第75話:見せつけ
強大な敵が現れたと思ったら属性竜がたった一頭だった。
探査索敵魔術の感度を強くし過ぎているのか、探査索敵魔術で強大な敵という反応があるのに、防御魔術で消費する魔力量は微々たるものだ。
属性竜が必死で攻撃しているのに、俺の魔力回復量の比べて消費される魔力が少な過ぎて、魔法袋化した魔力器官に普段と同じくらいの魔力が貯まり続けている。
だが探査索敵魔術の感度を低くしてしまうと、ミュンを傷つける可能性のある魔獣を見逃してしまうかもしれない。
探査索敵魔術の感度と自分との力差を測り直さなければいけない。
早い話が敵と自分の力差を正確に把握する事だ。
そうすれば何をどうするべきか間違わなくてすむ。
探査索敵魔術から分かる属性竜の強さを正確に測ってみる。
今なら余裕で圧倒的魔力を放って斃すことができる。
だが常に同じ余裕があるとは限らない。
竜種よりもはるかに強い龍種の群れに襲われている時に、防御魔法陣の反対側から属性竜の群れが襲いかかってくる可能性もあるのだ。
最小の魔力で敵を斃す訓練をやり続ける事が大切なのだ。
「今から属性竜を斃す、よく見ておきなさい」
その場にいた駆け出し冒険者達に声をかけておく。
別に自分の強さを誇りたいわけではない。
複数の敵に襲われた時に、絶望に囚われ普段なら勝てる敵に殺されないようにだ。
本当に厳しい戦いになった時には、駆け出し冒険者にも頑張ってもらわなければ、ミュンを護れない可能性もあるのだ。
その為に俺が純血竜や属性竜くらい簡単に斃せると理解させておく。
俺の命令にさえ従っていれば大丈夫だと思わせておく。
最小の魔力で斃そうと思っていたが、少しだけ魔力に余裕を持たせる。
駆け出し冒険者への印象の方を重視しておいたほうがいい。
その上で木属性の魔力を攻撃魔術に使う。
木属性の攻撃魔術と言えば木製武器で攻撃することになる。
だが新たに木を創り出すなど魔力の無駄になる。
純粋な魔力に木の属性をまとわせたと思い込めばいい。
この世界では想いと魔力の量でなんでも可能になる。
思い込むための理論さえでっちあげることができればいいのだ。
それに加えて風の攻撃魔術に木属性の素材を混ぜる。
五行思想で木属性と言われている金属、鉛と錫を叩きつける。
宝石で木属性と言われている翡翠と石英を叩きつける。
細かい粒となっている木属性素材を研磨破壊役にする。
魔宝石は確保したいので、魔宝石に位置を確認してその場所は外す。
この属性竜の魔宝石は心臓近くにあったので、攻撃魔術で脳を破壊する。
それでも即死しないので血管を切り血を搾り取る。
属性竜の素材はとても貴重で高価だから、血の一滴も無駄にできない。
だからその全てを魔法袋に保管する。
この状態で競売が行われるかの問題はあるが、そんな事は後で考える。
もしかしたら非常時で普段より高価に取引されている可能性もある。
俺の使い魔の素材に使えば普通の属性竜よりも強くする事も不可能ではない。
何より一番の目的である駆け出し冒険者達に強く印象付けられただろう。
今日はそれで十分だ。
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