第69話:真の天罰
ミュンと普通に暮らす日々は本当に幸せだった。
前世の記憶を持ってこの世界に転生してから、こんな幸せだったのは初めてだ。
一緒に並んで孤児達の料理を作っているだけで心が温かくなる。
助けあって孤児達に勉強を教えていると、夫婦になった気分だった。
孤児達に農業を教えるために、土を耕し種を蒔くのもミュンと一緒、夫婦で農民になったようで、何とも言えない幸福感を得られた。
そんな穏やかな生活を一年も楽しむことができた。
でも不幸な人達を助け悪人に天罰を下す事を忘れているわけではない。
天罰は各地に派遣したドッペルゲンガーと使い魔にやらせていた。
今までの事を反省して数多く派遣したので、天罰を下さなければいけないような事件になる前、事前に助けられるケースが増えていた。
そのドッペルゲンガーや使い魔を作るための魔宝石や魔晶石、魔石や素材は大魔境のコボルト族とオーク族から手に入れていた。
もちろん大魔境に行くときには、俺自身も莫大な数の魔獣や魔蟲を狩っている。
コボルト族やオーク族の狩りに支障をきたさないように、別の方角から奥地まで入り込んで狩りをして、帰りにコボルト族とオーク族の大集落に寄るようにしていた。
大魔境で手に入れた素材の中には食料になる肉も莫大な量があるのだが、人間が生きていく上では穀物や野菜も大切だ。
だから畑で穀物や野菜を魔力促成栽培して、莫大な量を魔法袋に備蓄している。
俺が集める魔獣や魔蟲だけでなく、俺が与えた武器を持った冒険者達が魔境やダンジョンで狩りに励んでいた。
こんな生活がこれからもずっと続くのだと思っていた。
「ギャアアアアア、助けてくれ、誰か助けてくれ」
「いや、いや、いや、いや、止めて、許して」
「ヒィヒイヒヒ、喰わないでくれ、俺を喰わないでくれ」
「おかあさん、たすけておかあさん」
大魔境から膨大な数の魔獣と魔蟲が溢れ出てきた。
前世のアニメやラノベで言うモンスタースタンピードだった。
今までこの世界で大魔境からモンスターが溢れた事はないと聞いていた。
だからこの世界にはモンスタースタンピードはないと思い込んでいた。
こんな事なら全滅させる気持ちで魔獣や魔蟲を狩っておくべきだった。
せめて人間では相手できない竜や亜竜を狩りつくしておくべきだった。
救いはコボルト族とオーク族がモンスタースタンピードに加わっていない事だ。
『我はこの世界の神である。
よく聞け、この世界を穢す人族共よ。
我の我慢にも限界というモノがある。
千年の長きに渡って我慢して見てきたが、人族の下劣な行いは許し難い。
今までは弱き者として強力な生き物と分けていたが、これからは公平に扱う。
穢れた人族をこれ以上特別扱いはせん、さっさと滅ぶがよかろう』
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