第25話:孤児院の日々一・ミュン視点
ブルーノさんがまた長い旅に行かれました。
正直不安ですし寂しいですが、恵まれない子供達を助けるためですから仕方ありませんし、私は自分がやるべき事をしなければいけません。
孤児院にはブルーノさんが助けた子供達がたくさんいるのです。
子供達に十分な食事をさせてあげるのが私に役割です。
「さあ、食事の用意をしますよ、水汲み当番の子は早く水を汲んできなさい。
ジャガイモの皮を剥く当番は誰ですか、ジャガイモの皮をナイフで奇麗に剥けるようにならないと、料理人にも冒険者にもなれませんよ。
親になった時に子供達に美味しい料理を作れるようになりたいでしょ」
クドクドと言うのは好きではありませんが、これも大切練習です。
美味しい料理が作れれば、女の子は結婚に困りません。
後ろ盾なる親がいないこの子達は、自分の力だけで幸せをつかまなければいけないのですから、その為の努力はしっかりとした親がいる子以上に必要なのです。
飛び抜けて料理が上手なら、貴族や商人に料理人として雇われる事も、自分で店を開くことも可能です。
冒険者になっても、料理が上手ければパーティーに入れてもらい易いのです。
「ブルーノさんに感謝していただきます」
「「「「「ブルーノさんありがとうございます、いただきます」」」」」
ブルーノさんは最初凄く嫌がっていましたが、この子達には信じるべき心の支えが必要なので、私が押し切って食事の前に挨拶を決めました。
今さらこの子達に神を信じろと言っても無理です。
神がいるのなら、この子達はここに来る前の不幸な状態になっていません。
ブルーノさんがいなければ、死んでいるか、死ぬ以上の苦しみの中で生き続けなければいけなかったのです。
この子達が信じることができるのは、助けてくれたブルーノさんだけです。
「ミュンママ、きょうもおいしいね」
私の両側には一番幼い子が座って食事をしています。
私や心根の優しい冒険者の両側に、幼い子が座るようになっています。
大人が世話をしてあげなければいけない子供も数多くいるのです。
満腹になるまで食事ができるようになったのが、ここに来て初めてという子も多いので、最初の頃は大変でした。
子供同士で食べ物を奪い合う状態になってしまって……
でも毎食満腹になるまでお替りできると知って、争うことが無くなりました。
「きょうもおにくがはいってる」
幼い子のうれしそうな言葉を聞いて、他の子達も自然に笑みを浮かべています。
ブルーノさんの指導で、毎食肉入りのスープがつきます。
元は美味しくない肉なのですが、香草と塩に漬けてから燻製にする事で、驚くほど美味しい肉に変わります。
その肉を信じられないくらい多く入れて、スープを作ります。
ブルーノさんの話では、肉が身体を作り大切な食材だそうです。
ブルーノさんの考えで、クランの冒険者が狩って来た肉と香草を全て買い取り、子供達がそれを美味しい肉に変えるのです。
この肉の作り方を知っているだけで、どこでも生きていける気がします。
この肉の作り方が盗まれた時の処罰が、実行されない事を願っています。
クランの冒険者を奴隷に落とすのは嫌ですからね。
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