第24話 現場をリモート

 話し合った結果、ドニードさんとは上手い具合に話しがまとまった。しかしリエールの貴族連中への心証が最悪になってしまった。


 その日は貴族にも話の分かる人は沢山いるんだよ~、とか何とか言ってどうにか眠りについた。もうホント疲れたので先ずは休ませてって話である。

 しかし翌日にリエールが再びダークになる。


「リエール、これから昨日言っていた貴族達を探してこようかとおも─」

「あのラベル様を足蹴にしたと言う連中の事ですね? わたしとしてはそんな連中は野垂れ死にさせれば良いと思います」


 バリーにされた事が貴族全員にされた事にリエールの中では変換されとる。流石にそんな真似をされたらいい歳をした用務員おじさんは死んでると思うんだ。


 そして彼女の言葉は何より俺の身の安全を考えての発言だ、あまりないがしろにはしたくはない。しかし現状だとあまりうかうかもしてられないかも知れいのだ。


 俺はこの異次元ダンジョンが前世でプレイしていたゲームの隠しダンジョンとクリソツなのを思い出した。つまりはこのダンジョンに出現する魔物に関しても思い出したのだ。


 あのカマキリ、確か名前は金甲螳螂ゴルドマンティスだったか、確かに魔法に耐性があり近接戦闘能力が高いエネミーだったはずだ。アラクネも変わり果てた姿ながら一応出現する敵キャラの一体だった、こんな風に記憶にある魔物が実際に現れているのである。


 まあゲームはゲームだ、どこまで重なる部分があるのかは分からない。しかしベルフォード学園の教師や学生は魔法使いばかりの集まりだ、そしてゲームの中のダンジョンには魔法にやたらと強い敵キャラとか普通にいるものである。


 確か紫骸鎧エビルナイトって名前の紫の鎧だけが動くヤツだ、コイツはリビングアーマーって言うゲームでも同じみ感のある魔物の一種で物理防御も高いが魔法にもめっぽう強いし、合成混魔カオスキマイラと言う色んな怖い魔物のキメラさんも多くの魔法に強かった。そんな強力な魔物が敵キャラとしてこのダンジョンでは沢山出て来ていた。


 そんなのまでがこの異次元ダンジョンで出て来だしたら教師も学生も全滅だ。そんな事態になる前に俺はここに貴族連中を避難させたいと考えている。


「リエール、流石にそれは出来ないかな」

「……………………分かりました、ならばせめて広いダンジョンを無闇に探す手間は省いてほしいと思います」


「手間を? どうしろと言うんですか?」

「マスタールームに行きましょう」

 マスタールーム? もしかしてセーフティポイントの最深部のあの部屋か。リエールと最初に会った部屋である。


 中に入ると全面ガラス張り(ガラスなのかは不明)のドーム型の広い部屋に出た。そしてガラス張りの向こうにはやはりあの飛行艇が見える。


 しかし今は動かない筈、何しろ動力源がないと思われるからだ。

 飛行艇には一切触れずにリエールは宙に手をのばす、ブゥウンと四角いウィンドウが現れた。

 まんまゲームのメニュー画面みたいなのである。


 そのウィンドウには直接触れられるのか、リエールの指はまるでスマホの画面をタッチするかのように動く。なんか彼女の方がゲーム世界へと転生してきたヤツみたいな事をしてるよな。


 俺もこの世界に来た当初はステータスオープンとかメニューウィンドウ出ろとか人がいない所で口に出してみたりした、けどなにも出なかった。少年時代の俺の心は多いにダメージを受けたものだ。

 それを平然とするリエールになんか嫉妬する自分を発見。メラメラメラ。


「マスタールームならこのダンジョン全域のマップを確認出来ます、侵入者や魔物の配置の確認も可能です」

「それは……凄いですね」

 そんなん出来るの? ゲームの時はそんな機能聞いた事もないよ、やはりゲームとは色々違うのか。

 もう少しゲーオタに優しいゲーム世界に転生させてほしいもんでござる。


「今からその貴族と言う者達の様子を映し出します」

 そんなんも出来んの!?

「お、お願いします…」


 なんかリエールがチート貰って転生してきたヤツに見えてきた。異世界にロリ転生してきたのかな。

 俺の目の前にウィンドウが出現する、そしてそこには本当にベルフォード学園の遭難者貴族達が…。


 …………ん?

 あれっおかしいぞ、なんか様子が少し違う。

 地面にそこそこ大きなクレーターが何個もあるし教師も学生も昨日見かけた時よりもどことなくボロッちい格好をしてる気がした。


「ああっこれは昨夜のうちに魔物から奇襲を受けましたね。被害の程は分かりませんが、夜に活動が活発化するタイプの魔物もこのダンジョンには多いですから」


 そう言えばそんなタイプの魔物も居たな~。


「………………」

 ゆっくり休んでる場合じゃなかった!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る