第40話:奴隷売買三

 魔力を惜しまず転移した俺は、気絶している特殊性癖の客を確認した。

 意識体ドッペルゲンガーが自白させた情報を共有しつつ、意識体ドッペルゲンガーが失った魔力を補充する。

 魔力をたくさん使ったと言ってはいるが、経絡を循環させる事で発生させている魔力は恐ろしいくらい莫大で、使っても使っても貯まる一方だ。

 魔力器官を魔法袋化しているからできる裏技まであるのだから、無敵状態だ。


「うっ、あっ、ひっ、ゆる、して」


 身体中に青痣があり、瞼が腫れ歯を折られた女性が俺を見て怯える。

 特殊性癖の客から殴られる前に助けたから、以前に受けたケガだろう。

 眼には隠しようのない怯えがあり、精神の深い傷が読み取れる。

 とてもではないが会話は成立しないだろうし、近づくだけで恐怖感を与えてしまのが一目瞭然だったので、瞬時に経穴を突いて眠らせてあげる。

 

 無限のように創り出せる魔力を使って女性に回復魔法をかける。

 眠っているうちに全てのケガを治療しておく。

 治療が終わってから、無意識状態で今までの事を全て話してもらった。

 売春宿に連れてこられてからの、あまりに可哀想な状況に俺の怒りが沸点に達して、我慢できなくなってしまった。

 ここの売春宿の主人と関係者だけに天罰を加えるのなら、時間をかけてもいいのだが、それだけではすまない状況だった。


 莫大な量の魔宝石と魔晶石と魔石を魔法袋から取り出して、魔宝石を核としたいつもよりも魔力保有量の多い意識体ドッペルゲンガーを創り出した。

 しかも多くの魔晶石と魔石を身体中に散りばめて、少々の事では斃される事もなければ、魔力切れを起こす事のないようにした。

 多数創り出した意識体ドッペルゲンガーを、特殊性癖の客から聞き出した悪党のいる場所と、女性から聞き出した悪党のいる場所に派遣した。


 この店にいる悪党共と同じ数だけ意識体ドッペルゲンガーを創り出して、全員の経穴を突いて一カ所に集めた。

 悪党共が特殊性癖の客に女性を傷つけさせ、時に命までも奪っていた隠し部屋。

 普通の方法では発見できない地下にあり、防音にも優れている隠し部屋。

 意識体ドッペルゲンガーに連れてこさせた悪党どもに、激痛地獄の経穴を突く。


 役目を終えた意識体ドッペルゲンガーの一体には、売春宿が臨時休業になったと新たな客が来るのを止めさせた。

 他の意識体ドッペルゲンガーには、女性を傷つけている客がいないか見回らせた。

 幸い今日は他に特殊性癖の客がいなかったので、騒ぎにならないように無理矢理男性客を追い出すことはせず、この店の金銀財宝を全て奪う事を優先した。

 売春奴隷にさせられている女性達を解放するには、契約書を無効にする必要があるし、家に帰ってからの生活を成り立たせるお金がいるからだ。

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