第7話:移住と理想
「領主殿はミュンの正義感を認めてくれているが、色々と知ってしまったから、ここで暮らす事はできない。
俺と一緒に遠くの領地で静かに暮らしてもらわなければいけないんだ。
理解してもらわないと、俺も辛い決断をしなければいけない」
ミュンが目を大きく見開いて俺の顔を見つめている。
辛い決断といっても、殺すわけじゃない。
前世の知識と経験に、この世界の知識と経験を加えて、経穴をいくつか組み合わせを、目的に合わせて順番に突いて魔力を流し、今日と昨日の記憶を消すだけだ。
ちゃんと説明しないとミュンに余計な不安を与えることになる。
「それは全然かまいません、命の恩人のブルーノさんとなら、どこにでも一緒に行かせてもらいますが、静かに暮らすとはどういうことですか?」
俺が辛い決断の事情を話す前に、食い気味で認めてくれた。
死ぬのが嫌だと言うのもあるのだるろうが、表情や目に込められた思いを察するに、俺を心から信じてくれているようだ。
まあ、命の恩人だから当然と言えば当然なのだが、そこまで信用してもらうと、ちょと重いな。
だが無理なお願いをするには、これくらい信用してもらっていなければいけないだろうな。
「この街から東に一月ほど旅したところに、この街と同じようにダンジョンで栄える街があるんだけど、俺はそこを拠点に活動しているんだ。
そこの領主が良識を持った男でね、普通に暮らす分には何の問題もないから、ここの領主殿からミュンに与えられる月々の詫び料で、趣味の生活をしてくれてもいい。
ただもしミュンが手伝ってくれるというのなら、新しい事を始めたいとも思っているんだよ」
「私に領主様が詫び料を支払ってくださるのですか?」
ミュンが凄く驚いているが、それも当然だな。
普通に耳にする王侯貴族の行状は酷いものだからな。
ここの領主が珍しく善人だっただけで、一般的な領主ならアーサー達を使ってあくどく儲けていたりする。
そんな場合は俺が領主もモンスターの餌にしてやっていた。
「ああ、ここの領主殿は俺も滅多に聞かないくらい善良な男だったよ。
だからミュンには領主屋敷で務める侍女五人分の給与が与えられる。
そのなかには口止め料も入ってるから、今回の件は絶対に口外しない事」
「はい、分かりました、絶対に話しません」
「それと話をミュンにお願いする事に戻すが、趣味に生きるだけではつまらないと言ってくれるなら、俺が資金をだすから孤児院を運営してくれないだろうか。
今まで俺は悪人を退治する事だけをやってきたんだが、これからは不幸な子供達を救う事もやりたいんだ。
だが今まで通り悪人退治も続けたいから、孤児院の方はミュンにやってもらいたいのだが、どうだろうか?」
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