第68話:ヘタレ

 これを機会にミュンに告白するかと考えたのは、ほんの一瞬だ。

 心の中に思い浮かべただけで、とても実行できない。

 とんでもなくヘタレな性格、それが俺だった。

 嫌いな人間なら情け容赦なく殺すことができる。

 でも本当に好きな人間には、告白すらできない。

 あまりのヘタレぶりに、情けなくて哀しくてやりきれない気持ちになった。


「いざという時には売ってくれればいいから、全部受け取ってくれ」


 もうヤケクソの気持ちになっていた。

 孤児院が困った時に売る前提という事にして、ミュンに似合うかもしれないと、色々作った宝飾品を全部プレゼントした。

 これで俺の気持ちを悟ってくれればいいのだが、無理だろうな。

 俺も難儀な性格だが、ミュンもたいがいな性格だ。


 この世界の基準から言えば、ミュンも清廉潔白過ぎる性格なのだ。

 はっきり言えば、変わりモノと言っていいくらいだ。

 だからこそ、前世の中二病のような正義感を振り回す俺が助けてしまったのだ。

 心から惹かれて、こんな恋煩いをしているのだ。

 情けないと同時に、どこか誇らしい気持ちになってしまう。


 もう、マンガやラノベやアニメの中の主人公のような、鈍感力全開でミュンと付き合っていくことにした。

 それでも自分を変わり者だと自覚している俺が、恋していると認めてミュンにアピールするのだから、マンガやラノベやアニメよりもマシだと思う。

 徐々に関係を親密にできるように、常に一緒にいるようにした。


 具体的には孤児達へのお世話だ。

 ミュンと一緒に勉強を教えたり、小さな子と遊んだりしてげる。

 三度の食事を作り、小さい子には食べさせてあげる。

 だがそうなると、年嵩の孤児や冒険者の訓練ができなくなる。

 今まで身代わりをさせていた瓜二つのドッペルゲンガーは、俺自身が戻ってきたので使えない。


 そこで俺には似ても似つかない姿形の強力な人型使い魔を創り出した。

 今はミュンの側から離れる気はないが、どうしても側を離れなければいけない時が来るかもしれない。

 当然ドッペルゲンガーを残すが、一体だけでは対処できない危機が起こるかもしれないので、ミュンを護る使い魔を数多く置いておくことにした。


 孤児達のお世話をする、前世の保育士のような事をする使い魔。

 料理を作る使い魔や畑を耕す使い魔、普段はただの人間に見えるが、実際にはトップレベルの冒険者すら瞬殺できる。

 そんな扮装した使い魔だけではなく、明らかに敵対者を威圧する使い魔も置いた。


 駆け出し冒険者やロートルに訓練をつけるための、剣士、槍士、弓士、魔術士、治癒術師などを複数創り出して置いた。

 表向きは俺がスカウトしてきた指導者とした。

 この使い魔達も一騎当千の実力があって、強力な武器や防具を与えた冒険者達を一度に全員相手にしても、片手で瞬殺できるのだ。

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