 船長も船員もすまなそうな顔をしてくる、多分いい人達なんだと思う。本当に騙してるのは俺の方だから少し罪悪感が……。


 いやっそれもこれも一人でも多くの人間がこの異次元ダンジョンを脱出する為だ。

「それでは行ってきます」


 と言う訳でワープポータルの上に乗る、すると一瞬視界が真っ白になった。

 どうかセーフティポイントがありますように、モンスターハウスとかはマジで勘弁願います。

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