第24話:孤児を助ける

「ミュン、後の事は頼んだよ。

 最悪の場合は、孤児棟に立て籠もって戦えばいい。

 ドッペルゲンガーに全て話せば本体の俺にも伝わるから、直ぐに戻る」


「はい、任せてくださいブルーノさん」


 孤児達を日々お世話する事で、ミュンの使命感が更に強くなったようだ。

 孤児を護りたい一心で、冒険者にも厳しいことが言えるようになっている。

 まあ、常にミュンの横にドッペルゲンガーを立たせているから、冒険者達はミュンの事を俺の恋人だと思っているからな。

 クランマスターの俺に逆らえる性格の冒険者は家にはいない。

 そんな性格で実力も備えた連中なら、そもそも道端で死にかけたりはしない。


「では、他の領地の孤児達も買いに行く。

 エクセター侯爵領に孤児の買い戻しに行っていた連中には、孤児院の護衛とダンジョン探索を命じているから、盾代わりくらいにはなるだろう」


「まあ、それはあまりに酷いい方ですわ、ブルーノさん」


 ミュンが屈託なく笑ってくれる。

 この笑顔が、心を病んだ孤児達を救ってくれるだろう。

 俺にできるのは命を助ける事と仇をとってやる事くらいだ。

 本当に孤児達を救ってあげられるのはミュンだ。

 エクセター侯爵領の連中は地獄を見せてやることができた。

 俺の手では殺さなかったが、孤児達以外にも被害にあって恨んでいた者が数多くいたのだろう、全員嬲り殺しに遭っている。


 村長も陪臣士族も奴隷商人も犯罪者ギルドも、視力を失い激痛で身動きができない状態となり、抵抗する事もできずに死んでいったという。

 直接見たわけではないが、逸早く噂が流れてきた。

 エクセター侯爵の手先だった者を、セシル城伯が刺客を放って報復しているという噂だったが、完全に嘘という訳でもないな。

 だが、実際に殺しているのはエクセター侯爵領の民だから、王家王国もセシル城伯を捜索できないだろう。

 セシル城伯領に住んでいる者を奴隷にした連中が盗賊に入られたくらいで、上級貴族の城伯を処罰していては、王家に近しい者全員を処罰しなければいけなくなる。


「あの連中の腕では、本職の刺客が襲ってきたら時間稼ぎにもならないよ。

 そんな不安そうな顔をしなくて大丈夫だよミュン。

 孤児棟には色々な仕掛けを施してあるし、それ以前に悪意のある者は孤児院の敷地に入る事もできない。

 だから、もし家の冒険者の中に孤児院に入れない者が現れたら、その場で追放しなさい、絶対に情けをかけてはいけないよ、分かったね」


「分かりました、ブルーノさん」


 さて、国中の恵まれない子供を引き取るとなると、この孤児院では小さすぎる。

 城伯からもらった領地に城でも建てて、そこを孤児院にするか。

 となると、もう一体ドッペルゲンガーを創り出して、指揮させなければいけない。

 色々と忙しいが、刺客業を最優先にしていた時よりも充実している。

 ミュンというパートナーができたお陰なのは確かだな。

 家の冒険者を本気で育てパートナーを増やしてみようか。

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